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March 24, 2008

チェコのユダヤ人強制収容所テレジン

英国では3月23日のイースター(復活祭)を挟んでまとまったイースター休暇に入り、私も3月下旬に土日を挟み5連休となりました。イースターは「春分の日の後の最初の満月の次の日曜日」に祝われるため、年によって日付が変わる祝日なのです。

そのイースター休暇中に、私の上の息子が大学の春休みで英国に遊びに来ていたことから、息子と二人でチェコに2泊3日の旅行に行ってきました。インターネットでの予約の旅行はとても安く行けます。私はexpediaという会社のリンクを活用しましたが、ホテル予約も含めすべて自宅のパソコンからのインターネットで用が済み、簡単・格安で海外旅行が本当に手軽になった気がします。欧州はこういうごくやり方が普通のようです。
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さて、チェコではプラハ市内を中心に散策を楽しみましたが、帰る日の半日、テレジン(Terezin)というプラハとドレスデンの中間にある小さな町のユダヤ人強制収容所を訪問してきました。プラハでシナゴーグを見学した際に、テレジン収容所内で子供たちが描いた絵をたまたま見たこともきっかけになりました。Rimg1031

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テレジンは1780年にプロシアからボヘミアを守るため作られたという要塞の中にある街です。形が函館の五稜郭に似ている堅牢な城壁に囲まれた街です。テレジンには川をはさんで大要塞と小要塞がありますが、小要塞のほうは19世紀以降、反ハプスブルグ運動に携わった政治犯を収容する監獄として役割を果たしてきたとテレジン記念館の資料には書かれています。

この資料によれば、チェコスロバキアがナチス・ドイツに占領された後、1940年6月、ナチス・ドイツはこの小要塞に拘置所を設置し、更に1941年11月には大要塞(つまりテレジーン市そのもの)にユダヤ人ゲットーを作り、1942年の半ばまでには住民を強制移住させテレジン全体を収容所としたのだそうです。当時のチェコスロバキア最大のユダヤ人強制収容所であり、ここには14万人のユダヤ人の成人男女や子供たちのほか、大戦末期には前線にあったポーランドやドイツの収容所から1万5千人以上の囚人が運ばれてきたのだそうです。

本来は、アウシュビッツやビルケナウの絶滅収容所に移送される一時滞在収容所として位置づけられたのだそうですが、「老人ゲットー」としての機能もあったそうです。これらの機能を含め、この収容所は「通過目的」、「選別殺害」、「宣伝施設」という3つの機能も果たしていたとのことです。最後の「宣伝施設」に関しては、ナチがこの施設を「ユダヤ人自治移住地」として「美化キャンペーン」を行い、そうした宣伝がユダヤ人強制収容所の真の姿を覆い隠すベールとなってしまったという恥ずべき事実もあるとのことです。

2時間半ほどで大要塞、小要塞を駆け足で見学しましたが、これほど手酷く人権を抑制する施設を作り運営した人類の歴史の後をまじかに見ると背筋が寒くなるような思いに襲われます。テレジン全体の様子は、堅牢な城壁都市であり、何も知らなければ兵舎の後か何かかなあと感じるのかもしれませんが、テレジン記念館の映写室の記録映画の中で繰り返し流される、「この町で過ごしたユダヤ人の生存率は異常に低かった」という数字の羅列を聞くにつれ、何とも言えない気分になってきます。「ARBEIT MACHT FREI」という悪名高い標語も現物を初めて目にしました。Rimg1034

プラハからのバスの行き帰りにたまたま一緒になったシカゴから来たというアメリカ人のご夫婦がおられました。私の方から「ここに来られたのはなぜですか」と聞くと、「私たちもユダヤ人なのです。直接の親族でここにいたものはいませんが、それなりの関係はあります」ということでした。逆にご夫妻から「あなたたちは何故ここに」と聞かれ、「私は昔広島に住んだことがあり、自ずと関心が向くのです」と答えました。また、「息子さんと一緒なのですか」と聞かれ、そうだと答えると、こういうところに若いころに連れてくるのは意味のあることだと語ってくれました。息子もそれなりに感じるところがあったようでした。

プラハは歴史と文化と芸術の凝縮したような美しい街ですが、それとは対極となるような悲惨な歴史がすぐ近くに横たわっているところが欧州の複雑なところです。ところで、先述の「ユダヤ人自治」の話も、自治組織が「誰を東に送るのか」(アウシュビッツ方面のこと)を決めさせられていたという事実もまた驚愕すべき真実なのです。


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