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May 14, 2007

「かわいい子には旅させよ」

連休明けの土日、総務省、農林水産省、文部科学省の合同のチームで、飯田市と阿智村の都市と農村の教育交流事業の実態の勉強をしてきました。

訪問してはじめて、受け入れ態勢やこれを支えている人材がたいへんしっかりしていることに驚きました。阿智村では長期の山村留学、飯田市では短期の農家民泊です。070512_17450001

阿智村では岡庭一雄村長直々のご案内で実際に山村留学をしている14人の子供たちに会ってきましたが、一目で自立している子供達の伸びやかな印象が清新でした。

阿智村の浪合地区の70名の小中学生のうち、14名が山村留学の児童生徒で、クラスのみんなを引っ張っているのだそうです。我々が訪問したときの挨拶もしっかりしている。自分たちのことは自分たちで処理している。訪問時も雑巾で床の拭き掃除をしていました。

彼らが書いた作文は、感情のこもったすばらしいものなのだそうです。テレビがないので夜は仲間と話し合い、お互いに考えを深めている。ゲーム機がないので、将棋などに親しみ、脳を鍛えているのではないか、ということです。

むしろ農村の子供は都市の子とそう変わらずに、テレビ漬け、ゲーム漬けで外で遊ばないのだそうです。里山で飛び跳ねているのは山村留学の子供ばかりというのが実際のところなのだそうです。

合宿教育の教育効果に驚いた地元の人も、地元の子供を合宿させて通わせたいと言ってきているのだそうです。子に甘い親とテレビ・ゲームから切り離して規則正しい合宿生活をさせる教育効果は殊の外大きいようです。

そこで地元の子供達には、4泊5日の通学合宿「浪合ッ子の家」を実施し、20人が浪合学校から寄宿舎までの2.2キロを歩くのだそうです。歩くことの効果も絶大で、マラソン大会などでトロフィーを取るまでに体力増強が図られているのだそうです。安易にスクールバスを導入し、子供の体力が落ちているという話はつとに聞くところですが、ここでもそれが証明されています。

20人が通学合宿に参加したので、14人の山村留学の子と併せると34人になり、何と全体で70人の半分近くを占めるのです。

羽場睦美さんという野外教育研究財団の理事長がこの地域でのもともと山村留学の創始者ですが、博士号を持つ若い教育者を集め、水準の高い実践教育をしています。子供が勉強で分からないことがあっても、これらの人たちが、事実上の家庭教師となり教えてくれるのです。宿題もきっちりとやって成績も自ずから上がっているのだそうです。

井上弘司さんという飯田市企画部企画幹のお話も伺いました。井上さんは、飯田市の農業体験型修学旅行を体系化された観光カリスマですが、実際にプロジェクトを手がけてきた人ならではのリアルで実感のこもった話を伺えました。

以下はそのさわりです。

・受け入れ側の問題が大きく、行政と住民との間のミスマッチを解消し、持続するシステム作りが必要だ。
・人材が不足している。NPOも資金難のため商業活動のようなことをやらざるを得ない現実がある。このあたりを支援してNPOが本来やるべきことをできるようにすることが必要だ。
・最近の「ワーキングホリデー」の登録者を見ると、団塊の世代と20代の女性が増えている。こういう潮流をきちんと捉えながらやっていきたい。
・地域資源を使いながら子どもたちを育てていくという方法を「地育力」と呼んでいるが、これは地域内だけでなく、都市と農村に置き換えてもできることだと思う。
・農家民泊は、現在500軒ほど登録している。現在は一泊だけだが、それは既存のホテルや旅館との共存を考えてのことである。一泊は農家、残りはホテル。色々なところへ泊まっている。たった一泊でも都市の子どもたちにとっては衝撃の体験となっている。
・それだけ農村の持つ人の抱擁力は大きい。一度体験するとまた戻ってくる人もおり、定住促進にも資するのではないかと考えている。
・農家民泊は食育の面で大変大きな効果があり、偏食がなくなったというような話はよく聞く。
・地域の人たちの力を使えば学力を落とさずに総合学力を養うことができる。ゆとり教育は良い理念だが、学校の先生が自分たちで抱え込んで対応できなかったのではないか。そもそも先生たちで平日以外は活動する人はいない。
・教員は三年ほどで場所が変わってしまうので、地域愛が十分に育たないのかもしれない。

ところで、井上さんからは、奈良・京都への修学旅行と違って、飯田に来た子は帰りのバスで子どもたちが寝ないという特徴があるというお話も伺いました。更に帰ってからの家庭に持ち込まれ、子どもが親と話をするようになるのだそうです。親子の会話にとっても、とっかかりとしては体験旅行は非常に有効であるようです。

実際に農家民泊で子供を受け入れている農家を尋ね、お話も伺いました。飯田市の上久堅地区の農家の中山二一さんのおうちです。こ家の前の田んぼの田植えが終わったばかりでした。ちょうど、千葉県の女子中学生が4名、ホースで苗代の上にかぶせてあったビニールの掃除をしていました。

中山さんの家に上がりこんでお話を伺いましたが、これまた実感のこもった話でした。

・農家の高齢化で、民泊の受け入れ回数は徐々に減ってきた家が多い。
・大阪府枚方市の中学生は後日手紙をくれたり、千葉県八千代市の中学生は夏休みに再び訪れてくれたりしている。
・親を見れば子どもがわかるのと同様、指導の先生を見ればその学校の生徒の質は分かってくる。教師の質の確保は子供にとって極めて重要だ。
・地元の子どもはかえって農業を手伝わない。機械化により、手伝う用がなくなってしまった。便利になったことがよかったのか悪かったのか。
・農業はできないけど農地は維持したいという農家が多く、私のところに耕作をお願いしたいといってきて困っている。
・鹿が増えて困っている。増えた鹿は山を荒らす。
・草を食べてくれるのでヤギを放し飼いにしている。近所の農家がダチョウを試していたが、幼鳥期の死亡率が高く、断念している。

ところで、この中山さんの家で、団塊の世代の帰農についても話題が出ましたが、井上企画幹から、定年帰農に関しては、生活のリズムの違いについていけない場合が多く、無理をしすぎて体を壊す例があり、あまり賛成できないとの話もありました。農業を本格的にやろうとしたら30代までに始めないと体のリズムが作れないようです。

ここら辺の話は理屈だけではうまく行かないとの話であり、現役時代から序々に慣れていく取り組みの重要性を感じました。

この会合には、政府の職員の他、市町村関係者、地元のNPO、研究者の方も参加されましたが、東京経済大学の山田晴通教授が斬新な切り口で指摘をされていました。「今の団塊の世代は農村のことを覚えている。この世代が自分の体験を若い世代に伝えていくタイミングを失すると農村を省みるタイミングが失われかねない。」、「長い期間の農家民泊は農家の負担感が大きい。センター宿泊との組み合わせが必要だ。」、「ベンジャミン・フレミングも“生魚と客は三日で腐る”と言っている。」

飯田から東京に戻って、JR東で観光交流の企画を手がけてきた曽我治夫課長とお会いしましたが、曽我さんの話では、最近、「青春18切符」が若い人に売れないのだそうです。一時の1/3から1/4の売り上げしかなく、もっぱら60歳過ぎの中高齢層が活用しているのだそうです。

「旅に出ない若い日本人」が増えていくわが国では心もとありません。「かわいい子には旅させよ」、という格言の今日的な意味を問い直さないといけません。

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