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December 10, 2007

「ロイヤルフェスティバルホール」と「まつもと市民芸術館」を繋ぐ糸

年末の週末、ナショナルギャラリーで絵画を鑑賞した後、テムズ川河畔のロイヤルフェスティバルホールでシューベルトの交響曲「未完成」と「グレート」の演奏を堪能しました。

Andras Schiffの指揮、フィルハーモニア・オーケストラの演奏によるものです。勤務先が目と鼻の先にあるので、事務所で時間調整をして出掛けました。同僚の村瀬徹氏が毎週のように音楽鑑賞に出掛けており、今回はご一緒させていただきました。村瀬氏は芸術関係の造詣が非常に深く、今回のSchiffがピアニストとしても有名で最近指揮の分野にも進出してきていることなどをご教授いただきました。
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私が松本地方の出身であることをご存知の村瀬氏は、毎年夏に松本で演奏するサイトウキネンオーケストラに憧れており、欧州の音楽専門家の中でサイトウキネンのことを知らない人はいないということも教えてくれました。なぜ松本に拠点があるのかを不思議がっているので、鈴木鎮一という世界的に知られたバイオリン教育のパイオニアが松本を拠点に鈴木メソッドと呼ばれる独自の教育方法を開発し多くの弟子を輩出していることをお教えしました。地元の熱意とそれを支える音楽的文化の蓄積と広がりがサイトウキネンオーケストラを引き寄せたに違いないのですよ、と。因みに、中国問題の第一人で東京外国語大学の元学長、松本出身の中島嶺雄氏が11月29日にロンドンで講演をされましたが、その折に中嶋氏は、「実は鈴木メソッドの第一期生で、文化大革命の最中に、当時中国では赤衛兵に目の敵にされたバイオリンを持ち出し、演奏をした」話をなさっておられました。弾いた曲が何と、「東方紅」、だったのだそうです。鈴木メッソッドの遺伝子は分野を問わず世界を駆け巡っています。
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とにかく1人の教育家の存在が発端になり松本の名前を世界に轟かせているのです。1つの才能が別の才能を引き寄せ、それが集まると世界的なものとなる。サイトウキネンは結晶のように思えてきます。

地元の松本市もその文化的土壌にふさわしい施設「まつもと市民芸術館」を整備しました。一部の住民の方からは松本市には豪華すぎるとの批判もあったようです。しかし当時の有賀正市長は政治生命をかけてその実現に尽力され、実際に市長としての政治生命を失うことになりました。しかし、ご本人は、ある程度覚悟を決めて決断されたように感じられます。その評価は後世の人が判断することになるのでしょう。私は、ロンドンにいて、故郷に誇るべきものがあることをとても有難く感じています。
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ところで、ロイヤルフェスティバルホールの近代的な外装・内装は、どこか松本市民芸術館を髣髴とさせるものがあります。ロンドンで演奏を聞きながら松本のことを連想するとは思ってもみませんでした。

演奏のコンサートマスターは、Maya Iwabuchiという日本人女性でした。長い黒髪を激しく震わせながらの熱演に注目していました。ひょっとして彼女も鈴木メソッドで勉強したのかなあ、などと想像しながら、演奏に耳を傾けていました。だとしたら鈴木メソッドが、Iwabuchiさんを通して松本とロンドンを結び付けているのかも知れません。

演奏は、夜の7時半から10時まででした。演奏が終了して家に着いたのは10時半でした。至近の距離にこういう芸術文化の拠点が多数あることは何とも言えない至福の環境です。しかし、それは自然にできたというよりも、行政当局や市民が長い時間をかけて培ってきた成果なのです。現在のロンドンも、この蓄積を更に拡大し、世界中から観光客を集めるために更に洗練度を高めようとしています。日本が後ろ向きにばかりなっているとしたら寂しく感じます。

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