« 自らの生活習慣病予防への取り組み | Main | オーランド諸島の自治と地域経済の活性化 »

December 04, 2006

中国の地域コミュニティ 「社区」

過日、元放送大学教授の倉沢進という先生の「コミュニティ論」の一部をご紹介しましたが、その倉沢先生のお話を直接伺う機会がありました。

先生から、「コミュニティ問題の現在」という演題で伺った話の要旨は、現在のコミュニティ施策に重要な観点は、①「公」と「民」が相互に乗り入れるさまざまな機能を統合した施設、②町内会的組織、特定分野に関心のあるNPO、得意活動領域を持つ団体などの地域の構成団体などの組織、③専門性と統合性を有した地域社会のリーダーの存在、の3要素が重要ではないか、ということでした。

そのお話自体はごもっともなお話でしたが、そのお話を伺う中で、最近の中国のコミュニティ施策に関する資料を頂きました。

それを拝読すると、中国も、現在進行している地域社会の流動化に対応するために、コミュニティ施策を大変重視している状況が判明します。初めて聞く話であり、清新な印象を持ちましたので、そのエッセンスをご紹介します。

さて、中国では、現在「社区」の建設が内政上の重要課題となっているのだそうです。英語のコミュニティに由来する「社区」とは、中国の都市の行政組織である「市」、「区」、「街道」の三層構造の地方行政組織の下に置かれる基礎的自体であり、その「社区」の中核組織として、新中国成立直後から設けられてきた地域住民組織である「居民委員会」が規模調整のうえ位置づけられているのだそうです。

この「居民委員会」は、日本の町内会類似の組織で、行政の最末端組織としての性格と住民の相互扶助的な組織という性格を併せ持つのだそうです。

政府は、「社区」を、「一定の地域範囲内に集居する人々によって構成される社会生活の共同体」と定義し、この「社区の建設」は、「党及び政府の指導の下、社区の力に依拠し、社区の資源を活用し、社区の機能を強化し、社区の問題を解決し、社区の政治・経済・文化及び環境の調和的かつ健全な発展を促進し、社区成員の生活の水準及び質を絶えず向上させる過程」であると位置づけているのだそうです。

中国が、「社区」の建設に積極的になる理由の第一は、従来の都市の基礎社会構造である「街道」あるいは従来の「居民委員会」のあり方が、最近の中国の改革路線に伴う諸問題に的確に対応できていないという認識に基づくもののようです。

かつての人民中国においては、軍組織と政府機関・国有企業がほとんどの勤労者の働く場所であり、兵員や従業員に食、衣、居住空間を提供すること、医療サービスを提供することなど、生活上のもろもろの物資やサービスの供給は軍や国有企業と硬く結びついており、中国ではそれが「単位」と呼ばれ、人々はすべて特定の「単位」に属することで身分や地位が保証され、衣食住などの生活要求が満たされていたものが、改革開放によりいやおうなしに、「単位」が従業員のすべての生活要求を担う仕組みを崩し、これらの社会機能、サービス機能のほとんどを地域社会に外部化することになったのだそうです。

企業組織側から見ると、国際競争の生き残りをかけた機能純化を目指さざる得なくなり、その結果、外部化された社会機能、サービス機能は論理的には市場経済ということにならざるを得ないという選択肢もありえますが、中国は、社会の安定を確保するために、ここで「社区」という中間的な地域単位の組織を受け皿として設けることで、サービスの開拓や生活の質の向上を目指すこととする、という社会政策を選択したのだそうです。

市場経済に対応する新しい生活上の諸要求の受け皿として都市の「社区」建設は差し迫ったニーズとなっていたということになります。

「社区」建設の第二の理由は、「住民が祖国を愛し、都市を愛し、社区を愛するように導き、先進、団結・互助、正しい気風の醸成と不正な気風の除去、積極・向上を尊ぶ社区の道徳気風を形成」するといったところにあるようです。

この点は日本人には分かりづらいのですが、中国では礼儀作法の尊重、マナーの重視が課題となっており、具体的には、公共空間で痰をはかない、ポイ捨てをしない、高齢者に席を譲る、大声を出さない、といった日常の行動が念頭にあるのだそうです。

「社区」建設の第三の理由は、現代中国では、末端行政の硬直化、官僚主義がどうにもならない状況に達し、それに対する対処方策として、「社区」の建設により、市民による行政の監視、住民自治の重要性といった視点が生まれているのだそうです。

社会主義国中国でも、素朴ながら住民自治の観点が重要な論点として挙げられているという指摘には、思わず注目させられます。

また、町内会的な地縁自治組織は、日本の専売特許だと思っていたら、必ずしもそうではないようです。この中国の「社区」のほかにも、イタリア・シエナのコントラーダ・ソチエタといった地縁自治組織の例はあるのだそうです。昼から夜までの老若男女の住民の普段からの付き合いの延長線上で、パリオという祭礼を支える住民組織であるコントラーダ・ソチエタは大変有名のようです。

本年で72歳になられるコミュニティ論の碩学の知識に、改めて敬服させられました。

|

« 自らの生活習慣病予防への取り組み | Main | オーランド諸島の自治と地域経済の活性化 »

Comments

こんにちは。中国からの留学生です。倉沢先生の「社区建設―中国のコミュニティ政策」(一)から(五)を入手しましたが、先生の章構成を見ると、あと5部分があるようですが、まだ雑誌に発表されていないようですが、とても興味を持っていまして、ネットを調べましたら、このページを拝見しました。突然ですが、倉沢先生の(五)以後の中国の社区建設の論文を手に入れる方法がご存知でしょうか?それを教えて頂けませんか?

Posted by: wang ting | June 25, 2007 at 11:53 PM

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/58165/12936116

Listed below are links to weblogs that reference 中国の地域コミュニティ 「社区」:

« 自らの生活習慣病予防への取り組み | Main | オーランド諸島の自治と地域経済の活性化 »