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May 06, 2008

チェルシー薬草園の「タラの木」

日本のゴールデン・ウィークの時期、英国では5月5日の月曜日が休日となり3連休になっています。これまで貯まっていた原稿書きを一挙に仕上げるのには丁度良い時間が確保できるので有難いのですが、外の気温が次第に暖かくなっていく中での街歩きの誘惑につい負けてしまいます。しかし、出かけるとその都度それなりの発見があります。

4日の日曜日は、ぶらりとチェルシー界隈を歩きまわりました。先ず、国立陸軍博物館(National Army Museum) に行ってみました。ロンドンには戦争に関係する博物館がいくつかありますが、大英帝国の歴史は戦争と裏腹であり、そのことを見学しておくことも英国理解に重要だという気持ちで、少しづつ回るつもりでいます。Rimg1292

アメリカの独立戦争やフランスとのワーテルロの戦い、クリミヤ戦争などのずいぶん昔の戦争の展示充実していました。現代の陸軍の陣営の模様などもリアルに展示してあり、見ごたえがあります。今回の特別展として、第一次世界大戦の塹壕戦の中で、頭部を射抜かれるなどして夥しい数の兵士がむごい顔の損傷を受け、それをどのような形で手当てしたのかという「Faces of Battle」という展示には、思わず目をそむけたくなりました。顔の損傷の写真をそのまま示し、当時の外科技術を駆使して修復を行った記録なのですが、その痛々しさがかえって残酷に感じられます。

英国の戦争関連の博物館展示は、戦争の実像を余すところなく曝け出すジャーナリスティックな面があるように思われます。民主主義というか表現の自由というか、発想の自由度の幅が大きいように感じられます。

国立陸軍博物館の後は、チェルシー・フィジック・ガーデンに廻りました。フィジックとは薬草という意味です。つまりチェルシーにある薬草園です。1673年から続く今年で335年を数える英国で最古の薬草園です。開発、研究機能もあるこの薬草園の歴史的役割は大きいようです。ここで育った研究者は、キュー・ガーデン等の他の植物園の発展にも尽くしたのだそうです。Rimg1303
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ところで、フィジック・ガーデンと切っても切れない関係にあるのが、ハンス・スローン(Hans Sloane)という人です。1712年にこの薬草園の所有者となったスローンは、この土地が薬草園として維持されることを条件として、ロンドン薬種組合に年間5ポンドで永久的に土地を貸し付けることとしたのだそうです。今でもその相続人に5ポンドが支払われ続けているそうです。

このスローンという人は、大変な才能と財産の持主で、1727年には、ニュートンの後を継いでロイヤル・ソサイアティーの会長になったり、そのコレクションが大英博物館や自然史博物館の設立のもととなったりと、その才能をいかんなく発揮し人びとの大きな尊敬を集めたのだそうです。私の住むチェルシーには、スローン・スクエアーとかスローン・アベニューという地名があるほどです。大きな財産を惜しげもなく社会還元する姿勢が人々の尊敬を集めていることは疑いがないようです。Rimg1310

フィジック・ガーデンの真ん中にスローンの像が立っていますが、大きなイチイの木をバックにして自らの意思が時間を経ても生き続けていることを確認しているようです。

ところで、この薬草園に、日本で見慣れた木がありました。タラの木です。タラの芽は日本では好んで食されますが、英国でも薬草として位置づけられているのです。驚くと同時にタラの木を見直しました。そう言えば、リージェント・パークにもタラの木の一群が植えられていたのを思い出しました。この薬草園から移植されたのかも知れません。Rimg1313

薬草園のベンチに腰を掛け、薬草園の由来を書いたパンフレットを熟読しましたが、園内のハーブの薬効なのか頭も体も爽快になりました。街中が生きた博物館のような雰囲気のロンドンは、宿舎の周辺を歩き回るだけで時空を超越した新たな発見に出くわします。これこそがロンドン生活の醍醐味かもしれません。


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