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June 10, 2007

「モビリティ・マネージメント」の思想

青森県地域づくりの達人訪問3箇所目は、三上亨さんでした。土曜日の休みの日でしたが、快くお会いいただけました。

三上さんは、「市民風車」で町を活性化する取り組みを行っている青森市・グリーンエネルギー青森の常務理事です。

青森県鰺ヶ沢町で発電用の白い風車を1基運用していますが、この風力発電機は市民の出資によるものなのだそうです。

年間4-5000万円の電力会社への売電により風力発電機を運用をしているのだそうです。設置費用は約3億8000万円。半額は新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)から助成を受け、残りは小口の出資を全国から募って賄うことにしたところ、全国から1億7820万円を集め、2003年2月、風力発電機は起動したのだそうです。

三上さん、風車の運用をしているだけではなく、地域活性化に関するマッチングファンド助成事業、農業の活性化プロジェクト、コミュニティビジネスの立ち上げの調査研究などもされておられるようです。

三上さんは、「あおもりコミュニティビジネスサポートセンター」の所長でもあるのだそうです。

三上さんが最近取り組んだ「津軽鉄道を軸とした都市再生調査」のお話も伺いましたが、76年の歴史を刻んだ津軽鉄道を文化遺産としてとらえ、営業面の黒字赤字にだけとらわれるべきではないとのお考えを伺いました。

実際に津軽鉄道の沿線は、奥津軽の文化や雄大な大自然、それに「立佞武多」や「虫おくりと火祭り」など、イベント・観光資源などが豊富にあるとのことでした。現在も駅毎に、2-3時間の時間を十分に使って見る価値のある資源開発を行っているのだそうです。

三上さんの話では、観光事業には「発地型観光」と「着地型観光」があり、東京の旅行業者は、発地型だと、どうしても既に有名な観光地巡りを組み合わせて、定番の観光ルートを造ってそれでおしまいだけれども、着地型だと、地元の事業者にルート先行が委ねられ、地元の事情通の智恵を寄せ集め、掘り出し物巡りのツアーを組むことが出来る、との面白い話を伺えました。

津軽鉄道振興では、この「着地型観光」で行こう、というものです。私は、交通の分野の歴史的遺産保存、カルチュラル・ランドスケープ研究者のチェスター・リーブス(Chester Liebs)バーモント大学名誉教授が現在東京大学の客員教授で日本におられ、ひょっとしたら鉄道資源の発掘に関しても智恵があるかも知れないので、接触を勧めました。三沢基地を抱える青森ですから、米国政府もこの様な面での協力は惜しまないのではないかとも申し上げました。そのうちに、虎ノ門のアメリカン・センターの関係者をご紹介しようと思います。

ところで、津軽鉄道振興の報告書の副題は「地域コミュニティとの協働による地域活性化」です。その報告書の中に、モビリティ・マネージメントという考え方が示されていました。モビリティ・マネージメントとは、個人の行動が、社会にも個人にも望ましい方向へ、自発的に変化することを期待するもので、例えば、過度に自動車に依存するライフスタイルから、電車やバスなどの公共交通や、自転車などの積極的な利用を促すなど、個人とのコミュニケションを中心に働きかける交通政策なのだそうです。

津軽鉄道の周辺住民自身が、通常、自分たちの短期的利便性を優先し、鉄道を使わない。しかしその結果実際に津軽鉄道という移動手段が無くなった場合の社会コストを想像してもらうことを促しているのです。要は、人々に私(わたくし)の心を公(おおやけ)の心に少し比重を移してもらうということなのでしょう。ほんのちょっぴりっと便利さを我慢すれば地域全体の安全・安心が保たれる。この考えは「合成の誤謬」とも言い換えられると思います。

モビリティ・マネージメントの思想は、社会のあらゆる局面で妥当する考えです。中心商店街の衰退も住民自身の、安く・便利な郊外店の利用が招いた結果です。中心商店街の住民自身がスーパーでものを買うのですから。そのくせ、中心商店街が衰退していざというときに困ると、文句は言う。「行政は何をやっているのか」などと。

無制限な消費者の欲望にそのまま答えていたら、社会の機能はおかしくなります。24時間営業のコンビニなどは、本当に適切なサービス提供と言えるのでしょうか。そのために駆り出される労働力はその家族にどの様な影響を与えるのか。便利さの影に潜む深刻な問題に目を向けるべきです。

三上さんの話を聞いていて、ふとそのようなことも感じました。

ところで、三上さんが何故このような活動に情熱を傾けるようになったのか、興味が沸き、その理由を尋ねてみました。もともと労働金庫に務めていた際に、40周年事業で地域を元気にする取り組みに対する1億円助成事業を担当し、小口の支援を行うことで相手方が元気になったのが目にはっきりと見えたのだそうです。20万円程度の補助金もさることながら、自分たちのやってきた取り組み内容が「認められた」との思いが大変な励ましになったのを実感したのだそうです。

元々は、原発などへの反対運動をしていた時期もあったのだそうですが、反対運動だけでは空しさを感じ、何か自分で前向きな地域貢献で出来ることがないかと考えていた中でのこの記念事業での経験であったということです。

40歳になって、労働金庫を休職し、2年間地元の大学院に通い、修士号を取得、その最後の一時期、米国に遊学、その後退職し、独立して市民風車事業などに取り組んでいったのだそうです。

堺屋太一の「エキスペリエンツ」の主人公を彷彿とさせます。この小説の主人公も元銀行員でした。資金調達やプロジェクト調査のノウハウがあるのです。

自分自身の理念があり物事を進めている人には、ミッションとパッションがあります。この2つの要素がなければ物事は成就しません。三上さんの中に、津軽弁で訥々と語る中に、この二つの要素を感じます。

ともに話を聞いていた若い徳大寺祥宏青森県市町村振興課長も、三上さんと今後の互いの協力を約していました。

一泊二日の短い滞在でしたが、青森のソシアルキャピタルの旗手とも言うべき人々に何人も出会ったような気がします。青森も頑張る素地は十分にあります。我々の役回りは、その動きを邪魔せずに(制度の桎梏を取り払う)、ひたすら繋ぎの役回りを務めること(SNSなどの利活用も一手段)にあるように思えてきました。

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