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November 11, 2007

戦略企画機能に徹するロンドン広域市

鷲沢正一長野市長が11月上旬にロンドンにいらっしゃた機会に、2012年のロンドンオリンピックをホストするロンドンの当局をご訪問いただくことができました。

ロンドンといっても、広域都市のロンドンを統括する自治組織を日本語で何と訳すかは実は難しいのです。サッチャー政権は1986年に、当時の大ロンドン市と訳されていたGreater London Council(GLC)を廃止したのです。もちろん廃止の際は、GLCが有していた権限・機能(警察、交通、消防など)を他の組織や基礎的自治体に委譲した上での廃止でした。保守党政権は、当時労働党の牙城であった大都市圏広域自治体を目の敵にしたと言われています。

その後政権を奪回したブレアー労働党政権はロンドンの広域行政を担当するGreater London Authority(GLA)を設立しました。このGLAを大ロンドン市と訳すことが適当なのか、迷っているのです。

GLAのリーダーであるロンドン市長は、英国の一般の例とは異なり直接公選です。多くの自治体は、議員の中から首長が互選されるのですが、ロンドンは法律で直接公選が定められているのです。現市長は労働党員のケン・リビングストンという人でロンドン市民の人気が高い人です。

市長は労働党ですが、25名の市議会議員の第一党は保守党です。今回の訪問は、我が事務所と付き合いのあるMurad Qureshi議員(労働党)に御同行いただけました。

Qureshi議員の案内で、伝統的なロンドン市内の赤レンガ造りの建物とはまったく異なる斬新なGLA庁舎を議事堂の中から議員・スタッフの執務室まで全て見せて頂きました。Rimg0516
「全て」といってもGLAは600人の職員を抱える戦略企画部門に特化した組織なのでサッと見れます。新宿の東京都庁舎との比較をイメージすると拍子抜けします。マンパワーを要する地下鉄やバスなどの交通部門はロンドン交通局に、警察機能はロンドン警視庁に、ロンドンの都市開発機能はロンドン開発公社に、消防・救急はロンドン消防緊急時計画局に委ね、GLAは「スリム」な機能に特化しているのです。

鷲沢市長は、政府の方針で自治体が廃止されたり復活したりする英国の実態にいささか驚いておられました。Qureshi議員は市長の与党として市長を支えている立場から資料を基に分かりやすくGLAの機能についてご説明いただけました。

とにかくオリンピック経験市の市長を迎えてQureshi議員の説明も力が入ります。Qureshi議員には公費で支弁している秘書が2名いるのだそうですが、そのうちの1人がQureshi議員が鷲沢市長を案内する模様を写真に採っており、議員にとっても大歓迎の訪問になりました。

ところで、鷲沢市長の目が光った一瞬がありました。The Londonerという新聞がドアの入り口に積み上げてあったので、私から、「この新聞は気が利いています。市の広報誌なのですが、中身がよく練ってあり、まるで新聞のように肩を張らずに読めます」と申し上げると、鷲沢市長はQureshi議員に、市民への配布の仕方などを聞いておられました。市の行っている情報を分かり易く迅速に市民に伝えることの意味を鷲沢市長は感じておられるようでした。

非常に短い間でしたが、長野市長にロンドンの市政の一端に触れていただくことが叶い、我が事務所も光栄でした。長野県及び長野市はオリンピックをホストしたということで、海外では大きな知名度があります。日本の国内ではそのことが持つ意味についての認識がやや不足しているように思えて仕方がありません。

英国では、オリンピックをはじめ、サッカーやラグビーのワールドカップ、英国連邦スポーツ大会などの国際競技大会を誘致するのに必死です。それを大都市圏の地域振興の起爆剤として活用しようと考えているのです。継続的イベントとハード整備のマッチングに関してはこちらには大変なノウハウがありそうです。

日本の市町村長さんをはじめとした自治体関係者には、遠慮せずに当地にお越しいただきたいと願っています。日本の縮み志向の考えは少なくとも英国ではクエスチョンマークです。


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