欧州の地方分権度合の相互チェックシステム
2008年3月のスウェーデン訪問の際に、EU構成国相互の分権度合の相互チェックという興味深い仕組みを耳にしましたのでご紹介します。
それは、欧州評議会の加盟国がお互いの地方自治制度の分権のレベルを監視して、評価するモニタリング制度の存在です。ヨーロッパ自治憲章を批准した41カ国の加盟国間で、欧州評議会の組織の一つである欧州地方自治体協議会のスポンサーシップの下、ある加盟国からの代表と学者の視察チームを別の加盟国へ送り込み、その国での自治憲章の進捗状況や実施度合いを調査する。調査後にはレポートを提出し、勧告も出される、というものです。
1985年に制定された自治憲章を批准した国は、自国の地方自治体に対して、政治的、行政的、財政的自治権を保障していかなければなりません。加盟国の地方自治体の自律性と自主性に関しては、加盟国が憲法や法律で保障し、十分な財源保障で担保し、補完性の原理や直接選挙などを通して実現しなければならないのです。
以前筆者が紹介した、英国のコンコーダ(国と地方の協定)も、考えようによってはこの欧州全体をカバーする自治憲章のプレッシャーの中で締結されたと考えることができます。
さて、欧州地方自治体協議会の説明では、「モニタリングは、地方自治体の直面するデモクラシーというテーマに関し、加盟国の政府と建設的な政治的対話を可能にする制度である。」、「モニタリングレポートの結果として、多くの加盟国で数多くの法改正や改革が開始された」ということです。
2005年に発表されたスウェーデンの地方自治制度の視察勧告レポートでは、スウェーデンの実態は賞賛されています。地方自治体が社会福祉制度のなかで果たす重要な役割、国会の地方自治充実に向けた前向きな姿勢、自治体の課税権、水平的財政調整制度による財源保障などが自治憲章の原則が実施されている根拠として挙げられています。
しかし、分権先進国スウェーデンでも、モニタリングの勧告によると、最近の傾向として「自治体の業務に対して、中央政府の細かい規定が増えている」と指摘されています。さらに、国レベルでさまざまな社会福祉を享受する市民の権利を法制化している一方で、そのサービスを提供する自治体に対して十分な財源保障がなされていないと懸念を表明しています。
私どもが訪問したスウェーデン自治体協議会(SALAR)の説明では、しかし、このレポートの指摘があった後は、この傾向は「悪化してはいない」とのことでした。
因みに英国に関しても、1998年に同様のレポートが公表されています。
欧州評議会のメンバー国に、我が国の地方自治制度が、欧州自治憲章の観点から見てどの位のレベルにあるのか、調査・勧告してもらうと刺激になって面白いかもしれません。
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