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December 28, 2006

ユニバーサルサービスの不備と再分配のパラドクス

2006年も年末の押し詰まった頃、久しぶりに神野直彦東大教授から、昨今の国の財政運営に関するご所見をうかがう機会を得ました。

「常に目標を見失わないように」、とのお話は、いつものことながら心にしみとおります。

神野先生は、地方税財政改革について、個々の事象に一喜一憂するのではなく、その本質を見失わないで物事を考えてゆくことが大切であると説かれます。そのひとつの考え方として、これからの地方財政の大本の考え方は、根雪の部分で地方消費税、地方法人関係税を確保し、上積みの部分は、個々の地方自治体の歳出水準によって個人住民税により税率も含めて調整するという税構造を目指すべきだ、とお考えです。

地方消費税は一定税率で税率設定の自由度がないので地方財源になじまないとの一部の指摘がある中で、地方消費税を法人関係税とともに地方財政の支出の根雪財源と捉え、税率設定の自由度がある個人住民税は、この根雪以外の歳出にあわせて税率設定を調整すればよいというタックスミックス的な考え方です。財政改革に当たっては、そういう基本線を見失わないことが大事であるとのご示唆でした。

神野先生は、昨今、個人の経済格差、地域間格差が大きくなっていることを懸念されておられます。「上げ潮経済成長」の考え方により、経済のパイを増やし「トリクルダウン」のメカニズムで個人と地域にその恩恵を裨益するという考え方は、ノーベル経済学賞受賞者のスティグリッツが既にその理論的破綻を指摘しているとしつつ、そのトリクルダウンのメカニズムですら、垂直再分配は非正規雇用を増やし労働者の二極化を進める労働市場改革で切断され、水平再分配は、交付税の圧縮で機能不全に陥っており、縦軸・横軸ともに「おこぼれ効果」が発揮できない制度設計になってしまっている、と指摘されています。

更に、経済成長と公共サービスに関し、神野先生は、地方分権的手法によってこそ、内需主導の安定した経済成長がもたらされる、と説明されます。

すこし春秋の筆法的ですが、先生の話を伺って私なりに整理した論理展開は次のとおりです。

・市場が効率的であるとすると、政府が何も介入していない状態が最善ということになる。
・ディストーションがおきるとしたらそれは市場が不効率だということになり、政府の介入が必要になる。
・ましてや、公共サービスの差異があることで人々の地域間移動が起こるということ問題であり、そのゆがみを正すために公共サービスを機能させないといけない。
・現在の産業構造を前提に、人々に現在の地域に住んでもらい続けるとしたら、公共事業の削減は確実に地域間格差を広げることになる。それをカバーするための別途の公共サービスを創出しなければならない。
・そうならないためには、産業構造の転換が不可欠である。海外に生産現場を移転しないような政策を打たなければならない。
・景気回復が続いているなかで、本来ならば、企業課税を充実し、その果実を元に労働分配率を高め再分配を行い、「トリクルダウン」により、消費需要を上げ、国内の経済循環を創出するのが普通の政策のはず。これをしないと国際競争力が上がっても為替相場の円高為替で調整されてしまう。にもかかわらず、税調では、国際競争力を高めることばかりで、理屈に合わない議論が見受けられる。
・今求められる政府の介入は、国内の消費需要をあげるための労働分配率の引き上げのはずである。外需に支えられた現在の産業構造を転換し、内需依存型の安定した経済構造に移行することが、産業政策のはずである。それが更なる企業減税ばかりを追いかけているのは、近視眼的である。
・労働分配率の引き上げと同時に必要なのは、ユニバーサルサービスの充実である。育児、養老、住宅、教育といった普遍的サービスの充実が今求められている。これが内需拡大の受け皿ともなる。
・それを提供するのは、地方自治体である。その地方自治体の税財源を充実するのが現在求められており、地方分権が必要であるのは、日本のユニバーサルサービス充実のため、内需型産業構造転換のためでもある。
・日本の現状は、普遍的に提供すべきものが提供されていない。スウェーデンでは、教育・福祉・医療・雇用政策などのユニバーサルサービスが充実しており、生活保護に限って見ても、残ったわずかな局面に生活保護の役割が限定され、生活保護は衣食だけの提供で済んでしまう。
・ところが日本では、ユニバーサルサービスの水準が低いため、貧困層は、生活保護に医療、教育、生活のすべての需要を求めるため、生活保護の制度的負担が大きくなる。
・その結果、いざ生活保護を受けようとすると、「一部の人に手厚い生活保護が提供されるのは、生活保護を受けないでがんばっている人との不公平感が大きい」との批判が生じ、生活保護の水準が切り詰められたり、認定が極度に厳しくなったりし、本来必要なところに生活保護が回らず、予算が却って減らされるというパラドクスが起こりうる。これは、「再分配のパラドクス」として知られる現象である。
・たとえば、日本では育児はユニバーサルサービスとして提供されていないので、日本の子供を持っている家庭の相対的貧困率は世界最高の不名誉な水準にある。米国より悪い数字だ。一人親家庭の相対的貧困率も同じく高い状態になっている。母子家庭はパートに頼る状態だが、OECDの報告書は、パートとフルタイムの所得格差が大きすぎると指摘している。児童虐待も貧困世帯数とリンクしている。
・つまり、地方分権により地方税財源を充実することで、地方自治体がユニバーサルサービスを適切に提供する制度を作ることが現在求められており、それが格差社会も是正し、わが国の内需主導型の安定した産業構造の構築に結びつくということだ。
・やはり、消費税の税率を厚くして、地方自治体がユニバーサルサービスを提供するという仕組みにする必要がある。マスコミのアンケートでも、福祉のためなら消費税アップは受け入れるとなっているが、その意味を読み取らないといけない。

以上の論理展開は、伝統的な財政学の考え方に忠実であるように思えますが、この論理に対する経済界の方々の考え方も伺ってみたいように思えてきました。

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Comments

はじめまして、明けましておめでとうございます。Shinnともうします。

ホント、日本の少子化対策及び意識改革はおかしなものですね。
もっと母子家庭を応援してほしいものです。

無礼を承知で超長いコメントをさせていただきます。


ご存知でしょうが、最近では『ワーキングプア(=働く貧困者)』が深刻な社会問題になっています。

それが最近のNHKでも放送されました。

現在の首相の安部総理が『再チャレンジ』政策を掲げていますが、このワーキングプアの実態把握が乏しいまま『再チャレンジ』を進めていますが、ホントちゃんチャラおかしいですね!議員たちは、自分たちは貧乏を味わったこと無いから所詮他人事なんでしょうね。

それにしてもなんでこんな社会に成ったのか悲しくてなりません。


とりわけ離婚して子供のいる母子家庭は、『ワーキングプア』に陥りやすいのです。子供がいるだけで正社員の道は閉ざされてます。

子どもが熱を出した、休みます、となるとすぐクビですし。

結果的に、母子家庭のおふくろさんらは、超安時給のパートを掛け持ちしないと生きていけない、しかも生活保護以下の水準です。

しかも生活保護の母子家庭給付も半減されるのですから、まさに世も末です。

そうなれば、どうしても正社員で働きたかったら、子どもを高校まで施設に預けざるおえないでしょう。施設なら満18歳まで面倒見てくれますし。しかし、そんな非常なマネができれば誰も苦労しません(泣)


今後の日本の働き方の意識改革及びパートとの格差是正が主な問題であると、私は思います。なぜならフランスを含むヨーロッパのほとんどでは、正社員とパートの格差が皆無に近いし、比較的出生率の高いフランスでは、働くお母さんは実際にはパートの方が多いのです。

私は、同じ女として、これは断じて他人事ではないと思ってます。
この状態が続くのでは、女と若者の未来はないと感じてます。こういう女とガキに冷たい、男社会の国は長い目で見れば滅亡します。


この日本は、一度やめると次働ける勤務形態はパートのみですし、育児と仕事との両立はとてつもなく難しいですし。


そうなっているのもやはり「男は仕事、女は家事育児」という保守的かつ古臭い考えの者たち(とりわけヤローどもが!!)があまりにも多すぎるし、それによって男社会の温床になってるんですよね。

そればかりでなく、周囲の人(近所や地域の人々)の協力も必要です。欧米は「個人主義国」と言われていますが、実際にはそうした助け合いがあるのです。イギリスでもそうでした。そういうことがなくして、少子化改善は程遠いです。

 「コイツ、バカじゃねぇの?」と非難されるのを覚悟で申し上げます。現時点では、将来的に、前述の問題から逃れたければ、日本から出て行って働く(主にアメリカ、ヨーロッパ、オーストラリアへ)しか方法が無いですね。そうお思いになりませんか?

 私は内定が決まり来年の春から社会人の身です。大学2,3年の頃、私はよく『この日本からおん出て働きたい』だなんて厚かましくもほざきまくってました。なぜかといいますと、やはり女性の労働環境問題(母子家庭のパートに自分が転落するのが)が嫌だったからです。

仮に、日本から出て働けたとします。しばらくは事が自分の思い通りに運び、現地人と結婚し子をもうけて働き続けられる。そういった現地の女性&子どもへの政策に満足するでしょう。しかし、時折『お役ごめんになったらどうしよう』 とか『大きな病気(ガンやパーキンソン病のような難病)にかかってしまったら、見舞ってくれる日本の家族や友人はいない。で、離婚され、職を失ったら?その後はどうなるのだろう、無一文で野たれ死に?』などといった疑いと恐れにさいなまれるかもしれません。


とにかく早く日本も、フランスをはじめとするヨーロッパのように母子家庭の保護支援、福祉・あらゆる労働環境が充実することを願ってやみません。


お正月から暗い&バカな話をしてしまい、大変失礼致しました

Posted by: Shinn | January 01, 2007 at 10:59 PM

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Tracked on December 28, 2006 at 08:53 PM

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