« ロンドンで「信濃の国」を歌う | Main | ケントの古城巡り »

January 20, 2008

英国における「国と地方の協定」

英国の面白いところは、政治的判断が、官僚的な慎重さを跳ね返して、すぐに実現してしまうところにあります。それがうまくいかなければ、また変えればいいという臨機応変の国なのです。

2007年末に、英国の中央政府と地方自治体間の関係調整に関する枠組みである「中央・地方協定」が締結に至りました。

ヘイゼル・ブリアーズ・コミュニティ・地方自治相と地方自治体協議会(LGA)のサイモン・ミルトン議長が、2007年12月12日のLGA総会で、に関する枠組みを示す「中央・地方協定(Central-Local Concordat)」に正式に署名したのです。

これに先立ち、2007年7月に政府が発表した緑書「英国の統治(Governance of Britain)」では、この協定について、「コミュニティ・地方自治相は、地方自治体協議会と協力して、中央政府と地方自治体間の関係を規定する協定を策定する。協定は、地方自治体の権利と義務を規定する初めての合意書となり、可能な限り地域に効果的なリーダーシップを提供し、地域コミュニティを強化するなどの自治体の責任についても盛り込まれる」と記していました。

今回の協定は、この夏の政府の公約を実現したものなのです。以下はこの「中央・地域協定」の全文仮訳ですが、国と地方が、お互いの関係の在り方の基本に係る基本原則について、対等な立場で協定を結ぶということは、今後の我が国の国と地方の関係調整を考えていくにあたって、それなりに参考になるものと思われます。

@@@@@@

1. グローバル化から社会的変化、人口構成における変化に至るまで、地域は様々な大きな課題に直面している。地域の住民の公共サービスに対する要求水準は、公共サービスへの期待値の上昇と向上心の高まりに呼応して、当然のことながら上がっている。それらの課題と地域住民の期待に応えるため、コミュニティは戦略的リーダーシップを有することが必要であり、公共サービスは質及び効率性を継続的に改善し、また全ての住民を公平に扱うことが求められる。我々は、英国の全ての地域で、全ての住民のために、地域と地域の公共サービスがこの課題に取り組むことを保証し、全住民の生活の質を向上させることが、中央政府においても、地方自治体においても、選挙で選ばれた議員と任命を受けてその職務を遂行している職員の義務であると考える。

2. 国会は、「2007年地方自治・保健サービスにおける住民関与法(Local Government and Public Involvement in Health Act in 2007)」を承認した。同法は、2006年10月発表の地方自治白書「コミュニティの強化と繁栄のために(Strong and Prosperous Communities)」に盛り込まれたその他の方針と共に、意義深く、今後も長く続く変化を示すものである。これらは、中央政府と地方自治体間の関係について新たな土台を形成する。我々は今後、この土台をベースに、中央政府と地方自治体の関係を更に発展させていく。

3. 中央政府、地方自治体の統治機構としての妥当性の根拠は、国会と、地域と公共サービスの改善において先導的な役割を担うことを中央政府及び地方自治体に期待する市民により選挙で与えられた権限である。

4. このことは、中央政府と地方自治体が、公共サービスの改善と民主主義の強化においてパートナーであることを意味する。中央政府と地方自治体が共有する目的として特に以下のものが挙げられる。

・繁栄するコミュニティの創造と維持。繁栄するコミュニティとは、人々が、住み、働き、子供を育て、引退後も暮らしたいと思うような空間である。また、公共サービスの恩恵を受けることができ、妥当な価格で住みよい住宅に住むことができる空間である。
・反社会的行動及び犯罪に取り組み、人々の健康を促進する。
・児童、若者、家族がより良い公共サービスを受けられるようにする。
・高齢者の更なる自立と福利向上を促進する予防的施策を通じて、高齢化社会のニーズと期待に応えるべく準備を整える。
・産業の振興を図る。職業技術取得と雇用の促進、富の創造、繁栄の拡大を図り、これらの利益を全ての人が共有できるようにする。
・環境を保護、改善し、気候変動と環境汚染に取り組む。
・地域のボランティア団体、コミュニティ・グループ、社会的企業(social enterprises)を含む第三セクターを支援する。
・政治的または宗教的過激主義が立ち入る隙を与えず、寛容性、良識、尊敬の心を持って多元的で健全な民主主義を促進する。
・地方議会議員が高い水準をもって自らの行動を律するよう奨励する。

これらの目的を達成するにあたり、「権限を最上の形で行使するのは、効率的で機能的な最基底の行政機関である」という前提が存在すべきである。

5. 中央政府は、国の利益に適うようその機能を果たす責任と民主的権限を有する。中央政府は、国会を通して機能を果たし、国の経済的利益、公共サービスの改善、公共サービスの水準、課税などが最も重要な問題である。

6. 地方自治体は、公共サービスのみならず、地域の全住民の繁栄と福利、コミュニティ全体の結束についても責任を有する。地方自治体は、コミュニティの福利促進に関する全般的な権限と、地域の社会的、経済的、また環境面における福利を保証するべく最大限の努力を払う義務を負う。LGAと中央政府は、全ての自治体に対し、この福利の促進という権限を効果的に利用し、またより多くの行政業務を担うよう奨励することで協力する。

7. この関係において、中央政府と地方自治体は、相互に対し権利と責任を有する。

8. 中央政府は、英全土を対象とした政策を策定する権利を有する。中央政府が策定する政策には、公共サービスの最低基準も含まれ、これは、地域と協働・支援し、また著しいサービス水準の低下を避けるため最終手段として中央政府が自治体業務に介入することを可能にするためのものである。中央政府は、地方自治体の機能を定める法律を国会に提案する。

9. 中央政府は、これらの権利を行使するにあたり、地方自治体と協議、協働すべき義務を負う。中央政府は、地方自治体による責務の遂行を妨げる障害を順次取り除くことを約する。これら障害には、業績評価制度による自治体への負担、自治体への政府補助金の使途制限、中央政府による自治体向けガイダンスが含まれる。

10. 地方自治体は、地方議会選挙で示されたコミュニティの優先事項に取り組み、地域の公共サービス提供において先導役を担い、不必要な指導や監督なしに地域の未来を形成する権利を有する。

11. 地方自治体は、説明責任を有し、透明性が高く、コミュニティの需要に応えるリーダーシップを提供すると共に、地域の公共機関 、産業界、第三セクターとパートナーシップを組み、協力して公共サービスの改善を継続、推進する義務を負う。

12. この協定のパートナーである中央政府と地方自治体は共に、税金を適切に用い、権限を委譲し、国レベルにおいても地域レベルにおいても、討論と意思決定、公共サービスの形成と提供にコミュニティと住民を参加させる義務を負う。

13. 中央政府、地方自治体が今後、協働して実現することは、「2007年包括的支出見直し(Comprehensive Spending Review、CSR)」に盛り込まれた「公共サービス合意(Public Service Agreements)」 の達成、地方自治体による公共サービスを評価するための約200項目の新業績指標に基づいた新たな業績評価枠組の導入、新業績指標に沿った各地域の達成目標を35以下に限定すること―である。

14. 本協定が掲げる中央政府と地方自治体間の新たな関係の核となるのが、地域の複数の公的機関の間で、または地域の公的機関と中央政府の間で締結される新たな形式の「地域協定(Local Area Agreement)」であり、これは、地方自治体が単独で、またはその他の組織とパートナーシップを組んで行う各地域における公共サービスに関する合意、その提供、監視のための主要なツールとして締結されるものである。この目的 を達成するためには、中央政府の各省、その執行機関、地域政府事務所、地方自治体、地域のパートナーの業務手法、慣行において大幅な変化が必要とされることを我々は認識している。中央政府と地方自治体は、必要な変化を効果的に導入するという責任を共有している。

15. 中央政府と地方自治体は、◎金銭的効率性(value for money)を有する公共サービスを提供する、◎地方自治体が担う新たな責務を含め、公共サービスの提供に十分な資金が提供されていることを保証する、◎透明性が高く、明晰で、説明責任を有するという原則が地方税に適用されることを保証する――という責任を共有する。
中央政府と地方自治体は、国の財源がどの程度地域に投入されているかに関してより明確で透明性の高い情報を地域住民に提供し、また「欧州地方自治憲章(The European Charter of Local Self-Government)」が言及する地方自治体への大幅な自治権の付与を促進するため、資金調達方法について自治体により多くの柔軟性を与えるべく協働する。

16. 中央政府と地方自治体は、地域企業と自治体間の新たな関係を築くべく協働する。この目的は、特に警察と保健サービスなど主要な公共サービスの地域における民主的な説明責任を高めること、老人介護・支援制度の改革に向けた選択肢を探ることである。中央政府と地方自治体は、「コンパクト(Compact)」の原則に則り、第三セクターと協働するという責任を共有する。

17. この協定のパートナーである中央政府と地方自治体は、本協定によって新たな意義を与えられた「中央・地方パートナーシップ(Central-Local Partnership)」の会合で定期的に顔を合わせる。「中央・地方パートナーシップ」の役割の一つは、本協定の機能を監視し、必要に応じてこれを改訂することである。

(以上)

|

« ロンドンで「信濃の国」を歌う | Main | ケントの古城巡り »

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/58165/17759208

Listed below are links to weblogs that reference 英国における「国と地方の協定」:

« ロンドンで「信濃の国」を歌う | Main | ケントの古城巡り »