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September 17, 2010

一括交付金化は何のために必要か

9月に行われた民主党党首選挙の論点として、小沢一郎氏が一括交付金の必要性を訴えていた。国の地方向け補助金・負担金の一括交付金化で補助金にまつわる無駄を排除し、3割くらいの経費削減を行える。それにより生まれた財源により、民主党が唱えるマニフェストに盛られた政策は、増税など新たな財源を確保しないでも生み出せる、というものであった。

党首選は、菅氏の勝利で終わったが、党首選の中の小沢氏のこの推論が正しいか正しくないか、皆さまはどのようにお考えになられるか?

先ず、指摘しなければならないことは、国から地方への補助金の一括交付金化の考え方自体は、地方の自主性を尊重する観点からは、前向きの考え方であるという点である。補助金の性格によっては、一括交付金化がふさわしい分野は確かに多々ある。しかし一方で、一括交付金化により、財源を浮かすことが可能になり、別の用途に使える財源を生み出せるはずだという思い込みは幻想であるということを指摘しなければならない。

国から地方への補助金交付金の実態を見ればそのことはおのずから明白である。私は、小泉政権下の三位一体改革の補助金改革に、担当課長として約3年携わってきた。その中で思い知ったのは、21兆円にものぼる国から地方へ交付されている補助金の約8割は、社会保障関係補助金や義務教育費国庫負担金など国が法律で基準を決め、その通りに地方自治体が支出しなければならない経費に係る補助金・負担金ばかりだといことである。高齢者医療、国民健康保険、介護保険、生活保護、義務教育国庫負担金、そして子供手当などである。地方自治体の裁量でその支出の可否を決められる補助金は僅かにすぎない。

小沢氏は、地方自治体関係者から聞いた話として、「我々に財源を与えて任せてくれれば3割経費を削減できる」と語っていたが、それがどの領域のどのような補助金なのか明らかにしなければならない。

小沢氏は無駄な補助金の事例として融雪補助金を挙げていた。国の融雪施設の補助金を得ようとして、単独の補助金がないため、スキー場を造れば補助金が得られるため全く使わないスキー場を造ったケースである。だから全てにわたって無駄が潜んでいると語っているが、そういった事例ばかりがごろごろあるわけではない。

むしろ、社会保障の分野では、生活保護の受給抑制が厳しく、本来受給できるレベルの状態の人も我慢している状態が枚挙にいとまがない。介護の現場も、介護施設が圧倒的に不足している。その理由は、国費の制約があるから必要な介護施設を作れないでいる実態がある。

補助金制度にまつわる無駄の存在を強調するあまりに、その額が5-6兆円もあり、それを確保できれば子ども手当を満額支給できるほどの財源がいとも簡単に生み出せるというのは、責任政党の党首を目指すほどの人の見識としてはいささか乱暴と言うほかは無い。

一括交付金自体の発想を否定するつもりはない。その前提として、地方の自主性にゆだねるべき分野と、国がきっちりと制度の根幹を作り、財源確保をして行かねばならない分野を峻別する作業が必要である。例えば、現金給付を行うべき生活保護のような分野は国が責任を持つ、現物給付の対人サービスを行う分野は地方が責任を持つ、といった財政学の基本ルールに則った頭の整理が必要である。地方自治体の心情を代弁すれば、地方が真に求めているのは、インフラ部門の補助金を一括交付金にして地方に任せて欲しいということもある。

繰り返しになるが、財源の節約のために一括交付金化を進めるという考え方は、本末転倒の考え方である。あくまでも地方の自主性の向上のために一括交付金化は必要だという理念がまずなければならない。

実は、三位一体改革の中で国庫補助・負担金の整理に関する様々な議論が行われてきている。長い時間をかけて行ってきた議論の積み上げを生かさない政治主導は、その議論に携わった当事者の目から見て、慙愧に堪えない。現実に機能してきている制度を改革するためには、大胆さと同時にエイヤーでは済まされない緻密さも求められる。特に民主党は政権与党なのだから。

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