コベントリー市の女性事務総長
コベントリー市に伺った際に、同市のチーフ・エクゼキュティブ(事務総長)のステラ・マンジー女史ともお話しすることが出来ました。
大聖堂の至近にある市庁舎にマンジー事務総長をお尋ねしましたが、エネルギッシュで端的で、見るからにやり手の女性でした。
頂いた名詞に、OBEという称号が記してあったので、その意味を伺うと、"Order of British Empire”の略で、顕著な業績のある人に与えられる称号だということでした。実は、最近、さらに格上のCBEが授与されたのだそうです。"Commander of British Empire” の略です。英国では、こういう称号付与という仕組みも活用し、インセンティブを高めているようです。
彼女の場合は、2001年のコベントリー市の事務総長就任時には、政府の評価委員会の市に対する評価が「星ゼロ」であったものが今では「星三つ」に引きあがっているのだそうです。最高は「星4つ」ですから上から二番目のランクです。サッチャー政権以来、とにかく英国は、計画を作り、評価し、それを公表し、競争させる、という仕組み(CPA)が幅広く導入され、自治体もそれに組み込まれているのですが、コベントリーは、その中での評価はうなぎのぼり、ということになります。
マンジー女史は、コベントリーの前も二箇所で事務総長をしており、直近の1997年から2001年までウェスト・バークシャー、その前の1992年から1997年まではレディッチというところの事務総長だったということです。31歳の若さで事務レベルのトップとなり、47歳の現在は、人口30万の都市の事務レベルの責任者です。
「こんなに多くの自治体の事務総長を渡り歩くことは一般的なのか」と伺うと、「私は例外的かもしれないが、なくはない。現に、コベントリーでも幹部職員の多くは、他所の地域の出身で、ポストがあくと適任者をその都度採用することになる。」との答えが返ってきました。彼女自身は、ロンドン出身、父親はスコットランド出身なのだそうです。自分の力を振るうのは、出身地域を問わない、のです。逆に言えば、地域にとっても、力量があれば、地元以外の人にもどんどんやってもらう。それをコントロールするのが政治家である、ということになるのです。
私が、「政府と自治体の間を往復しながら階段を上がっていく仕組みは、日本の国の総務省職員のケースも似ているのですよ」と申し上げると、「中央政府と自治体間を行き来して、実態をつかんでいくことは重要なことだ。私の知り合いでも同様の経歴を持った人がいる。バーミンガムの事務総長をやっていたリン・ホーマーという女性は、今は政府機関の長官職を努めている。紹介するので会ってみたら面白い」とおっしゃっていただきました。
労働者の町であるコベントリーは伝統的に労働党が強い地域だったのだそうですが、最近の地方選挙で、保守党が労働党の議席を2議席だけ上回ったのだそうです。コベントリーでの政権が逆転したにもかかわらず事務総長を継続しているのは、議会のマンジー女史への力量に対する信頼感を示すものだと思われます。
彼女はこれからも益々発展するような印象を強く持ちました。
英国の制度を研究するのも大事ですが、制度を動かし、実際の現場を担っている個々人にスポットを当てていくこともこれまた大事な研究アプローチのようにも思えます。そのためにも、今後とも英国での「一期一会」を大事にしたいと思います。
The comments to this entry are closed.
Comments