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June 23, 2008

シェークスピアは仏教徒?

「パーマストン会」という名前の在英日本商工会議所関係者向けの勉強会があり、年に数回昼食時に開催されています。

2008年6月20日に開催された同会では、在英日本国大使館の西ヶ廣渉特命全権公使が講師を務められ、「シェークスピアのプラクティカルな感覚」という演題のお話を伺う機会がありました。会場は、何と、テムズ河畔の「シャークスピア・グローブ座」でした。2008年はシェークスピア生誕444周年に当たり、4月末にはストラトフォード・アポン・エイヴォンにおいて生誕祭も開催されたとのことです。

西ヶ廣公使は20年以上にも亘りシェークスピアの研究を続けてきたのだそうです。Rimg1522
講演の中では、西ヶ廣公使はシェークスピアの作品を概観し、その思想を紹介、シェークスピアの思想形成に至る個人生活面の背景事情、人柄、更にはシェークスピア生涯の人生年表・作品分類表を解説し、更にはロンドンにおける8回にわたる引っ越しの場所とその理由、当面の講演劇場といった多岐にわたる内容豊かな論点を、非常にコンパクトにご説明いただけました。大変貴重な勉強の機会になりました。

ところで、西ヶ廣氏が掲げたキーワードにシェークスピアの思想のエッセンスが詰まっているようです。時間の経過と死の意識、外見と本質、幻影と実体、夢と覚醒、嫉妬と煩悩、自然との一体化、あるがまま、真如、慈悲、ストイシズム(変えられないことは受け入れる)、諦観、といったポイントがシェークスピアの思想の神髄として存在するようです。

西ヶ廣氏によると、シェークスピアの思想は仏教のそれに通じるところがあるとのことです。変えられないことは受け入れるという意味あいのあるストイシズムや諦観がその理由だということです。

また、「お気に召すまま」のジェイクィーズの台詞に、「この世は舞台である。そこに生きている人間もまた役者である」というものがあるようですが、これは松尾芭蕉の「奥の細道」の「月日は百代の過客にして行かふ年も又旅人也」という俳句と同義だと解説されていました。その意味では日本人の意識と通じるものがあるということにもなります。

たまたま私が自分の財布の中に、昨年のクリスマスに日本から知人が送ってくれた聖書の言葉である「神よ、変えられないものを受け入れる心の静けさと、変えられるものを変える勇気と、その両者を見分ける英知をお与えください」というカードを大事にしまっていたので、それを取り出して、「西ヶ廣さんのおっしゃるストイシズムは何も仏教思想に特有なのではなく、キリスト教の考えでもあるのではないですか」、と伺うと、「確かにシェークスピアの思想形成にキリスト教の影響は大きい」ともおっしゃっておられました。西ヶ廣氏はインドにおられたことがあり、仏教思想の影響を受けながらのシェークスピア研究となっているようでした。勤務経験を自らの人生の文化的蓄積に体系的に生かしておられる姿には感心しました。

さて、私も俄か勉強ながら有意義なシェークスピア講義を伺った以上は、実際に観劇しなければ申し訳が立ちません。昨年の夏は、ストラットフォード・アポン・エイヴォンに出かけ「12夜」を観劇しましたが、今回はちょうどグローブ座で「リヤ王」が開催されているということもあり、講演を聞いたその晩に思い立って妻を誘い再度グローブ座に行きました。青天井の劇場は、俳優と観客が一体になった趣向になっています。椅子席はすべて売れ切れていたので、舞台のすぐ前の立ち見席で観劇したのです。Rimg1530

「リヤ王」のストーリーは予め、昨年ストラットフォード・アポン・エイヴォンのコートヤード劇場で購入した「シェークスピア・ハンドブック」で読んでいたので、場面場面の意味が分かり、昨年よりは多少とも進歩した気がしました。

ところで、シェークスピア劇を観劇しながら気になったことがありました。それは頻繁に飛行機がグローブ座の真上を通過しうるさく感じることです。ヒースロー空港の離着陸数は世界でも有数と言われていますが、これでは少し興ざめです。ヒースロー空港は、ロンドンの風上数マイルにあり、大都市の上空を低空で飛行機が通過する危険性、騒音問題などが指摘されています。政府にはヒースロー空港拡張計画がありますが、前のリビングストン・ロンドン市長も現市長のジョンソン氏も揃って拡張計画反対を唱えています。グローブ座の観劇でヒースロー空港問題を意識するとは思いもよりませんでした。


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