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May 14, 2007

「霜月祭りの里」飯田市上村

阿智村、飯田市を訪問した折に、千代地区の農家民泊を体験することが出来ました。討論会の会場の「ごんべえ邑」のすぐ近くの近藤丑男さんという方の農家でした。

夜遅くまで議論していたので、近藤さんの家に伺ったのは深夜近くでした。それでも近藤さんの奥さんは嫌な顔もせずに、親切に応対していただけました。

座敷に布団を敷いていただき4人で寝ましたが、寝るまでの間、近藤さんの焼酎を少し頂きました。

蛙の声で翌朝早く目が醒め、散歩に出ました。山の中腹の朝は、きれいな空気で心身が生まれ変わるようです。歩いていると草刈りをしていたお爺さんに出会いました。近藤永一さんという方で、農家民泊の近藤さんとは同姓です。070513_06270001

立ち話をしているうちに、タケノコを掘ったから持っていかないかと勧められました。私は、車で来たから頂いていきましょう、と、6本くらいの立派なタケノコを頂いてしまいました。早起きは三文の得、を地で行きました。

あとで聞いたところ、「ごんべえ邑」が出来て、よそからお客が来るようになってから、頼みもしないのに近所の人が「ごんべえ邑」の周辺をきれいにするようになったとのことでした。

前夜の会合で、松島貞治泰阜村長が、「千代地区は泰阜の隣だが、昔から自立心が強く、泰阜村民にも、千代を見習えと言っている」とおしゃっておられた意味の一端が分かったような気がしました。

散歩から帰ると、朝食を頂きました。前夜は既に寝入っていた近藤丑男さんも姿をお見せになり、記念写真を撮りました。070513_07300001

近藤家は馬の背のようなところにあり、眼下に水田を見下ろす絶景の位置にあります。070513_06130001
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田植えも終わり、ホットした時期の農家民泊となったようです。近藤さんからは、これまで宿泊をした人の写真とコメントを記した大学ノートを見せていただきました。我々もコメントを書きましたが、一期一会の心の交流の詰まったノートでした。

朝食を終え、日本の棚田百選に選ばれた「よこね田んぼ」を尋ねました。観光カリスマの井上弘司さんの案内です。070513_08350001

「よこね田んぼ」は、実は一時期耕作放棄になったのだそうです。しかし地域の人がこの田んぼの景観上の価値を惜しみ、農地の所有者を説得し、ボランティア耕作を了承させたのだそうです。

私たちが訪れたときはちょうど田植えの準備の時期で、千代地区の人が沢山で勤労奉仕に出てきて働いていました。

井上さんは、ここに集まっている人達は自分たちの田植えを放り出してこちらに来ていると説明してくれました。それがこちらでは当然なのだそうです。「オオヤケ」を「ワタクシ」に優先させるのは当然で、自分の「稼ぎ」は後回しなのだそうです。日本の農業文化は、元々は公を優先し稼ぎは後であったが、ここにはそれがまた残っているのだそうです。ここでも松島泰阜村長の指摘の正しさが期せずして証明されました。

ところで、千代地区のガソリンスタンドで偶然、舛添要一参議院議員の講演会のチラシを拝見しました。大学講師の頃3年間この地に通い、第二のふるさとだと思っているのだそうです。千代は、舛添先生のような審美眼の鋭い人が惚れ込む地区だったのです。

「よこね田んぼ」をあとにし、かねてからの願望であった霜月祭りの里、上村地区まで足を伸ばしました。南アルプスの麓の山間地です。

祭り伝承館「天伯」で、霜月祭りの展示を拝見しました。館長が不在のため、下栗自治会長の胡桃澤三郎さんが臨時で対応をしてくれました。純朴そうな胡桃澤さんは、とても丁寧に解説をしていただきました。

湯立の儀式が、全てが死に絶えた霜月に行われることから、何かを生み出す生命の息吹を込めているとの解説に、私の方から、「先週上田市の生島足島神社に参詣しましたが、何やら同じような感じを受けますね。」と申し上げると、胡桃澤さんは、「そうなんですよ。生島足島神社の幣がここにも飾られているのですよ。」との返事が返ってきました。

さらに、湯立と言えば、熊野信仰の万物再生もお湯に因みます。小栗判官の伝承もそうです。ひょっとして熊野信仰にも関係があるのでしょうか、と伺うと、そこまでは分からない、とおっしゃっておられました。

そこで、伝承館の入り口に300円で販売していた「信州上村霜月祭」という小冊子を読んでみると、古文書に、「賀茂神社で行っている湯立ての式によって面を祀るのがよい」といってこの儀式を勧めたのが熊野本宮の仙人と記してある記述を発見しました。

やはり熊野信仰の考え方も影響しているのかと自ら納得しました。なおこの旨は、東京に戻ってから胡桃澤さんにお礼と供にお伝えした次第です。

小冊子によると、「東鑑」の文治2年(1186年)に遠山という地名が記され、本居宣長の玉勝間第13巻にも湯立て祭りのことが記されているのだそうです。

この祭りを世に出したのは、折口信夫、柳田国男、両角井正慶、池田弥三郎、三隅治雄といったそうそうたるメンバーであるのだそうです。

このお祭りに惚れ込んでおられる信州大学の笹本正治教授によれば、上村がこれまで存続してきたのは、このお祭りがあればこそ、であり、この歴史的あるユニークな祭りを絶やしてはいけないという村民の思いが、人の流失を食いとめてきたのだそうです。逆に言えば、強烈な郷土意識がありさえすれば集落を保とうとするドライビングフォースが働くということでもあり、魂のエネルギーというものを軽視してはいけないと再確認した次第です。

実は私がこの祭りを意識したもの、笹本教授のお話を伺ったからであり、それがなければこの地に足を踏み入れることはなかったのかも知れません。まるで磁石に吸い寄せられるように来てしまった感じです。

さて、霜月祭りの勉強をひとしきりしたあとは、日本のチロルと言われる下栗地区に向かいました。南アルプスの聖岳、兎岳を眺望できる絶景の地です。
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この地にある自治振興センターの野牧睦仁事務長の話を聞きましたが、二度芋というじゃがいもの原産種がこの地で育つのだそうです。お茶と蕎麦も絶品のようです。隔絶した地域にあるので、病害虫の心配が無く、農薬も使わないため、安心できる食材になっているようです。そのためか、お茶も蕎麦も、高価で売れるのだそうです。しかし生産量は余りないので、マニアの密かな楽しみになっているようです。

野牧さんは、過疎債のお陰でこの地区は生き残れました、と言っておられましたが、生き残った今は、振興センターの近くにあるクラインガルテン用の別荘に都会の人が週末農作業に宿泊に来るなど、結構賑わっています。

日本のチロルと呼ばれているようですが、「天空の里ラピュタ」といった雰囲気があります。そういえば宮崎駿監督が、「千と千尋の神隠し」のモチーフを霜月祭りの湯立から採取したとの話を伺いましたが、宮崎監督の「天空の城ラピュタ」も、この下栗地区からイメージを得たのではないかと、ふと感じました。

南信州は、本当に広くて、変化に富んで、奥深くて、品格があり、歴史文化の宝庫だと実感しました。今様の言葉を借りれば、「美しい国」がここにあるのです。金銭換算できない価値がここにはあります。

こういう地域資源に恵まれた地元の人は幸せです。都市と農村の交流で、この資源を少しでも都会の子供達にお裾分けしていただければ、現代日本の抱える多くの問題が解決するように思えてきます。


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