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August 12, 2007

“Irish built, English sank.”

英国赴任後初めての出張に、8月7、8、9日の2泊3日で行ってきました。ウェールズのカーディフと北アイルランドのベルファスト方面です。

ウェールズと北アイルランドの地方自治組織はともに一層制となっており、カーディフもベルファストも日本でいう県の機能と市の機能を併有しています。

用向きは、JET事業のAlumniの機構の幹部との会合と両市の幹部との懇談でした。カーディフでは来春、日英セミナーといって両国の政策課題を話し合う会合を予定しているのです。環境問題や市町村合併問題・道州制など日本の政策議論にも興味があるようです。

英国では、現在地方制度の大改革の途上で、政府の大方針により、大規模な合併が推進されています。最終的には、イングランドも含めすべての英国の地方制度は県を廃止し、一層制にし、その上で、イングランドでは広域の地域議会を設置しようとしているのです。なにやら日本の道州制に似ています。

日英は、制度は異なるものの政策の方向性が似ているような気もします。

カーディフでは、カーディフのチーフ・エキュゼキュティブのバイロン・デービスさんと長時間にわたって話をしました。15年間もカーディフでこのポストにあるのだそうです。エンジニア出身で、石炭と鉄と港で栄えた産業革命以来のカーディフの栄枯盛衰の歴史を踏まえ、観光、レクレーション、学術都市として脱皮するための将来プランをパワポで熱心にお示しいただけました。デービスさんの「講義」のおかげで、カーディフのにわか専門家になりました。Rimg0157

カーディフ市内では至る所で槌音が響いています。再開発です。市の青写真を元に少しずつ構想が動いています。こちらは、「高度成長」のようです。来春の日英セミナーのテーマもご当地の要請を踏まえなければなりません。

カーディフでは、JETのAlumni幹部4名と会合をしましたが、宮崎県赴任経験者が二人、沖縄県が一人、福岡県が一人でした。皆さん、赴任県を大好きになってくれていました。宮崎赴任経験者はフィアンセ同士であり、元々はウェールズ出身ではなかったものの、英国で宮崎に似た雰囲気がカーディフにあるということでこの地に来たという話をしていました。福岡県赴任の男性は、日本人と結婚し、また福岡に帰りたいと言っていました。「物価の安い日本は住みやすい」とのことです。こちらは家の価格がとても高く、年収の6-7倍はざらのようです。50年ローンを導入するとか、100年ローンではどうかとかそういう話すら出ているとのことでした。

JET事業で日本を訪れた人は、ほとんどの人が日本贔屓になって帰ってくるようです。JET事業を実施して以降の受け入れ人数の累積は、英国だけで7000人です。BBCや国務省、各省庁などへも就職したりと、確実に日本のシンパが育っています。過日、日本テレビのロンドン支局の幹部と話をしたところ、ロンドンの日系マスコミにも多くのJET・OBが採用されており、とてもありがたいと言っていました。このような事業の継続が広い意味での日本の安全保障にも役立っているのだと思います。

ベルファストではロード・メイヤーと呼ばれる市長のジム・ロジャーズさんLordmayorrodgers_2
とムラガム議員にご挨拶し、財政局長のトレバー・サーモンさんとも懇談しました。会計士の資格をお持ちのサーモンさんは全国の公会計士会の幹部もお努めで、ここから出される方針が英国全体の制度改革にきわめて重要な役割を果たしているということを強調されていました。英国は、専門家が重用される国なのです。

北アイルランド自治体協議会(NILGA)チーフエキュゼキュティブのヒザー・ムーアヘッド女史とも話し合いが出来ました。北アイルランドはナショナリストとユニオニストの間の紛争が終結し、これから国づくりです。自治体もこの間機能停止で、どうやってスタンダードな行政水準に持っていくかが課題とのことでした。日本に学ぶことはたくさんあるとおっしゃっておられました。Rimg0165

話を伺っていて驚いたことがありました。北アイルランドでは、水道代が「ただ」なのだそうです。今までは税でまかなっていたのだそうです。これを料金制にするかどうかで、現在もめているのだそうです。水道メーターを取り付けるだけで大変なコストがかかり、料金制にするにしてもどのような仕組みが適当なのか、議論は沸騰しそうです。

ムーアヘッド女史の話では、北アイルランド人というのは、故郷を離れたがらず、地元に残ることを好む傾向があるのだそうです。世界に翔く英国人とは少し違うのだそうです。外に出て行った人もまた戻ってきたがる傾向もあるようです。聞いていてなんとなく日本人と似たところがあるようにも思えました。

この自治体協議会というのは、北アイルランドだけではなくイングランド、ウェールズ、スコットランドの各地にあり、本部がロンドンのウェストミンスターにあります。地方自治や地方制度にかかわる政策立案を自ら行い、中央政府と交渉する強力な団体です。私の勤務する事務所も、これらの組織との関係が大変深いものがあります。

北アイルランドのJETのAlumni幹部とも話をしましたが、こちらのBBCの調査員、大学の考古学教師、病院務めのエンジニアという顔ぶれでした。BBCの調査員の、スザンヌ・マクミランは、「JET事業が与えた影響をBBCで取り上げてもいいかしら」と言ってくれました。「目立たないけど、日本理解に確実に役立っているわ。親日家をたくさん育てる仕組みとしてJET事業はすばらしい。」ということでした。彼女は政治問題を取り上げる番組の担当なのだそうです。たまたまかどうか分かりませんが、JETとしては、愛媛県、島根県、熊本県といった西日本に赴任した人が目立ちました。

スザンヌは、翌日、ベルファスト市内を車で案内してくれました。タイタニック号を建造したドックも丘の上から遠望できました。Rimg0174
アイルランド語の運転手の言葉を時々英語に訳してもらいながらの市内見物でしたが、運転手のお兄ちゃんは、生粋のカトリックで、どちらかというと反英国派(ナショナリスト)に見受けられました。なぜかと言うと、“Irish built, English sank.”と、自分たちがベルファストで造ったタイタニックをイギリス人が航海術が下手で沈めてしまったと、揶揄していたからです。中村俊輔のファンのとのことでした。こちらではサッカーチームも宗教で区分されているようです。

ところで、帰りに失敗がありました。ベルファスト国際空港で、飛行機が「DELAYED」というサインが出ていたので、チェックイン指示が出るのを待っていたのですが、チェックイン指示が出ないうちに、チェックイン時間が経過し、飛行機は飛び去ってしまいました。航空会社に文句を言ったところ、「DELAYのサインが出ようが出まいがチェックインはしなければならないものだ。紛らわしい表示はあったかもしれないが、あれは、飛行場のサインであり、航空会社の我々には関係がない。次の飛行機の切符を買ってもらうしかない。」との返事でした。そこで、飛行場の責任者に申し入れたところ、「掲示板では継続して示してはいなかったがチェックインの館内放送はした。聞き漏らしたのはあなた方の責任だ。」との返事でした。一言で言えば、不親切。自分のミスは認めない。そのような対応でした。

仕方がないので、乗るはずであったチケットは破棄し、次の便のチケットを買いました。ロンドン到着は深夜になりました。どうもこれが「国際常識」のようです。結局は「自分の身は自分で守る」、ということです。


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Comments

航空会社のトラブルの最中、格安チケットしか持ちあわせていなくとも、そして、たとえ言葉が不得手でも、ちゃんと飛行機に乗れる人もいればその逆の人もいますね。
危機管理も外国生活で身につく特技の一つだと実感します。

Posted by: 石川義憲 | August 16, 2007 at 11:54 PM

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