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June 08, 2008

ロンドン大学LSEと植原悦二郎

ロンドン大学にLSEという政治経済分野で世界でも有数の研究成果を上げている機関があります。

私の事務所でもLSEの先生方とお話しする機会があります。過日は、ジョージ・ジョーンズという英国の地方自治の守り神のような名誉教授とお話しする機会がありましたが、その先生の書かれた「英国の地方自治に未来はあるか?」という論文が感銘する内容のものなので、先生の御了解をいただき、わが事務所で翻訳し、日本の雑誌に紹介しようと作業を進めているところです。180pxlondonschoolofeconomics_cford

ところでロンドン大学LSEというと、私の郷里出身の植原悦二郎という戦前活躍した著名な政治学者でその後政治家に転身した方が学ばれた大学でもあります。数年前に、この植原悦二郎さんの顕彰碑の除幕式が出身地の旧三郷村(現安曇野市)の貞享義民記念館の近くで営まれたという話を本家の伯父から聞いていましたが、私がロンドンに勤務しロンドン大学との関係が少しできる中で、改めてそのことを思い出しました。Uehara

郷土が生んだ偉大な国際的政治学者のことを、残念ながら現在の若い人はほとんど知りません。年配の人たちがわずかに知っているだけです。植原悦二郎さんの憲法思想が、実は現代の日本国憲法に強く反映されているという話を私も断片的に何度か聞いたことがありましたが、実際のところはよく分かりませんでした。しかし、インターネットのおかげで、簡単にその意味するところが分かるようになりました。

受け売りの情報で恐縮ですが、「日本国憲法制定の系譜・戦争終結まで」(原秀成著、日本評論社)という本の書評の中で、立花隆氏は、「日本ではすっかり忘れ去られている植原悦二郎という大正デモクラシー期の政治学者を掘り出して、アメリカ側の日本国憲法初期起草者たちが彼の著書から基本的な発想を得ていたことを証明した。新憲法は、アメリカの押し付けというより、大正デモクラシーの嫡子であったことが証明されたわけだ。」(週刊文春「私の読書室」)というコメントをなさっているのだそうです。今後、現行憲法改正の議論が行われていく場合には、立花隆さんのような見方も踏まえての議論になろうかと思われます。

ところで、有難いことに高坂邦彦という方が、とても分かりやすく植原悦二郎さんの業績をまとめておられます。これらを読むと大変コンパクトに植原さんの人となりや思想が分かります。安曇野出身らしい反骨精神とでも言うのでしょうか、どうもそういうものが基底にあるような気がします。そう言えば、やはり国会議員であった植原さんと同じ中信地域出身の唐沢俊樹氏は、内務省警保局長時代に、戦前特高警察が監視していたブルーノ・タウトを庇護したことで有名です。警保局長が特高警察の責任者だったのに、です。私が群馬県庁に勤務していた頃、高崎市の関係者から何度もその話を伺いました。以前、たまたま仕事上で知りあった俊樹氏の御子息の唐沢俊二郎さんにその話を申し上げ、その理由を伺ったことがありましたが、俊二郎さんは即座に一言。「それは、反骨精神だよ」でした。

さて、高坂さんの解説発言の中に、今日にも通じる意味深長な以下の内容を見つけました。民主主義の進歩というものはそうそう早くは進まないものだと笑ってしまいます。

「植原悦二郎先生を指導し、博士論文を出版してくれ、そのうえ講師に迎えよう とまでしてくれた、ロンドン大学LSEのウォーラス(Graham Wallas 1858~1932)教授は、世界的な権威のある政治学者です。例えば、今の東大総長の佐々木毅教授の著書『現代政治学の名著』は、世界的な学者十五名について解説したも のですが、その冒頭にウォーラスが紹介されています。ウォーラスはこう考えました。

イギリスの選挙権が拡大して庶民大衆も投票できるようになったのはいいが、彼らはあまりにも見識が足りないので、うさん臭い候補者にだまされて投票している。だから、まともな候補者の方が落選して、イギリスの政治の質は下落しつつある…。 これを防ぐために、庶民に対する教育の質を高める必要がある。そうすれば、選挙民はいかがわしい候補者の嘘を見破れるようになるだろうし、そんな候補者の演説に酔っている自分を恥ずかしく思うようになるだろう。

国民の見識の涵養という意味では、学校教育や情報提供・公開はもちろんですが、マスコミの普段の報道の仕方も非常に重要だと思われます。社会の木鐸たる立場に立ってのマスコミの報道姿勢にも期待したいところです。

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