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April 22, 2007

島根県の「限界集落」

翌朝辻駒さん達とお別れをし、三国山を右手に仰ぎながら広島県から島根県に入り、限界集落を見てきました。

限界集落といっても、既に集落が消滅し、「むらおさめ」が済んでいる藤社(ふじこそ)という集落跡です。記念碑が建っており、後ろ髪を引かれるようにして廃存した村人の思いがひしひしと伝わってきます
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ご同行いただいた、江の川地域の振興を考えるNPO団体の安藤周治理事長の話によると、この集落も今の道路がもうすこし早く開通していたら消滅しないでも済んでいたかも知れないとのお話でした。安藤さんの栗園もこの集落のちょうど真上にあり、安藤さんご自身の思いも込められているように想像しました。

集落の崩壊と農地の荒廃は、有害動物をはびこらせ、場所によっては土砂崩れも引き起こすのだそうです。田んぼの放棄はミミズの繁殖をもたらし、それを求めてイノシシが土を掘り返し、土砂が流出していくのだそうです。田を森に戻すにも実は、技術とお金が必要なのだそうです。

やはりご一緒したまちづくり市民グループの寺本克彦さんから、牛を放牧することが意外に有効だという話を伺いました。草を食べてくれる。イノシシが近づかない。周りの田んぼも守られる。山羊などもよいようです。広島県では一分でその取り組みをやっているとのことでした。その牛は、ブランド肉牛として高値で売れるのだそうです。

よく考えてみると、しかし、これは皆昔の人たちのやってきたことなのです。それを元に戻すことがおこなわれているのです。ゆっくりと形成されてきたノウハウを、急いで経済成長を成し遂げる中で無くしてしまった。そこに改めて光を当てて行く努力が始まったということです。「無くしてみてはじめて知る価値」ですね。

藤社集落跡を少し下ったところに上田地区という棚田の風景が美しいところがあります。農家の屋根には石州瓦が整然と重厚に陽を浴びており、水田の水面と相俟って、日本の原風景のひとつを見せてくれています。
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この集落が、果たして限界集落なのかどうか、よく分かりませんが、見た目以上にデータ的には厳しいのかも知れません。安藤理事長によると、元々この地区は、中世以来の「たたら製鉄」とともに発展してきたとの話でした。
目前の棚田も、鉄分とそれ以外の土を水に流し、両者の比重の差で濾し分けるという、「かんな流し」という鉄採取の手法により長年かけて形成された地形であり、鉄と炭、そして両者が相待っての製鉄という当時としては最先端の産業と供に中国山地は生業を得てきたとの解説でした。

「その技術が廃れた以上、衰退は已む無しとの見方も確かにあるのですよね」との見方は妙に心に響きます。

その中でも、限界集落問題への取り組みも含めこの地域を何とか振興していきたいとの安藤さんたちの思いが、「ひろしまね」というNPO設立につながったのだそうです。

限界集落のご案内を頂いたあと、江の川を渡り再度広島県三次市作木町に戻りました。そこの小学校の廃校を利用して作った自治交流センター「めんがめ」での意見交換会に急遽臨みました。何と、広島、島根、山口県から35人以上の問題意識の固まりのような方がお集まりでした。土曜日にもかかわらず、自治体職員の方も随分といらしゃいました。

私の方から自分自身の問題意識を申し上げ、作木町の坂根憲昭さんから、地域の高齢者対応をする中での課題や問題意識を伺い、「ひろしまね」の秋本利彦さんからは、パワポでこの地域を「写真で巡るツアー」を見せてもらえました。「文章よりも写真が多くを語る」ということは確かにあります。秋本さんの話では、NPOの活動として、「我聞塾」という勉強会を作り、定期的に勉強会も実施しているとのことでした。

坂根さんの話の中で、①地域の人が高齢者の送迎を買って出ると、タクシー業法の縛りがあり陸運事務所から待ったがかかる、業法の理屈で困っている地域の人に地域が手を差し伸べられないのは理不尽だ、②農家民泊に関しても旅館業法の縛りが厳しく、話が頓挫してしまう、といった法制度面の地域活性化を阻む課題が端的に示されました。また、作木では、地元の人の技能ノウハウの登録制度を作っている旨伺い、面白いと思いました。

出席者からは、高速インターネットや携帯電話が使えないので、その地域に若い人が入り込まない。事業者は補助金があってもやる気が全くないので、この点に関してハンディキャップ克服のための制度がないものか、といった意見も出ていました。

また、他の出席者からは、20歳までのうちに1年間は農村地域で生活するといったことを義務付けられないか、地域活動への住民の積極的な参加を促す法制度が作れないか、といったご意見もでていました。

島根県中山間地域研究センターの山田和孝さんは、自分も出身地から大都市に出ていったが、都会の子供が実家に泊まるような機会があれば駆けつけて手伝いたい気持ちはある。制度上の仕組みとして都市と農村の交流が確立すれば、農山村の活路が開かれるような思いがある、とお話しいただけました。

私も全く同感であり、中国地方でこの分野に問題意識を持っている方々と相通じるものが確認でき、得るものがありました。

折角この様な方々のグループがあるのだから、それをネットワークを作り、更に大きな力にしていくことが大事であり、私からは特にSNSというICTの活用に関してコメントしました。

さて、一泊二日の中国山地の視察を総括してみると、以下のような観点を再認識できました。まだまだいろんな観点が隠れているのでしょうが、更に私なりに探求してみたいと思います。

・地域の課題を共有し、解決策を考えるプラットホームが必要だということ。
・特に住民自身が自ら考え、行政と協働して動くことが必要だということ。
・行政が潤滑油のような機能を果たすことが効果を発揮すること。
・地域のリーダーによい人物を得ることが重要であること。
・特に農山村にあっては、地域の人的文化的歴史的資源を掘り起こし、地域の人の誇りを目覚めさせることが大事であること。
・地域の大学などアカデミズムとの連携が触媒機能を果たしうること。
・将来に希望がもてるようなちょっとした仕掛けを制度的に作ってやることでよい循環が始まること。
・子供達の教育と地域再生を組み合わせて考えることが有効な解決策になりうること。
・個々人の能力を最大限引き出し、参加意識を持たせることで地域を元気にすること。
・情報交流・共有のためにSNSなどのICTの活用可能性が十分あること。

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Comments

人生、我以外皆師、ということってあります。人生の重みを後の世代に伝えることは、現役世代の責務です。

後世代を甘やかすと、結局災いになるだけです。

研修会は、参加すべきですね。

Posted by: むーさん | April 25, 2007 at 10:12 PM

 今年1月に山村武彦さんの「防災講習会」に参加しました。なかば動員のような格好で、どうせバケツリレー系だろうなーとしぶしぶでしたが、出てみればとてもいい体験でした。講演の中で、「自分の身は自分で守る」ということを言われ、災害の起きない環境をつくり災害が起きても生き残る術を持て、ということだったと思います。これ、健康を守るということと似ているなあ、と。
 災害と健康障害は、自分たちの生活様式が大きく影響しているということで共通している。利便性や快適さなどを追求した現在の生活は、昔の人が大事にしてきたものを必要としない。昔の人が大事にしてきたもの、それを見直さないといけないのでは?昔の人が大事にしてきたもの、それは自然と調和した生活?「生きるということ」に対する真摯さ?われわれの生活は本来「自然」なくしては成り立たない?
∴「昔の生活をみなおそう」

 飯南町は昔の生活様式を受け継いでいます。地区のつながりも、「組」の制度も健在です。かってに想像すると、おそらく地区で団結しないと助け合わないと暮らしにくい環境にあったんだな、と。自分がいて家族がいて近所があって「組」があって地域がある。生活する一単位なんだな、と。またここに暮らしていると、自然とともに生きているのだな、と思うことが多々あります。田植えだったり、祭りだったり、山開きだったり。自然の中に生きて、自然と一緒に生活する。

自分は役場で保健師をしていますけれども、つまらんことばかり考えています。健診の結果が云々、というのはあまり好きでなく、もっとこうなんといいますか、なんのために「健康」が大事なのか、と。なんのために生きるのか、と。何を大切に死活するのか、と。「健康」になるために生活するのではなく。大切なものが何か、ということを考えてもらえたらなあ、と思ってます。

 なので、先日「めんがめ」に来られた方々のように、重要な立場ですてきな構想をもっているわけではありません。「自分の身は自分で守る」を実践するためには、個人だけでは成りません。そんなときに、困ったときや緊急時に助け合える、一緒に生活する単位としての地域の力について、まとまった考えを持ちたい、考えたいとの思いで参加させていただいた次第です。
なので、とてもとても保健活動の課題など語れないつまらん者です。

人様のブログなのに書きすぎてしまいました。すみません。


 

Posted by: とんばらじん。 | April 25, 2007 at 03:42 PM

もっと時間をとは、昨日今日と「意見交換会」へ参加した方々からのメールです。
思いがけず多くのしかも分野や地域を超えて様々な方々と情報を共有できたことはありがたいことでした。
SNSでのネットワークも組みたいと話していますので、近々ご案内できるかと思います。
それに付けても、ブログのスピードの速さにそして分量にびっくりです。
また是非巡業と巡検を、お待ちしています。
中国5県内の放送ですが、NHK特番「ちゅうごく再生プロジェクト」"どう思いますか公共サービスの削減"の収録から帰ったところです。

Posted by: ひるあんどん | April 22, 2007 at 09:43 PM

とんばらじん。さん。飯南町からいらしていただき、有り難うございました。またの機会を是非作りたいですね。地域の保健活動の課題などもお聞かせ下さい。

Posted by: むーさん | April 22, 2007 at 06:58 PM

「問題意識のかたまり」←おもしろ。

総務省のひとがくるのか-。

頭がいたくなるようなお話か、

眠くなるようなお話か、

外国語のようなお話か、

と思ってましたけど、なんとか思い、馳せることができました。

また、お話ききたいな-。

Posted by: とんばらじん。 | April 22, 2007 at 05:02 PM

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