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November 18, 2007

北ドイツでは消防団が地域結束の要@ポツダム大学教授の認識

ポツダムでは、ポツダム大学地方自治研究所を訪問し、Michael Nierhaus教授、Jochen Franzke教授、Christoph Reichard教授、Böchner博士から、法学・行政学のアカデミックの視点から見たドイツの地方制度改革の動きについてお話を伺うことができました。

因みにポツダム大学は東西統一後の1990年の設立であり比較的新しい大学ですが、社会科学系の研究水準が高いところとして特色があるのだそうです。17500名の学生を擁し、ポツダム市内に3つのキャンパスを持っているとのことでした。他州では学費を徴収しているところもあるようですが、ブランデンブルグ州立大学であるポツダム大学は学費は無料とのことでした。

お話を伺う中で特に興味深かった点は、市町村合併に関して欧州でも様々な研究が行われているという点でした。今年の9月にマドリッドでEU諸国に於ける市町村合併に関する事例発表が行われ合併後の問題の検証を行っているのだそうです。これについては英語による本も出版されるということでした。

合併に伴い各国が直面する共通の課題は、市町村合併により広域自治体が形成されていく際の従来の市町村区域の機能をどのように残していくのかという点だという説明がありました。合併後の市町村の元に下位区分として位置づける仕組み、当該地域の政治的代表の位置づけの問題、政治過程への住民参加、アイデンティティの確立などの住民意識をどのように保持していくのかという問題など日本と共通する課題があります。

Franzke教授の解説では、①制度的な対応としては、下位区分に名誉職的区長などを置き市議会がそれらの人から意見を聞く機能を持たせること、当該地域の市民への窓口として区長を機能させること、②社会的的解決としては、地域に於ける様々な団体との連携を深めること、例えばフェアライン、カトリック教会(南ドイツにおいてはその影響力が強い)、消防団(特に北ドイツでは消防団の役割が重要)などとの協働が重要、とのお話を頂けました。

大事なのは、新しい組織を立ち上げることではなく、既にある組織を再活性化することだ、という指摘には納得させられます。

また、市町村合併後のアイデンティティーの喪失という課題については、少数民族の伝統の保護、言語の掘り起こし、文化尊重が非常に大事だというお話も琴線に触れるものでした。日本でも信州大学の笹本教授が地域アイデンティティーの確立の観点から伝統行事の掘り起こしに熱心に動かれていますが、ドイツでも共通した考え方があるようです。

ところで、ドイツで消防団が地域再生に非常に重要な機能を発揮している話に関しては、話が盛り上がりました。私が以前消防庁で消防団に関連する仕事をしていたこともありますが、北ドイツでは100年以上も前からボランティア消防団の伝統があり、火災・事故対応はもとより、地域の文化伝統保持にもこの結束が強い機能を発揮しているとのことでした。

特に、「若い女性が他の地域に移住して残った男性が消防団に結集して社会参加を果たしている」現状を伺うと、やや複雑な気持ちになりましたが、消防団は地域の結束の最後の砦の役割を果たしていることが事実のようです。この点は、日本の消防団の機能とどのように関わるか微妙ですが、日本消防協会にはひとつのニュースだと思います。

ところで、地方自治研究所のNierhaus教授は、法律専門家であられますが、ドイツ基本法を引き合いに出し、州政府が進める最近の市町村合併に対して「能率重視が過ぎる」と批判的な見方をされておられました。市町村合併により行政区域の規模が拡大することで、①地方自治体とは自らが管理可能な区域で市民が自らの判断で地域のことを決定できるべき、②市民はどこに住んでいても自治体の意思決定へのアクセスが可能であるべきだ、という基本法で保障された市民の権利が権利が侵害される可能性があり、実際に裁判所が違憲判決も出していると指摘されていました。

ドイツの法律学者は常に基本法の精神から物事を論じるものであるということを再認識しました。

都市と農村の格差解消に向けての取り組みに関して、都市部と農村部(hinterland)を一体として捉え、都市計画、交通、居住、交流などを総合化する取り組みが現在もあり、それが有効だという指摘は、これまで接触した方々に共通した認識です。なおこれに関連し、弱い州と強い州を合併させる構想があるというお話もご披露されました。例えばベルリン市(都市州)とブランデンブルグ州ですが、ベルリン側は賛成なのに対して、ブランデンブルグ州の特に農村側が財政資源をベルリン側に吸い上げられる可能性を懸念し反対であるとの意向が強いのだそうです。この背景には人口が多いベルリン出身の議員が多数になると農村部の意向が無視されるとの懸念があるようです。

ドイツの連邦と州間の財政調整が、業務分担や財政需要を加味しない財政力の調整に過ぎないことに対する批判的見解も示されました。日本の地方交付税制度は役割分担や財政需要を十分に踏まえているが逆に調整が過剰である旨の批判がこのところ出てきていたのですよ、と申し上げると、目をぱちくりさせていました。

実務家だけではなく、学者の皆さんのお話も伺うことは、多角的な観点でものを見る上で大変勉強になりました。今後とも我が事務所とポツダム大学の連携を約してお別れしました。Rimg0555


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