博物館を活用した英国の防災教育
週末のある日、ロンドンの宿舎から歩いて数分のサウスケンジントンにある自然史博物館をぶらりと訪ねてみました。恐竜のコレクションを始め7千万点の展示物を誇る圧倒的な重量感のある博物館です。進化論で有名なダーウィンの収集物の展示もある博物館です。
その博物館内に、何と、日本人の目には見慣れた阪神大震災の展示があるではありませんか。実際に床を揺らして臨場感を持たせる装置も設置するなど大変凝っています。
地震のきわめて少ない英国では地震のイメージが沸きにくいのですが、阪神大震災の際のスーパーの陳列品が揺さぶられる模様などもビデオで流しています。英国人の子供たちも地震とはどのようなものかを楽しみながら体験できています。地球の成り立ちを説明する中での地震の被害の現実の姿の解説なので、子供たちは巨視的に地震というものを捉えられるように思われます。この体験をきっかけに、神戸を訪問してみようと思う子が出てくることを期待します。
もうひとつ、ロンドン博物館というロンドンの歴史を展示解説した博物館がバービカンという地区にありますが、その中にロンドンが見舞われた最大の災害、1666年のロンドン大火の展示があります。現在のロンドンの中心部であるシティと呼ばれる地域の5分の4を焼き尽くし、13200の家屋を焼失させた火災は、10万人のホームレスを生んだのだそうです。
様々な角度からこの大災害を分析した展示は、臨場感最高です。東京が見舞われた関東大震災の模様を彷彿とさせます。但し、関東大震災が10万人を超える死者を出したことと比較し、ロンドン大火の公式死者数は10人なのだそうです。当時、英国は外国との戦争をしており、外国人に対する猜疑心から、きちんとした英語を話せない外国人が暴徒から襲撃を受けた記録も書かれています。この点は朝鮮人が襲撃された関東大震災時と似ているのかもしれません。
当時、シティのこの地域はプロテスタントの居住地域だったことから、火事の原因はカトリック教徒の放火によるものであるという風説が流され、火元の家にはそのことが書かれた看板が立てられたのだそうです。その看板の展示もあります。
ロンドンではこうした博物館を活用して防災教育が行われています。教師用のホームページも充実しており、防災教育の教材としてとても充実しています。わが国の防災教育の素材を充実していく上でも大いに参考になりそうです。
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