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February 06, 2007

ハリケーン・カトリーナ以降のFEMA

米国国土安全保障省の危機管理庁(FEMA)のレオ・ボスナーさんが、日本の保健・医療関係者の招きで2月の上旬から中旬にかけ訪日されたついでに、私のところも訪ねてくれました。

ボスナーさんは、我が国の防災危機管理の現状を分析したレポートを6年前に書かれ、その内容は日本の危機管理担当者に幅広く読まれ、少なからぬ影響をその後の日本の危機管理政策に与えています。そのレポートの概要は以下のとおりです。http://tokyo-nagano.txt-nifty.com/smutai/2005/08/post_28f4.html#more

さて、今回の訪日を機会に、2005年のハリケーン・カトリーナ以降の米国の危機管理の進展状況や日本の現状について、消防庁の関係者との意見交換が行われました。私も陪席しましたが、ハリケーン・カトリーナの被災対応に携わった当事者だけに、迫真に迫る話を伺えました。

ボスナーさんは、ニューオーリンズを襲ったハリケーン・カトリーナによる被災の甚大さを見込み、FEMAの上層部に早い時期から訴えていたにもかかわらず、上層部の対応が緩慢であったことを、対外的に明らかにし、マスコミにも取りあげられた猛者なのです。

もちろんこうした対応は、組織秩序の観点からは誉められたことではないかも知れませんが、ボスナーさんは多くのFEMAの中堅災害専門家の暗黙の支持を受け、敢えてこうした対応をおとりになったようです。ボスナーさんはハリケーン・カトリーナ襲来の当時から、FEMAの組合の執行委員長だったということも、本人の「政治的立場」を強くしたのかも知れません。2007

そのボスナーさんの目から見ると、ややショッキングですが、今のFEMAは、クリントン政権時代のFEMAと比べ、大きく機能低下しているとの感想をお持ちでした。「対テロ戦争」は重要であるけれども、余りにもそれに資源を投入しすぎ、FEMA固有の災害応急対応、被災者支援、災害軽減など、特に自然災害分野に関しての資源投入が大きく落ち込み、FEMAの資源が国土安全保障省の他の分野に吸い上げられてしまっていると嘆いておられました。

FEMAに勤務していたベテラン災害対応専門家の多くはFEMAを去り、その後の人員補充も不十分で、FEMAの職員の志気も落ちていると語っておられました。

ハリケーン・カトリーナの際のFEMAの長官のブラウン氏は、ハリケーン襲来時の対応に関し、世論の批判を浴びて更迭されました。しかし、その後もFEMAの機能強化には政治的観点からして力点が置かれているとは言えないようです。

ボスナー氏の話の中で興味深い話がありました。米国の州兵(ナショナルガード)は、現在イラクに多数派遣されていますが、これまでは外国の戦地に派遣されることは基本的にはなかったのだそうです。特にベトナム戦争時には州兵の派遣はなく、ベトナム行きを逃れるために州兵になる若者が結構いたというのが一般の米国人の認識なのだそうです(現在のブッシュ大統領も州兵となりベトナムには行っていない)。

しかし、現在では、州兵が大量にイラクに派遣されています。国内の大災害時に大きな力を力を発揮するはずの州兵が、戦争にとられていることは、防災上からもとても危ういというのが、ボスナーさんの認識です。

ボスナーさんも、1966年から1年間ベトナム戦争に従軍したのだそうです。ヘリコプターに搭乗し、海岸沿いを中心にベトナム各地を転戦したのだそうです。19歳から20歳にかけての時代です。その辛い体験もあり、イラク戦争には賛成できないでいるそうです。とにかく、第二次大戦やベトナム戦争と異なり、現在は、政治家や金持ちは自らの子弟を戦地に行かせることはない実態となっており、そのような下で戦争の指揮が執られているとも指摘しておられました。

ボスナーさんは、日本に来る前に、奥さんと共に「硫黄島からの手紙」を見たのだそうです。何とも言えない感想を持ったそうです。

こうして、久しぶりの意見交換は、日米の防災の現況比較から、戦争論、映画論へと脱線しながら発展してゆきました。2年半前にボスナーさんと一緒に書いた「高めよ!防災力」という本が、近いうちに増し刷りになるという知らせを最近出版社から受けましたが、若手には、皆さんで別途新刊本を作らなければならないと発破をかけました。


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