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February 10, 2010

国道事務所で垣間見た「政治主導」の現状

私が住んでいる松本市では国道19号線の拡幅問題がこれまで大きな政治課題になってきている。

長野県内でも有数の渋滞のメッカであり、物流の支障となっているだけでなく、交通事故も多発し、それが原因で観光客が渋滞を避け松本市を迂回・回避する事態も生じているといういわくつきの箇所である。

全体で11.4キロの拡幅計画のうち、松本市渚~松本市宮渕本村間1.6キロが平成10年度に事業化され、平成12年度から関係機関との協議、地元設計協議に着手されている。

政府の事業仕分け、新たな予算措置の流れの中で、この拡幅事業の進捗に目処が立ちにくい状況となっている。

私は拡幅事業の現状を聞くために、このところ国土交通省長野国道事務所、同松本国道出張所、松本市役所幹線道路課の関係者をそれぞれに訪問した。

関係者それぞれに、公共事業全体の見直しの中でも特に19号の拡幅事業は優先順位が極めて高いとの認識で一致している。地元地権者の一致した合意もあり、予算の目処がつけば工事の進捗が高まるとの見解であった。

しかしその肝心な予算措置が政権交代により工事進捗の大きなハードルになってしまった。通常であれば毎年のこの時期は、次年度の箇所別予算の割り振りが概ね目処が付いている時期である。しかし今年は全く目処が立たないという。これまでの予算付けも必ずしも十分とは言えなかったものが更に縮小される観測がある中で、地権者との用地買収交渉もどこまで進めていったらいいのか不安定な状況にあるという。

工事関係者、地権者双方にとって「蛇の生殺し」状態にあるようなものだというのが関係者の率直な感想である。

国土交通省の出先機関の関係者に予算の目処の話を聞いても、「我々も全く情報がありません」と言うばかりである。国土交通省本省に聞いても、「政治主導ですから」という声が返ってくる。

これまでは、地元要望は出先機関に来ていたそうであるが、政権交代後は出先では埒が明かないので、地元は出先を飛ばし直接本省サイドに掛け合うことが多くなったとのことである。意思決定の「中央集権」が強まっているようである。

国道事務所の関係者の表情からは、渋滞のひどさを十二分に承知しつつ、自らになす術のない今の現状にうなだれている様子をありありと感じ取ることができた。

このような箇所付けも恐らく政治主導により行われるのであろう。現在の政治主導は本省の政務三役により行われることとなっている。その政務三役は超多忙の中でこの松本市内の19号線の拡幅の必要性を十分に認識して判断などできるのであろうか。

政治主導とは本来、大方針を政治が発出し、その元に官僚組織がそれを着実に遂行することにある。今は、国家の基本方針を政治が出さずに、官僚機構がやるべきこまごまとした仕事に政治が頭を突っ込むことが政治主導と解されている節がある。

せっかく人員を配置して組織を構えている国道事務所の機能を十分に発揮させることこそ政治の責任ではないかと私には思える。国道19号の取り組みだけを見るにつけても、どうも今の政権は政治主導をはき違えているように思えて仕方がない。

こうした事態が様々な分野で積み重なっていくと日本経済の足かせとなる可能性がある。エジプト勤務の経験もある加藤良三前駐米大使は、「ナイルの洪水はすぐにはやってこない。数カ月以上かけて少しずつ水位が上がる。昨日と今日ではそれほど変わらないように見えながら、ヒタヒタ上がる。そしてある時ピークに達する。その時の水没の規模は巨大だ」と書いておられるが、誤った政治主導へのこだわりが日本の経済を更なる長期停滞に陥らせることのないことを真剣に願いたい。

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