地方は「頑張るべきではない」?
「頑張る地方応援プログラム」の地方行脚で、2月24日の土曜に福井県を訪問しました。「団長」の土屋正忠総務省政務官は、雪の福井を見るべきだということでこの時期を選び訪問しましたが、その雪は全くなく、拍子抜けの気分でした。
福井県内の市町村長さんとの意見交換は、頑張る地方応援プログラムの交付税の需要額は通常のものとは別枠で措置すべきであるとか、これまでも地方自治体はずっと頑張ってきてきており、交付税算定の指標は改善しなくとも踏ん張っていることで指標が大きく悪化しないことの評価もお願いしたい、との話が印象的でした。
私なりに福井県の市町村長が言いたかったことを「コピー」すると、「頑張る地方プログラム」に加えて「踏ん張る地方応援プログラム」も必要だ、ということになるのかもしれないと思いました。
帰りの新幹線では、福井の名産の鯖寿司を食べましたが、北陸の味が胃に染み通りました。コシヒカリは、福井で生まれたブランドだ、ということを西川福井県知事さんから伺いました。意外でした。
ところで、帰りの新幹線の中で、増田悦佐氏の「高度経済成長は復活できる」(文春新書)を読みました。この本は、「頑張る」とか「踏ん張る」といった地方の取り組みをほとんど逆効果だと否定する本でした。簡単に言えば、地方は成り行きに任せ、大都市に頑張ってもらえばいい、という主張の本でした。
経済成長のためには、大都会に若い人を集め、そこで成長力のある経済活動を担わせれば、再度日本経済は成長するという論旨です。それを緩和する施策は、我が国の成長率を弱める、との主張です。
田中角栄氏が、公共投資を経済効率の「悪い」地方に傾斜配分することで、地方からの都市への人口移動を止め、日本経済の成長率を止めた、という論証を繰り広げ、しかし、今後、大都市圏に人を集めれば日本の高度成長は復活できると主張しています。
そのために、山手線を大深度地下に埋設し、その上に高層マンションを作り、廉価で若い人を地方から呼び込むべきだと具体の政策提言をしています。
「大都市圏と地方の経済格差は、移動の自由さえあれば問題ではない」、「経済的な機会を求める人たちはどんどん大都市圏へ移住すればよい」、「地方を選ぶ人は経済的不利益を承知の上で、地方が好きだから地方を選んでいるのだから補償する必要はない」という主張が展開されています。
この本の主張を、暴論として退けるのは簡単ですが、経済財財政諮問会議などの議論の深遠な部分には、少なからず共感する考え方が秘められているようにも感じられます。
一橋大学を1973年に卒業し、ジョンズ・ホプキンス大学大学院を修了、現在はHSBC証券のシニア・アナリストをしている増田さんは、ひょっとしたら国際資本の対日投資(期待)視観を体現しているのかも知れません。冷徹な資本の論理の神髄を垣間見るには必読書かも知れません。
その資本の論理に対して、成長率の適切な維持を前提に、有効な処方箋を提示することが、政府に求められているのかも知れません。
なお、経済学者の小林慶一郎氏は、朝日新聞のコラム(2007年2月26日)の中で、「公平性を高める所得再分配の政策は、市場の効率性を低下させる。市場の効率性を犠牲にして、どの程度の所得再分配を行うことが望ましいか、という問題は、各人の正義感覚に大きく依存する。」と書いています。
日本の国にふさわしい、効率性と公平性のバランスのとれた経済成長に資する地域活性化策は何処にあるのでしょうか。永遠の課題として議論が続きます。
The comments to this entry are closed.
Comments