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February 01, 2007

「101の魔法」

1月12日のこのブログで、NHKの「ご近所の底力」のチーフプロデューサーの佐藤高彰さんのインタビューの概要を記しましたが、1月31日に、ある政党の勉強会で、再度お話を伺う機会がありました。

この日はレジュメをご用意いただき、具体例を引きながら分かりやすい話をしていただきました。番組の制作責任者というものは、流石に視聴者の目を意識し、分かりやすさを旨とします。この点でも我々にとって勉強になります。

印象に残った事例は、年間100件近くあった空き巣をゼロにした杉並区馬橋(まばし)地区の例でした。問題解決の方法を探していた馬橋地区の住民は、NHKの番組に相談を持ちかけ、NHKは世田谷区松原地区の成功例を問題解決のヒントにして住民が立ち上がったというものです。

「パトロールは度派手に」、というのがキーワードだったそうです。空き巣狙いは通常下見をするのだそうです。このまちは警戒していると感じると、警戒度の低いところに流れるのだそうです。そこで目立つジャンパーを着て、鈴を鳴らし、大勢で警戒活動をすると、空き巣狙いはこのまちでは商売は出来ないと諦めて去るのだそうです。

この話を聞いて思い出したのは、数年前に聞いた、ジュリアーニ元ニューヨーク市長の「破れ窓理論」でした。まちに割れた窓があると、泥棒は街のすさみ具合を感じ、治安が更に悪化する。こまめに破れ窓を修繕していくことで結果的に治安が回復するという理論ですが、思想として同じです。

この防犯事例が放映され、この理論を元に活動する防犯ボランティアが全国に波及し、一年前の数字で8000グループにもなっているのだそうです。東京都では、番組に触発され、防犯ボランティアの育成を目指す「防犯アカデミー」を開設するに至っています。

平均視聴率が10%を超え、関東地区だけで400万人が見ている計算になるのだそうです。それだけ地域活動に潜在的な関心のある人は多いということになります。

アンケートによると、地域活動に興味のある人は6割を数えます。しかし実際にやっている人は2割に満たない。この壁をどの様にして崩すか。それが課題ということになります。

佐藤チーフプロデューサーは、団塊の世代が大量に退職する2007年以降がチャンスだと認識しています。会社人間だった人を地域にデビューさせる方法があると言います。福岡県古賀市では、会社で幹部だった人に子供と遊ばせるという方法を採っているのだそうです。子供は、肩書きなどに興味はありません。その場の雰囲気を感じる子供と仲良く遊べるか、が地域社会にデビュー出来るかの試金石なのだそうです。講釈ばかり垂れて何もしない人は地域社会で嫌われるのだそうです。長年の組織内での蓄積を衒い無く地域社会に還元できると、地域社会は確実に変わる、というのが佐藤さんの期待です。

ところで、成功事例の鍵は、負担はあまりかけないで、会議で時間を費やさず、結果を皆で共有する、ということだそうです。そして地域を引っ張っていってくれる人がいるかどうか。世話役=プロデューサーが大事なのだそうです

番組収録はNHKの101スタジオで行われているのだそうです。NHKで一番広いスタジオなのだそうです。番組制作者の中では、「101の魔法」という言葉があるのだそうです。番組開始前には自信なさげに入ってきたご近所の面々が、2時間の収録を終えるとやる気がみなぎって家に戻っていくのだそうです。

佐藤プロデューサーは、「クローズアップ現代」や「NHKスペシャル」を手がけてきたやり手プロデューサです。これらの番組はどちらかというと問題提起型。ところが、「ご近所」は問題解決型。今や人々は問題解決型の番組を好むようになっているという実感があるのだそうです。問題提起型番組で、解説者が、少しでも解決方策に結びつくような発言があると、その後には電話がじゃんじゃんかかってきていたのだそうです。そういうことがあり、もしやと思ってこの「ご近所」を手がけたところ、スタータレントの出演がないのに、高視聴率を続けている。最初は信じられなかったそうです。

また、番組成功の裏には、インターネットの隆盛があると正直に言っておられました。積極的な取り組みを行っているグループは、概ねインターネット上で発信をしているのだそうです。これにより、取材や材料集めが容易になり、番組をロングランさせることが出来ているということです。

問題は、この事例を全国のご近所の成功事例として共有財産とすることですが、著作権上の処理が煩雑で、なかなかNHKアーカイブの方にも送れないでいるのだそうです。データベース化も不十分。ダイレクトに悩みを抱えている地域と解決策のある人たちを結びつける方法が無いものかと悩んでいるのだそうです。

最後に佐藤さんの一言。「日本も案外捨てたものではない!」というのが、熱い番組作成に携わってきた感想だそうです。「ご近所から日本の国を変えよう」と今では大きな声で言えるようになったのだそうです。

30人近い国会議員の先生方も、佐藤さんの熱弁に、目の鱗が落ちたような感想をお持ちのようでした。私たちも、これからのコミュニティ振興策に向けての大きなヒントを得ることが出来ました。

なお、蛇足ですが、職場からの帰り道、見知らぬご近所のガレージにおかれている車のライトがつけっぱなしになっていました。一旦そのまま通り過ぎましたが、気になりとって返して、「ピンポーン」。「車のライトがつけっぱなしですよ。バッテッリーが上がってしまいますよ。」とお伝えしました。妙齢な女性に「すみません。ご親切に。」と夕闇の中で挨拶をされました。

お互いに若ければこれがロマンスのきっかけになったのかなあ、などと妄想を懐きながら家路につきました。一応、よい話を聞いたことの実践を行い「知行一致」の一日でした。


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