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October 14, 2007

英国自治体幹部が作る自主研鑽組織(SOLACE)

SOLACE(Society of Local Authority Chief Executives and Senior Managers)という英国の自治体の事務レベルの幹部職員の人たちが作っている団体があります。

会員相互の情報共有を行い、仕事をしていく上で一種の圧力団体的な役割を果たす機能を持っています。戦略的意思決定をする立場にある自治体幹部職員の95%がSOLACEに加盟しており、政府の諸機関や自治体政策に影響を持つ様々な関係者とも密接な関係を有し、政府の各種委員会にもメンバーとして参加しています。国会の上下両院とは毎年一度のレセプションを行い、SOLACEの総会も開催しています。スコットランド、ウェールズ、北アイルランドにも支部があります。

SOLACE Enterprisesという関連会社も作り、会員向けの研修講座も企画しています。こうしていくことで幹部職員のスキルを高めていくのです。この会社は研修講座のほかにも、コンサルティング、教育指導なども手がけ、幅広い活動を行っています。IT関連企業などとも連携して公的セクターでの新規企画や共同企画も一緒に手がけています。更に、保険会社と契約し幹部職員向けの福利厚生も導入しています。

国会近くのWestminsterには図書館機能を有する事務所があり、会員は自由に利用できます。

インターネット上で独自のホームページを運営していますが、毎週A4一枚の短い情報更新があり、2ヶ月に一度のニューズレターも発行しています。幹部職員の皆さんが多忙な中で手短に共通関心事項を共有する手法も編み出しています。

そのSOLACEの本年度の会長であるCardiff市のChief ExecutiveであるByron Davies氏のお誘いを受けて、10月9日から11日まで同市で開催された年次総会に出掛けてきました。

今年の総会のテーマは「Thinking Global Acting Local」というもので日本でも馴染みのある言葉でした。メイン会場での連続講演、そしてサブ会場でのセミナーが盛りだくさんで、内容も大変濃厚でした。データを駆使し、EU全体の中でどのような情勢変化が起きているのかを説明した首相府のStephen Aldridge氏の話には特に興味を惹かれました。また、OECDのLEEDフォーラムの議長を務めているGreg Clark氏は、経済のボーダレス化の中で今後世界がどうなるかということに関して、最近話題のFriedmanとFloridaの「The Word is Flat」という見方と、「The World is Spiky」という二つの考え方を比較しながら、要するに、経済レジームはflatになっていくけれどもその中での競争により結果はspikyになるので、地域のガバナンスがとても大事だという趣旨の話も印象的でした。

Clark氏のパワポの中に世界の主要国の今後の経済成長見込みの資料がありました。中国、インドがもちろんトップグループですが、日本はなんと欧米先進国のそのまた下で最下位の地位にありました。OECDではそのように見ているということなのでしょう。縮み志向で世界にアピールができていない日本の現状をウェールズでも垣間見てしまったような気分になりました。

講師としては顕官の姿もありました。Sir Emyr Jones Parry氏(前の国連大使、英国国会NATO代表)、Hazel Blearsコミュニティ・地方自治担当大臣も話をされました。Blears大臣は自治体の議員の経験もあり、SOLACEのメンバーとも個人的に親しい人が何人もいるようでした。話の後の質疑も、質問者のファーストネームを先ず冒頭に持ってきて、「誰々さんの質問ですが・・・」という形でまことに印象深く答えていました。若くして閣僚になるような人は人身掌握の術も心得ているようです。

英国に特有な問題として、SOLACEの総会では移民問題も大きなテーマとして取り上げられていました。移民問題を当局の立場で考えるだけではなく、実際に移民として英国に移り住んできているポーランド人、レバノン人、中国人もパネリストとして質疑が行われました。若いポーランド人の2名のパネリストは、ポーランド人のコミュニティのためのwebsiteを立ち上げる支援活動を行っているのだそうです。

移民の方々に自らの気持ちを語ってもらうという試みは、自治体だからこそできる企画だったかもしれません。

ところで、私が驚いたのは、連続講演の内容もさることながら、総会会場に出展している協賛企業の多さと質の高さでした。50前後の企業・団体がstandを出していました。英国のコンサルタント会社のほかに、FUJITSU、IBM、ZURICH MUNICIPALなどの大企業のstandもありました。私もいくつかの企業の説明を受けましたが、英国の自治体経営が民間活力を導入していることの現場的な意味合いがよく分かりました。Rimg0400

公的セクターの仕事が、民間企業の大きなビジネスチャンスになっているのです。事務の共同作業化とアウトソーシングの提案をしているCapita, vertexなどは、次々に新しい企画を提案して非常に参考になります。

Experianlocal futuresといったコンサルタント会社は、様々なソースからの公的データをつなぎ合わせてデータベースを作り、各自治体ごとの地図上に所得階層別、人種別などの各種データを表示できるようにし、自治体が政策決定を打っていく上でのエビデンス・ベースを提供するサービスを行っています。Rimg0402

standについて説明する人も、それぞれが専門的な知識のある人がついており、まるで大学の講義をコンパクトに聞くように思えました。英国自治体の幹部に効率的に食い込むために、静かながら彼らも真剣です。

LOCAL GOVERNMENT CHANNEL というウェッブサイト上のテレビも興味を引きました。地方自治体関係の情報をニュースやドキュメンタリーの形で政策編集し全国に流しているのです。専門の美人キャスターもおり、とても洗練されています。SOLACE総会の模様も、早速インターネットのほか、ホテルのテレビでも見ることができるように手配されていました。

英国の民営化の評価は色々ありますが、これが刺激となって、新しい手法がどんどん出てきていることは事実のようです。SOLACEのメンバーに聞くと、自治体経営者の立場からは取りうる選択肢が増えて歓迎している、との声が強いように感じられました。自治体関係者の中には、アウトソーシングを機に自らが会社を設立したり、会社の幹部になったりして、これまで自分たちが行っていた仕事を民間人として受託し、以前の何倍もの給与を受けている人たちが沢山いるとのことでした。

英国と異なり地方公務員に身分保障がある日本は、アウトソーシングでその人の仕事がなくなっても仕事を変えて組織内で抱え込むことが殆どですが、英国ではアウトソーシングにより職員が民間企業に移るのです。その仕事が無くなりリダンダンシーが生じるので移籍は当たり前、というのが英国の考えです。その結果が新たなビジネスの隆盛に繋がっているのです。その一局面をSOLACEの展示の場で確認できました。もちろん克服すべき課題は山積でしょうがこの流れが逆流する兆候はありそうに見えません。

面白かったのは、国の機関であるコミュニティ・地方自治省Audit Commissionもstand出展していたことです。民間企業と同列です。こちらでは、国も地方も民間も、お互いに同列のパートナーシップなのだというメッセージを感じさせます。

日本の某シンクタンクが、Capitaなどの提供している仕組みを調査しに英国に来るという話を情報通の方から伺いました。当然でしょうね。日本でもアウトソーシングが進んで行くのでしょうが、その受け皿となる体系だった機能がありません。日本で介護保険事業を民間企業が行っている仕事ぶりの報道を見ると寒々とします。公務員制度も今のままでアオトソーシングがうまく行くのかという問題もあります。

英国人から、「自治体に職員を抱えたままアオトソーシングをすると、二重のお金がかかるじゃないか」と聞かれます。「若年者の採用抑制で定員削減を図っているのです」と答えると、決まって「それでは公務の能率が益々下がるだけですね」という返事が返ってきます。改革といっても上っ面の形だけ真似ても駄目なのです。

それから、こちらの自治体幹部の給料は非常に高いのには驚かされます。カウンティレベルのChief Executiveだと20万ポンド(5千万円)はざらだそうです。こちらの自治体関係の雑誌に自治体のChief Executiveや会計責任者などの募集記事が掲載されていますが、過日はある都市部の市の会計責任者の処遇として12万ポンド(3千万円)の募集記事を読みました。戦略的地域経営には人材確保が重要で、そのためにはそれなりの処遇が必要だというのが英国の論理です。こちらの自治体幹部は、いろんな自治体で実績を積んで、次々に新天地を求めて移動する人事慣行が一般なのです。

だからこそ、お互いの連絡を密にし、新政策に目を光らせ、個々人としての素養も積むためSOLACEのような機能的団体を作り、一種の自治体経営エリート集団を形成しているのです。日本の場合の、幹部が率先して給与カット、等しく忍び難きを忍ぶという伝統的アナグマ戦略とはいささか違うようです。ゲームでいうとチェスの世界ですかね。

SOLACE主催のパーティーは、Cardiff城内で開催されました。古城内での雰囲気のあるパーティはウェールズ色いっぱいでした。最後はウェールズ「国歌」の合唱でした。Cardiffは国際基準を十分に満たす都市になっています。
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残念ながら日本には、全国にまたがる自治体幹部の自主的な横の戦略的機能組織は十分ではありません。その必要性も少なからず感じたSOLACE総会参加でしたが、いずれにしてもこの総会参加は私自身の研修になると同時に多くの自治体幹部の方と効果的に知り合いにもなれ、大変有意義でした。

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