« 地域のプライド形成を目指すパリッシュ@Aylesbury | Main | 自己評価は低いものの日本の世界貢献は実は世界一の評価 »

April 27, 2008

「通行権」に裏付けられた英国の公共歩道

4月20日にピーターズフィールド(Petersfield)のJETウォークに参加しました。月例のウォーキングですが今回はハンプシャーにあるカントリーサイドのウォーキングでした。暖かくなってきたこともあり今回は9人の参加を数え、盛況でした。昼食時は予め予約しておいたレストランの庭で地元産のビールを飲みながらのイングランド家庭料理に至福の時を過ごしました。

Rimg1270

ところでカントリーサイドのウォーキングを続けていると、フット・パスという標識があちこちにあることに自然と関心が向きます。国中に張り巡らされている感じです。フットパスは、パブリック・フットパス(public footpath;公共人道)と言ってみたり単にフットパス (footpath) と呼んだりするのですが、主として歩行者に通行権が保証されている道のことなのです。Rimg1273

その道と言っても、日本でいう道路とは異なり、整備された通路があるとは限らず、原野を横切ったり、農地の脇を通ったり、柵を乗り越えて牧場を横切ったりと、様々な形態があるのです。柵を乗り越えるために、螺旋状の階段やキスゲートと呼ばれる小さな門があるのです。これらは長い伝統の中で編み出されてきた歩行者用の装置なのです。180pxtl0452_stile

ところで、英国でこのフットパスを可能にしている仕組みというものは何なのかという疑問を持ち、少し調べてみると面白い制度があることを知りました。

それは通行権(right of way)と呼ばれるものです。イギリスで認められている公共の権利、日本語で言う一種の地役権とでも言えるものなのでしょう。国有地・私有地の別なく、地権者が存在する土地を突っ切って公衆が通行することが認められる権利があるのです。もちろん通行が許可されるのは、その権利の行使が認められた特定の路線のみです。

この権利によって公衆の通行が許可されている通路のことも、ライト・オブ・ウェイ(right of way)と呼ぶのだそうで、権利の名前と通路の名前を混同しそうです。そしてこの通路にはいくつかの種類があり、「パブリック・フットパス」、「パブリック・ブライドルウェイ」、「バイウェイ・オープン・トゥー・オール・トラフィック」、「リストリクティド・バイウェイ」、「パーミッシブ・パス」といった様々な種類があるようです。

私が何度か歩いているのはこのうちのフットパスなのですが、少し前に行った公園の森の中の小道で乗馬のご婦人に出くわしましたが、多分彼の道は「ブライドル・ウェイ」だったのでしょう。ブライドル(bridle)ウェイとは「馬の道」なのです。今回のウォーキングでも牧場の脇で馬がこちらを見ていたので挨拶がてら写真を撮ってきました。馬による散歩が普通に行われているとは、なんと贅沢なことでしょうか。Rimg1088
Rimg1276_3

カントリーサイドでは、フットパスが古くから親しまれ、全国に網の目のようにフットパスが張り巡らされています。フットパスにより歩きたいルートが自由に選択できるのです。フットパスには、道しるべとして金属製またはプラスチック製の丸い板に黄色の矢印が描かれたり、杭や樹木などに黄色の点を描くなどの目印を付けています。

こうした公共通路を規制する法律もあり、その中で地方自治体(広域的自治体である県やユニタリー自治体)には義務付けもあるのです。それは地域内のこれらの通路を記した地図を作成し公開する義務、各種案内標識を設置する義務です。

今回私が歩いたフットパスにはハンプシャーカウンティカウンシルの看板が沢山目につきました。インターネットで調べてみると、ハンプシャーが作った「Rights of Way Maps」が割合に充実していることを認識しました。Defmap

ところで公共通路に関して自治体が作る義務のあるマップはDefinitive Mapと呼ばれるのですが、現時点ですべての公共通路をカバーできているわけではないようです。2026年までにこのマップに公共通路が登録されないと、公共通路が失効してしまうとの法律の規定もあるようなので、自治体も公共の権利擁護のための掘り起こし調査の努力が求められます。

一方で、スコットランドでは、イングランドやウェールズとは若干異なる仕組みのようです。地方自治体には権利通路を示す標識などの設置義務はないものの、「Scotways」が、この通路そのもの維持・管理・保全を行っているようです。

カントリーサイトを歩いて、ウォーキングを支える制度的仕組みを連想するなんてやや無粋だったかもしれませんが、日本の農山村振興の一つの手段として応用できる潜在的可能性を強く意識しました。全国の公共歩道を、金をかけずに整備し、自然環境に親しみことで国民の健康を増進し、併せて農山村への都会人の接触の機会を高める。「歩く速度」で考える地域づくりです。私的所有権と公共の利益を調和させる思想、そして通行権の仕組みと全国規模での自治体の公共歩道地図づくりはとても興味深い仕組みです。場合によっては道路財源をこの分野に使えるかもしれません。


|

« 地域のプライド形成を目指すパリッシュ@Aylesbury | Main | 自己評価は低いものの日本の世界貢献は実は世界一の評価 »

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/58165/41014678

Listed below are links to weblogs that reference 「通行権」に裏付けられた英国の公共歩道:

« 地域のプライド形成を目指すパリッシュ@Aylesbury | Main | 自己評価は低いものの日本の世界貢献は実は世界一の評価 »