目黒川の畔にて

国民全体の所得のパイが縮小するデフレや少子高齢化に対応できる成長戦略の策定とその実行が待ったなしというのが我が国の課題であると言えようです。　

ところで、2009年の年末に、旧知のバチカン大使上野景文氏から、ローマ法王が「知足」の重要性について語っておられるという話をメールにてお知らせ頂きました。

上野大使によると、ローマ法王は、「平和の日」（2010年元旦）へのメッセージの中で、「環境を尊重すると共に、無駄遣いをしない新しいライフスタイルを確立することにより、節制をアピールしつつ、環境危機を人類が今後の方向転換をはかるための機会とすべき」との主張をなされたとのことです。

ローマ法王は、環境危機の本質は、突き詰めればモラルの問題であり、知足（sobriety）・連帯を旨とするライフスタイルが求められているとし、環境保護の責任に国境はなく、「補完性（subsidiarity)の原則」に従い、各人が自分のレベルで出来る活動を行うべき、と指摘された由。

各国がそれぞれの国内事情を抱えながら何とか生き残りの術を考えなければならない中で、全世界的には環境重視の考え方が不可欠だということになります。

偶然ではありますが、最近、松本市内の知人から「少欲知足」という言葉を御教示頂きました。この世は自分の欲望が満足されないことによって苦悩が生じることが多い。そこで仏教では「少欲知足（欲を少なくして足ることを知る）」が重視される。お釈迦さま臨終の際の最後の教えである「仏遺教経」には、「足ることを知る者は地べたに寝るような生活であっても幸せを感じている。一方で足ることを知らない者は天にある宮殿のような所に住んでいても満足できない。足ることを知らない者はいくら裕福であっても心は貧しい」といった記述があるのだそうです。私が参加している早起きの会の「朝の誓い」の中の言葉に、「今日一日、腹を立てず、不足の思いをいたしません」という言葉があります。「知足」の精神は仏教においては当然の理念であるようです。

ローマ法王のメッセージと仏教の考え方が、地球環境の危機という局面で自ずから収斂し一致していくことは何やら意味深長なものがあるように感じます。

そのような観点から言えば、我が国が中国にGDP規模で負けることは大きな問題ではない、と考えるべきなのでしょう。むしろ、小さくてもキラリと光る国の有り様を生かして国づくりを考えていく必要があるように思えます。我が国には世界に誇る環境技術があります。そのノウハウを全体システムとして糾合し、爆発的な規模で環境立国を図る必要があります。それこそが我が国経済の成長戦略のベースともなっていきます。

「環境」をキーワードに国の内外のシステムの在り方を抜本的に問い直していく上で、地元を大事にしていく気持ちがとても重要です。それが「知足」の考え方に繋がる。何もフランスから化石燃料をふんだんに使い長い時間をかけて輸入したエビアンの水を飲まなくとも、地元の潤沢な優良水の価値を見直せばよいのです。例えばそのような発想により地域に潜在する資源を再評価する努力が求められています。

私も、生まれ故郷に戻り、環境という側面から、地域に豊富に存在する潜在資源の活用可能性をじっくりと紐解いていきたいと考えています。