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June 10, 2007

食と教育の地産地消

青森県に伺った機会に、県庁の徳大寺祥宏市町村振興課長のご紹介で、地域活動に熱心に携わっている3グルループの方々とお会いすることが出来ました。それぞれ目を見張るような活動をなさっておられ、大いに刺激を受けました。ソシアル・キャピタルの権化のような印象を受けました。

最初は、NPO法人「活き粋あさむし」の事務局長三上公子さんです。元々は青森市の保健師だった三上さんは職業柄、健康の視点をもった浅虫地域のまちづくりを目指し、様々な人たちを巻き込んで活動を展開しています。

NPOが運営するコミュニティレストラン「浅めし食堂」では、カロリーを考えた地域の家庭料理を廉価で提供しています。地域の特色が溢れる日替わり定食はとてもヘルシーで、毎日でも食べたくなります。医師と栄養士の監修でカロリー650キロカロリー程度、塩分4グラム以下、たんぱく質やカルシウム、脂質などもバランスがとれ、化学調味料を使わず、天然のだしをたっぷり使い、安心して食べることが出来ます。米はNPOが休耕田を活用して栽培した低農薬の地元浅虫産の米、野菜も地元浅虫で収穫したものをたっぷり使っているのだそうです。定番メニューの「じゃがいも水団」のほか、「なつかしい、ほっとする料理」が売りなのだそうです。

私もこの「じゃがいも水団」を食べましたが、何とも言えない懐かしい味でした。070608_11360001

NPOでは、「浅めしレシピ」という雑誌を発行していますが、「浅虫料理30品」の特集号では、「残したいお宝」として浅虫の食文化を探訪し、魅力的な写真レシピを教えてくれます。「じゃがいも水団」のほかに、「ホタテご飯」、「鮭チャウダー」、「トロトロ昆布」、「あわび釜飯」、「けの汁」、「じゃっぱ汁」、「がっぱら餅」などのレシピが紹介されていますが、看ているだけでお腹がすいてきそうです。

この食堂を手伝っている村川秀三郎という74歳のNPO副理事長もいらっしゃたのでお話が伺えました。聞けば、東京電力に48年間お務めで、関東で変電所を沢山作ったのだそうです。Uターンで数年前に浅虫に戻って、地元の医師石木基夫さんにホームドクターとして健康管理を受ける中で、食事療法の一環としてこのヘルシー食堂を紹介され、そのうちにこの食堂の運営に関わるようになったのだそうです。070608_10120001070608_09530001

技術屋さんだけあって、ICTにもたちまち習熟し、NPOのパソコンを自分で組み立てるまでになっているのだそうです。老人ホームや職場などに出前弁当を配達する役回りもあり、忙しそうにしておられました。衰退した町を元気にしたいとの思いもあったようです。自分自身の健康増進と町の元気を同じ視点で捉えておられるようでした。

コミュニティ食堂を切り口に、地元農産物・海産物の活用、医食同源の健康づくり、高齢者への給食サービス、そして主婦のパート雇用確保といった諸活動が連関して動いています。

このNPOは「浅虫コミュニティスクール」という地域子ども教室、伝統文化子ども教室も展開しています。ジャムづくり、ヨット体験教室、島の観察、ねぶたばやし講習、金魚ねぶた製作、うどんづくり、イルカの餌付け体験、手作り石鹸づくり、絵本づくり、茶道、染色、日本画、おから料理、とうふづくり、蕎麦打ち、南京玉すだれなど、盛りだくさんのメニューがあります。

三上公子さんによれば、「講師を探すのは大変ではない」のだそうです。掘り起こせば地域にはいろんな能力を持った方が沢山おり、それらの方に協力をお願いすれば出てきてくれるのだそうです。例えば、高校の英語の先生が引退して家でブラブラしていたのですが、子ども達に英語を教えてくれるようにお願いすると、引っ込み思案を乗り越えて、協力してくれるようになり、その人は地域社会にデビューを果たせ、とても元気になったのだそうです。子ども達に、「先生」と呼ばれるうれしさはまた格別のようです。

「一人ひとりが元気になると地域全体が元気になる」、と三上さんは語っておられました。そして、浅虫の子ども達には、「大人になったらこんな体験が出来たのは自分たちだけだった」と後で気がつくような体験をさせてあげたいとの思いから、「浅虫コミュニティスクール」を立ち上げているのだそうです。子ども達も目が肥えて、小手先の授業などはブーイングが出るのだそうです。子どもは「本物を感じる能力がある」とも。このコミュニティスクールの時間は、子ども達は2時間でも3時間でも集中力が途切れないのだそうです。最近は子どもの集中力が続かない、と嘆く学校の先生が多いですが、それは「集中力を持続させるような授業が出来ていないから」だ、と三上さんの手厳しい指摘。地域社会にある本物を持つ人の能力を発掘し、地域の教育に生かす、という「教育の地産地消」を三上さんは語ってくれました。

ゆとり教育もに対する批判は、実は、学校現場がゆとり教育を自分たちで抱え込んでしまって、中味の薄いものにしてしまったことに由来するようにも思えます。「活き粋あさむし」のようなNPOがあるところは、ゆとり教育は失敗しようがありません。プログラムの趣旨ではなく、システムの組み方が問題なのです。

三上さんは役所の行政に関し、「やる気のある人が元気を無くす施策が多すぎる」とおっしゃておられました。例えば学校の統廃合も、「役所側は統廃合で規模が大きくなれば子ども達も刺激を受けるから統廃合が必要だ」といって統廃合を進めようとするけれども、廃校になった学校の利用などについての提案などはなく、狭い視野で自分のノルマを果たすだけの仕事ぶりにしか見えない、と指摘されていました。

確かにその側面があります。何かを進めようとするときには、負の側面をカバーできる安心材料を提示しなければなりません。私の方から、総務省のコミュニティ研究会で、「義務教育段階での都市と農山村の教育交流の全国展開」の構想をお話ししましたが、三上さん、そして後から駆けつけた石木基夫医師(NPOの代表者)ともに、「この構想はとてもいいです。是非実現してもらいたい。子どもの教育にとってとてもよいだけではなく地域に元気が戻る。地元の参議院議員の山崎力さんにも実現するように言わないと」という嬉しい反応が返ってきました。

私も随分と勇気づけられて次の訪問先である平川市のNPO法人「尾上蔵保存利活用促進会」の佐藤正彦常務理事のところに向かいました。

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