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September 21, 2007

地域主義への懐疑意識は中央政府の性癖?

9月12日に地方自治協議会の会長が更なる地方分権に向けてのメッセージを発したのに対し、英国の統治機構のあり方に関し法案を提出する役割のある憲法改正担当大臣のMichael Wills氏が、地域主義(localism)への覚めた見方を示し、このことが英国内で話題になっています。

2006年10月に更なる地方分権に向けて白書が出され、それを元に制度改正が見込まれているのですが、統治機構問題を所管する当の憲法問題担当大臣が、地域主義に対し懐疑的な見方を示したことが関係者の反響を呼んだのです。

フェビアン協会の討論会の場で、Wills大臣は、「地方政府への分権は国全体の不公平を増大させる」、「中央政府の強い権限を弱める考え方は左翼陣営にとってはばかげた考え方だと言わざるを得ない」、「地域主義というような言葉に対しては懐疑的に臨むことを薦める」、「地域主義はこの国に不公平を生む」と述べ、2006年の白書に盛られている地方自治体への負担を軽減することは支持したものの、地方自治体ごとの財源配分の均衡をとることの必要性、更にそのことは中央政府の強い役割が必要であることを意味する、との見解を示したとのことです(LGC9月13日号より)。

Wills大臣はBrown首相の盟友であるだけに、大胆な地方分権を求めている地方自治体側との駆け引きが見ものです。

こうした政府内の有力者の発言に対して、Karen Dayという自治問題を独特の切り口で迫ることで著名なジャーナリストは、「そうした発言は今更驚くようなものでもない」と指摘しています。「地域主義は限定すべきで中央統制を緩めることは行政サービスの不均衡を招く」という主張はかねてよりの英国の官庁街のWhitehallの考え方を反映してたものであるといなしています。

しかし、Day氏は、こうしたWhitehallの主張は、国営で提供されている最も中央集権的な英国の医療サービスが、宝くじに当たる確率でしか受診できない状況(postcode lottery care)であり、しかも地域的な不公平を生んでいる実態を見るときに到底納得できるものではないとも指摘しています。

Day氏は、そう述べながらも、現実問題として、今後の英国の地方分権の方向性は、中央政府が地方自治体に示す成果目標を減らし、住民が医療や政策決定に関与していく度合いを増やすことではないか、と推測しています。その場合の地方自治体の役割とはコミュニティのリーダーとしてのそれであり、住民同士を結びつける(conduit)役割になる、と述べています。これがうまく機能していくかどうかはよく分からないものの、コミュニティの要請に基づき、自治体は住民の問題意識に応えるように動き、コミュニティにより権限を与えることにつながっていくとも分析しています。

つまり、中央政府と地方自治体の間の関係の大きな変化は実現しそうもなく、住民との関係で地方自治体の仕事のやり方の変化が少し生じるということである、と分析しています。

結局、中央政府の集権思想は性癖であり政府はこれを打破できないという簡単な事実を受け止めなければならないと、皮肉っています。

記事に関連した挿絵があり、Brown首相がWhitehallの街角で、Centralpowerという銘柄のタバコに手を伸ばしながら、「止めようと思っているのだけれどもね・・・」と呟いている姿は痛烈です。中央集権は中央政府にとって中毒(Addiction)と結論付けているのです。Rimg0314

ところで、Wills大臣が、左翼陣営にとって地域主義が危険な考え方であるというのは、財源を中央政府に集め福祉国家を実現するという伝統的な立場としてはよく分かるような気がします。しかし、現在の日本では、どちらかというとリベラルな陣営が地方分権を求め、保守陣営は慎重、また、市場経済主義の立場に立つ人々は小さな政府実現の観点からより急進的な地方分権を求めるというように、立場によって微妙にスタンスが異なっているように思えます。同じように地方分権を求める立場でも同床異夢という感もあります。

現状の立ち位置は異なるものの、英国の議論も多かれ少なかれ日本の地方分権議論と類似している面があることを「発見」すると何故か親近感を感じます。日本の国で、地方消費税の導入や三位一体改革に従事してきたものとして、英国の今後の制度改正の動きと様々な立場からの議論のやり取りを眺めるのは楽しみです。

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