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December 25, 2009

まちづくりの視点から考える公共交通のあり様

松本の交通事業者の役員の方から、バス(路線、高速、貸切)、鉄道といった公共交通の現状と課題についてお話を伺う機会がありました。

路線バスに関しては維持している全ての路線が赤字であり、地方自治体からの補助金を得てもなお億単位の赤字を計上せざるを得ない現状を伺いました。思えば私が子供の頃は安曇野市の豊科と松本を結ぶバス路線がありましたが、今は国道147号線に路線バスの姿を見ることはありません。住民の皆さまがバスではなく自家用車に乗り換えた結果ではありますが、朝晩のマイカーによる交通渋滞を見るたびに、果たしてこれでいいものかと疑問を感じるのは私だけではないと思います。県下一斉のノーマイカーデイが10月下旬の一週間行われましたが、目立った混雑軽減効果はありませんでした。

高速バスは、これまでバス会社にとってドル箱でしたが、高速道路料金の1,000円効果と最近のツアーバス跋扈によるダンピングにより収益が急速に悪化しています。一方で、会社で経営している高速道路のサービスエリアの土日の収益が特需状態であり、これにより高速バスの収益悪化が何とか埋め合わされているのだそうです。

民主党が進める高速道路料金無料化の影響は計り知れないと深刻な懸念が生じています。マイカーが高速道路に殺到し、高速バス離れは決定的になると諦めています。これが実際に実施された場合に高速バス撤退という事態が余儀なくされ、インターチェンジ周辺は大変な渋滞になり、それを解消するために新たな道路整備需要が生じるのではないかという予測もされています。

貸切バスは高速バス以上に深刻な現状にあるようです。貸切バスによる社員旅行は下火になり、特に最近は新型インフルエンザの影響で修学旅行や学校行事での旅行のキャンセルが相次ぎ、活気があるのは宗教団体の旅行くらいなのだそうです。

この会社が運営している鉄道は、運営費だけみると一応黒字になっています。しかし、この10年で2つの橋梁かけ替えを含め30億円程度の設備投資が必要であり、年間売上3億円の鉄道事業からその経費を生み出すことは困難であるとの認識なのだそうです。鉄道沿線に松本大学や梓川高校があるために何とか路線は黒字を維持できているものの、今後の設備を考えると先行きは厳しい見通しなのだそうです。上田鉄道のように市からの補助金を得るのか、福井鉄道のように「上下分離」を検討するのか、今後頭の痛い課題が横たわっています。

さて、以上の現状と課題を伺い、公共交通の在り方に関しては事業者だけではなく、地域全体としてそのあり方を議論していく必要性を痛感します。公共交通は地域社会の在り方をどのように考えるのかということと裏腹の問題です。昔は、松本市には路面電車がありました。車社会の到来の中でこの路面電車は廃止された経緯があります。しかし今になってその廃止を残念がる声が強いように思われます。

私は、お話を伺った会社の役員の方に、(1)バスの利便性を圧倒的に増すためにバス専用レーンを設け、バスの本数を増やしバス料金を大幅に軽減すること、(2)鉄道の料金も大幅に引き下げ、本数を増やすこと、(3)その財源には、道路特定財源を活用すること、(4)バス路線や鉄道沿線に住み松本市内に通う人たちには、公共交通に乗り換える政策誘導を行うこと、(5)その政策誘導には、マイカーで通う人に相対的に負担が大きく、公共交通機関を利用する人には大幅に負担が軽減される手段を活用すること、(6)鉄道沿線の住民の皆さまに鉄道に対する小口出資を仰ぐこと、それにより自分たちの交通であるとの意識が生まれ率先して乗車するようにもなること、(7)公共交通充実の手法として欧州各国の先駆的取り組みが大いに参考になること、(8)例えば都心へのマイカーの乗り入れ制限、英国のような混雑税の導入、徒歩や自転車利用の促進といた政策が参考になること、(9)「環境マイレージ」(一人ひとりが公共交通機関をどの程度活用しているかを測定する制度)といったアイデアを導入することも検討可能ではないか、と申し上げました。

そもそも公共交通の在り方を議論することは都市や地域の有り様を議論することと裏腹だと考えます。松本市は、松本城のすぐ近くに大きな立体駐車場を作ってしまっています。しかし、本来、城から少し離れたところに城を大きく囲むように駐車場を作り、そこから人々が歩いたり公共交通機関を利用して松本城に来るようにすべきではなかったかと思われます。町を巡って城に来るようにすることで市内の商店街も潤うことになります。

そのようなまちづくりの議論がないままに目先の利便性を追求してきた結果、市街地が虫食いの駐車場で分断されてしまっています。そこに自己の利便性を最大限に追求する人々が自家用車で殺到する。このことが混雑を招き全体としての街のイメージも大きく損なうことになるのです。

そろそろ我々は全体最適の観点から地域づくりと公共交通の在り方をセットで議論すべき段階に達しているのではないでしょうか。それが二酸化炭素25%削減に結びつく大道でもあるのです。


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