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April 27, 2008

地域のプライド形成を目指すパリッシュ@Aylesbury

4月中旬、英国のパリッシュの全国団体(NALC)から、英国内の比較的規模の大きなパリッシュを訪問し、その運営の実態を20人強の参加者で学習しながら併せて委員会を開催するという行事にわが事務所もお誘いいただきました。

パリッシュの運営の実態を具体的に承知する良い機会でもあり、私も喜んで参加しました。訪問先はバッキンガムシャーにあるテムズ川上流地域に所在するAylesburyという人口規模が6万人強という比較的大きなパリッシュです。

英国のパリッシュはとにかく地域をどのようにして住みやすくしていくかを真剣に考えています。地元の市の公共墓地の管理が地元の目から見て不適切だと、パリッシュが申し出て自主管理に移管するということまでやっています。2006年に地元の市から墓地管理の移管を申し入れ、個々人が全体の調和を無視して個人の墓地を立派にする傾向に歯止めをかけようと路線変更をしています。地元のイタリア系の資産家が立派な(立派すぎる)一族の墓を周囲との調和を無視して墓地の真ん中に作ったことがパリッシュの反発を買ったのです。それまで地元の市が業者に墓地管理を任せていたのをパリッシュの直接経営に移管し、経費も節減しています。墓地を地元の共有資産としてとても大事にしているのです。とにかく公園のような墓地なのです。Rimg1176
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ランアバウトという方式の交差点のロータリーの真ん中を花でいっぱいにする運動もしています。それまでのみすぼらしいロータリーは年中花でいっぱいです。これはカンウティからの移管。

週末の中心市街地でのイベントを市域の諸団体と一緒になって考え、年間を通じセンスの良い一連の企画も展開しています。こうして中心市街地に人を集め商店街の活性化を目論んでいます。近隣からの農産物市場開催、音楽フェスティバル、バレー、ミュージカル、人形劇、お祭り、パレード、ガーデンパーティ、陶器市など様々なイベントが盛りだくさんで、楽しくなります。市民が様々な局面で参加する機会がとても多いのです。私たちが訪問した際も、広場では露天市が開かれていました。Rimg1191

パリッシュ内の6か所に約600区画のアロットメント(allotment)と呼ばれる市民農園を貸出し、市民から好評を博しています。丹精込めた農作物育成に打ち込む市民の方は生き生きしています。年に一度の作物品評会は大いに盛り上がるそうです。これも市民同士のつながりを強めています。訪問時の日焼けしたおじさんの笑顔が印象的でした。Rimg1187

Aylesburyの広報紙には、「Take pride in Aylesbury Town」というまちづくりの理念がしっかり書かれています。「自分のまちにプライドを持とう」ということです。その目標に向けて、若者からお年寄りまで皆が地元にプライドを持てるようなまちづくりを考えているのです。誠に一貫しています。

待ちの姿勢ではなく、市や県の仕事が地元の目から見て不適切なやり方だと、自分たちで管理の移管を申し出るという自主性、積極性に溢れています。このパリッシュの基本スタンスは、保守でも労働党でもなく「地域主義」、「プライド重視」なのです。こうしたパリッシュの「愛郷主義」には心を打たれます。

そしてその地元のシンボルは、何といってもパリッシュ教会です。このまちのパリッシュ教会であるセント・マリー教会の地階には教会をうまく生かした落ち着いた喫茶店まであり、地元の人に大事に大事に守られていることが一目でわかります。現在のコミュニティ自治体としてのパリッシュは、このパリッシュ教会の機能を一部引き継いできた歴史もあるのです。Rimg1189

Aylesbury視察の後、パリッシュ事務所内の議会室でNALCの委員会にも参加しました。こうした地域性の強い団体の移動議会に参加できるとは光栄なことですが、地球の反対側の国の日本が、地域自治の在り方に殊のほか関心を持っているという事実に英国の関係者も「新鮮な親しみ」を感じてくれているようです。前夜の晩餐会から引き続く会合で、関係者ともすっかり打ち解けることができました。市場経済化が進む英国ですが、足元のコミュニティの力強さはいまだに健在なのです。こうした生きた「ソシアルキャピタル」がある中での市場経済化なのです。
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