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December 11, 2006

地方分権改革の再スタートと自治体不祥事

平成18年12月8日に、地方分権改革推進法が国会で成立しました。この法律自体は、今後の地方分権の進めるにあたっての「体制」を整える枠組み法ですが、地方分権の第二期改革がこれを切っ掛けにスタートすることになります。

折しも地方自治体の首長の不祥事が続き、地方分権改革推進法が成立した翌日の新聞では、「知事が相次いで逮捕されて、それで本当に分権をやるつもりなのか」、「地方に金を渡すと何に使うか分からない」との霞ヶ関の幹部の発言や、「国の責任を果たせるような権限を与えてもらわないと困る」との伊吹文部科学大臣の発言が引用されていました。

地方自治体の首長の不祥事と地方分権の関係については、11月28日の衆議院総務委員会で、安倍総理が考え方を明確に示す発言をされています。

それは、「地方自治体で不祥事があるから地方に任せられないというのは本末転倒。進めていくべき地方分権は進めていきながら、その中でどうチェック機能を機能させるか。」という発言です。

住民に近い団体であるからこそ、住民の監視の中で、首長の行動などに問題があればチェックされやすくなる、という地方自治の本質を踏まえておかなければ対応を見誤ります。

同様のことを元スウェーデン大使の藤井威氏から伺ったことがあります。私が、「スウェーデンで地方分権が進んでいるのは、国民が国よりも地方自治体を信用しているからなのですか」、と素朴に伺ったところ、「とんでもない。スウェーデン人は、政府も自治体も信用していない。信用していないからこそ、できるだけ自分たちの身近な地方自治体に権限と財源を引き寄せ、チェックをする仕組み、つまり地方分権を選択しているのですよ」という答えが返って来ました。

そうは言っても、地方分権を進める立場からすると、第二期地方分権改革は、嵐の船出と言わざるを得ない状況にあることは否めません。10年以上前の第一期分権改革がスタートした当時も、ゼネコン汚職などがあり、地方自治体に対する風当たりが強い中での船出でした。歴史は繰り返しながら「進歩」していくものと信じたいところです。

ところで、地方分権改革推進法が国会で成立した翌日、信州大学経済学部で、学生向けの講義をしてきました。「現代法務」という講座で、学生が実務家の講師から講義を受けるというものです。私は、旧知の廣田達人助教授のお誘いで、3回に分けて土曜日の講義を引き受けたその2回目でした。テーマは、「国における法政策の企画立案」というものです。

ちょうど地方分権改革推進法が成立したばかりでもあり、地方分権議論の経緯や、三位一体改革の内容、今後の課題などについても話をさせていただきました。

若い学生には余り興味がない分野かもしれないなあと思いながらも、義務教育国庫負担金議論や生活保護制度を巡る各省間のせめぎ合いなどについても関係者間の対立局面を際だたせながら話をしましたが、意外にしっかりと聞いてもらえたようです。

というのも、講義の都度、講義の内容に関してのレポートを学生が提出することが義務づけられているため、講師にもその内容が知らされ、学生の理解度が分かるようになっているからです。

義務教育と生活保護のサービスの内容の差異を理解し、「何を分権すべきか、すべきでないか」の吟味が重要だとの認識を感想で書いてくれていた女子学生がいましたが、話の趣旨が伝わったことを確認できて嬉しくなりました。

一方で、地方分権議論と、自治体の不祥事あるいは財政破綻との関係を、もう少し整理しないといけないのではないかといった学生の意見もあり、学生の見方も厳しいことを再認識しました。こうした意見に対しては、次回の講義で、冒頭の安倍総理の考え方や藤井元大使の指摘をお示ししたいと思います。

なお、廣田助教授は、公認会計士の資格もあり、実際に地方行政の監査などに携わっておられますが、地方分権と不祥事の記事の扱いについては、「トップの不祥事」ということで特にマスコミうけしたものが政策論議に利用されているきらいがあり、地方自治体は国に先行して情報公開制度をスタートさせ、国にはない住民訴訟・外部監査等の住民のチェック体制を充実させてきていることを(マスコミにも)もっと理解してもらいたいところです、と専門家らしい指摘をされておられました。

ところで、普段の仕事の内容を、学生向けや社会に対して自分の言葉で説明していく機会を設けることは、霞ヶ関の役人にとって、必要なことのように思えます。外から見ていて、霞ヶ関は何をしているのか、分かりにくいというのが世間の実感だと思います。今回の連続講義は、たまたま私が引き受けましたが、より多くの方が、腰を上げていくことが求められていると思います。

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