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December 07, 2006

オーランド諸島の自治と地域経済の活性化

長谷川憲正参議院議員は旧郵政省出身で、郵政審議官を最後に退官されフィンランド大使も務められたことのある国際派ですが、12月5日の参議院総務委員会の地方分権改革推進法案の質問者として、含蓄のある質問をされていました。

何故地方を大事にする分権改革が必要なのか、という観点からの質問です。長谷川代議士は、国土の安全保障と地域の活性化の両面から、自らの欧州滞在体験を踏まえた立論を披露されておられました。

先ず、ご自身の欧州滞在の経験に基づき、欧州の人たちに、「欧州諸国は何故農村部のコミュニティーを大変大事にするのか」、と、その根本を問うと、建前の理屈はともかく、最後には、「陸続きの欧州は、他国人の侵入を見張るため、人の住まない地域は作らないのです。それが国家の安全保障に直結するのです。」という答えが異口同音に返って来るという経験談を語っておられました。これは私どももよく耳にすることではあります。

我が国は、東京一極集中を押し進め、経済効率の上でそれも已む無しとの理屈がまかり通っているが、これは世界の常識とは異なる、ということをおっしゃりたかったのです。海岸線の長大な我が国が、人の住まない地域を放置した場合にどうなるか、これは国家の安全保障にも関わる問題だと、強調されておられました。知らないうちにある地域に異なる言葉を話す集団が住み着いていたのが発見された、ということでは困るというものです。海上保安庁や警察の機能強化だけで片づく問題ではない、コミュニティー目があってこそそういう事態が防げるのだ、と。

もう一つの視点は、よりポジティブに、地方分権でこそ地域が活性化するということを、オーランド諸島の自治の経験を引いて説得力を持って指摘されました。

オーランド諸島は、バルト海、ボスニア湾の入り口に位置するフィンランドの自治領の島々のことです。Silja2
住民のほとんどはスウェーデン語を話すのだそうです。

フィンランドは、ロシアから分離独立しましたが、その際に、スウェーデンとフィンランドの間のバルト海にあるオーランドは、スウェーデン語を話す住民がほとんどであり、オーランド諸島がスウェーデンに属するのか、フィンランドに属するのかで両国の間に紛争が起きたのだそうです(1921年)。一時は一触即発の危機状態に至ったのだそうです。

時の国際連盟事務次長の新渡戸稲造がこの紛争を、「新渡戸裁定」をもって収めたのだそうです。オーランド諸島はフィンランドに属するが、公用語はスウェーデン語とし、フィンランドの軍隊の駐留は認めず自治領とする、というのがその裁定であったのだそうです。日本的にいえば、「大岡裁き」でしょうか。

スウェーデンに郷愁を感じていた当時のオーランド島民にとって、その裁定は余り評判が良くなかった、とのことですが、85年以上たった今では、スウェーデンに属さず、フィンランドの自治領になったことが結果として自分たちで物事を考え決定することにつながり、地域は大いに活性化し、欧州の中でも選りすぐりの経済的豊かさを享受する地域となっているとのことです。独自の法律を施行し、独自の州行政により中央政府のかわりにサービス行うことのできる権利が与えられ、特徴のある教育・文化、公共医療、地方自治、郵便、放送、商工業に関するサービスが提供されているのだそうです。

オーランド諸島の例を引くことで、長谷川代議士は、自治によってこそ経済は活性化することを実例を以て紹介してくれました。

新渡戸裁定自体は、オーランドの自治そのものの実現を目的に行ったわけではなく、複雑な歴史と国家間の争い・面子の問題が絡みあい、その島々が接する欧州諸国の国境管理・安全保障上の問題解決を図るための妥協の産物がこの特別の制度設定の背景にあったことは想像に難くありませんが、結果として、自治によって経済が活性化した実例として、後世日本の国会審議で取り上げられることになったのです。

長谷川代議士は、今後地方分権改革を進めるにあたっては、地方分権で何が良くなるのか、一般の国民は分かりにくいので、こうなる可能性があるのですよ、という実例を示していかなければならない、と、熱っぽく語っておられました。

「先進国の中でこんなに人口の多い日本が、東京でないと物事が決まらないということは考えられないことだ」という言葉は、国際派ならではの視点で、結構説得的でした。

そう言えば、財務省出身の元スウェーデン大使の藤井威氏も、スウェーデン在住という経験をされてから、根っからの地方分権派になられましたが、長谷川代議士の場合と似ているようにも思えました。長い人生の中で、人間たまには大きく環境を変えてみないといけないのかも知れません。

帰り際、総務委員会の他の代議士が、長谷川代議士に、「長谷川さん、俺の地盤の四国も独立することに決めたよ」とエレベーターホールで明るく話しかけた冗談が新鮮に聞こえました。

沖縄の活性化方策の一つとして、沖縄に一国二制度を導入したらどうか、その場合にはオーランドの自治領の事例を参考にしたらいいのではないかとの議論も仄聞しますが、そこまで議論を拡大しないにしても、事例研究はしっかりしておくべきことには疑いの余地はありません。

ところで、ここまで読むと皆さんが疑問に思う点。オーランド諸島の人口は? 答えは26000人ほどなのだそうです。

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