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August 18, 2007

低利率の日本の地方債が外国で人気の理由

ロンドンは世界の金融の集積地だけあり、私の勤務する事務所にも日系の保険ブローカーの方とか、外資系証券会社の方が顔を出されることがあります。

その折に私が普段から疑問に思っていることを伺ったり、これらの方が海外で活動する中で日本の制度運営などについての認識を伺っていて、大変新鮮に感じることがままあります。

ロンドンを拠点に30年以上活動しているある保険ブローカーの方は、日本ほどの金融資産のある国が再保険に関して自らが保険者となるような仕組みを構築できていないのはまことに嘆かわしいとおっしゃっておられました。そのために日本の保険会社は法外とも思われる再保険料を外国の再保険会社に支払っているのは国益に反している、と。

たとえば地震に関して、適正な保険料で地震保険を引き受けるスキームが存在していないことに関して、日本の脆弱性を放置していることにも等しいと懸念を表明されていました。この方のこれからの「使命」は、その考え方を日本の政策当局に伝えていくことにあるともおっしゃっておられます。

ロンドンにいて保険というものをトータルに見ておられるからこそ見える視点かもしれません。私自身はこの分野に関して素人ですが、元防災関係者としては、共感できるところもあります。

更に、ドイツ証券のある幹部日本人がお見えになった際に、私が発した「低利率の日本の地方債が何故人気があるのか」というナイーブな問いに対し、「ポ-トフォリオという考え方があり、リスクを広く分散する必要があるのです。この観点から見ると、バランス上日本の公的債権の保有がこれまで少なすぎたのです。また、邦貨ベースでは低金利ですが外貨に換価した時点で外国の金融商品と遜色のない金利収入が確保できる仕組みが出来上がっているのです。スワップという手法を使うのです。」という答えが返ってきました。

ドイツ証券の彼は、これに加え、海外投資家に対して日本の地方財政度の仕組みをきちんと説明すればするほど、実は日本の地方債の信頼度が高くなる、ということがあるのだそうです。夕張問題のあおりを受けて北海道の債権の金利スプレッドが大きくなっていることに対しても、じっくりと日本の制度の説明を受けたドイツの金融関係者は、東京都債を買うよりもむしろ北海道債のほうが有利だと判断するに至るのだそうです。

これまでの日本の地方財政制度は投資家への信頼感を保つという意味でもとてもよくできており、制度の仕組みの信頼性について外国人投資家に噛んで含むように分かりやすく伝えることがとても重要だとの話には思わず納得します。

ドイツ証券のこの幹部は実は興銀出身なのだそうですが、最近の日本の政策決定がやや近視眼的になりすぎている点も指摘されていました。日本の制度のよい面を少し見失っているのではないか。また、確かに日本の公的債務の規模は膨大であり、資産・債務の圧縮ということがそれなりに重要だが、円安の今がその実施時期なのかどうかについては、大いに疑問であるとの指摘もしていました。

現在は円の価値がとても低くなっています。その結果、円の購買力は国際的にとても小さくなっています。私自身もロンドンで生活しているとそのことを切実に感じます。このことを逆に言えば、日本の資産は外資にとってお買い得だということになります。このようなときに皇居周辺の一等地にある国有地を売り出すことは、「国有資産の大バーゲンになりかねない」との懸念があるのです。ドイツ証券の某氏の知り合いのドイツ銀行の関係者も「コロンビアのような国が資産の切り売りをするのならまだしも、日本のような資産大国が重要な資産の切り売り行うことは国際的にあらぬメッセージを与えることになりかねない。極力避けたほうがいい。」といの感想を持っているのだそうです。

たまたま8月6日の英国のある新聞の朝刊に、「労働党が政権を握った1997年以降、英国の住宅価格は156%上昇し、この間の個人所得の上昇率35%を大幅に上回った」、「今後5年以内に資産価格は更に40%上昇することが見込まれている」、という記事が掲載されていました。既に住宅の取得価格は国民の平均年収の11倍を超える水準にまで達していると国家住宅協会が警告を発しているのだそうですが、それが更に拡大することになります。

このことを敷衍すると、外資が「格安」な日本の不動産市場に目を転じかねないということもあるはずです。現に東京の不動産市場は活況を呈しているようです。更に外資が入り込む場合に、国有地放出が投機の対象になり、東京の地価高騰の更なる引き金を引くことになりかねない懸念も感じます。見方を変えれば、上昇が見込まれるのにみすみす国有資産を安売りするのは合理的ではないとも言えます。

資産・債務の圧縮も、債務管理の理屈の観点の正しさは別として、多面的な観点を意識し、少なくともタイミングについてはよくよく考えていくべきだということになるような気がします。外国にいるから痛切に感じる岡目八目ということもあります。

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