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December 19, 2006

「コミュニティツール」としてのICT

「コミュニティツール研究会」という総務省が主催する研究会があります。石井威望東京大学名誉教授が座長となり、コミュニティ活動を支援するICTのあるべき使い方を事例紹介を交えながら積み上げていくものです。

2006年12月15日に、第7回の研究会があり、私も勉強がてら参加しました。

先ず、産業技術総合研究所主任研究員をされていた増井俊之さんが、最近アップルコンピューターに移られたのですが、今の勤務先のカリフォルニアから、電話料金がただのパソコン動画画面により議論に参加され、急速に変わりつつある通信革命の一端を紹介されました。これだと、ありとあらゆる会合に所在を問わず参加できてしまいます。

オブザーバプレゼンテーションとして、日立製作所情報・通信グループの織田稔之氏が、 「エリアを限定したワンセグ放送のサービス実験について」プレゼンをされました。ワンセグ携帯を持って特定エリアを訪ねると、自動的のその地域独特の放送が受信できる。平常時は生活情報、非常時は防災情報を提供するシステムがワンセグにより可能になるという実証実験をご紹介いただきました。

今年の秋には、実際に、国立西洋美術館でワンセグ伝送実験が行われているのだそうです。美術館のキラーコンテンツと学芸員の研究成果を結びつけ、付加価値の高い美術鑑賞に持っていこうという試みです。

エリアを限定したワンセグ放送の活用需要の可能性は高く、視聴者のTPOに合わせた番組提供ができれば、ワンセグ利用の期待は高まります。当然、コミュニティの活性化のためにもコミュニティ型ワンセグ放送は大きな可能性を持ち得ます。

課題としては、放送のクオリティ確保、信頼性、地域密着性を事業としてどう実現するのか、などいろいろな論点はありますが、思わず、地域のキラーコンテンツともいうべき地域の歴史文化の発掘に拍車がかかるのではないかとの思いがよぎります。

オブザーバプレゼンテーションの二人目として、三菱総合研究所社会情報通信研究本部高橋知樹氏からは、同じく、ワンセグを防災に活用する可能性に関して説明を頂きました。ワンセグは放送であり、通信ではないため、輻輳がなく、電波が届く範囲であれば一度に情報を伝達できるユーザー数は無限であり、おまけにワンセグチューナーを自動的に起動させる放送起動は防災上極めて有効な手段であり、携帯電話の普及を考えれば、人々に緊急情報を迅速的確に伝達する手法として意義深いとの説明がありました。

実際の札幌市での実証実験も伺いましたが、受信動作の実証が十分確認されたとのことでした。

このほかに武山政直慶應大学経済学部助教授、鈴木聰明城西国際大学観光学部助教授からもICTを活用した地域活性化の実例報告を頂いた後、石井座長からもプレゼンがありました。石井座長は、グーグルアースソフトを使い、電子地球儀を回しながら、あちこち世界旅行の疑似体験を委員の皆に共有させてくれました。

委員会の冒頭出演された増井さんがおられるカリフォルニアのアップルコンピューターの建物をパソコン上に映し出し、「先ほどの増井さんはこの建物から話をしていたのですよ」とおどけて見せました。

次に、電子地球儀を回し、バチカンのサンピエトロ広場に飛び、知人が訪問時に撮影した携帯画面をYOU TUBE に投稿したものをその場で見せてくれました。その次に、バンコク国際空港に飛び、たまたまクーデターのあった日にそこに居合わせた友人が撮影した国際空港内の模様を放映してくれました。グーグルアースの地点地点にYOU TUBEの画面をリンクさせておくことで、電子地球儀上で世界旅行の思い出が楽しめるのです。地球上空から特定地点にズームアップするのは、まさに、神の如き感覚、です。

最大のメリットは、このサービスが非常に廉価乃至はただで活用できるのです。こうした機能は、コミュニティツールとして非常に大きな武器になるはずだ、というのが石井座長の主張でした。

石井座長によると、YOU TUBEが爆発的に普及したのは、米国の中間選挙が切っ掛けになったとのことでした。候補者は、テレビ番組を買うとなるとたいそうな出費になりますが、YOU TUBEは投稿ですから無料です。何十万人もの人がパソコンに大きな負荷なく、特定の画面を見られるのです。逆に失言などがあると、それが致命傷になります。米国では、選挙のやり方もYOU TUBEの出現で変わったとのことでした。

いろいろなICT技術が急速に発達したことで、デカルトのアトミズム以来の個々の主体の分断状態が解消され、今日では逆にシナジー効果を生み、ありとあらゆる融合が生まれている、というのが石井座長の言でした。

これに対して、小池英樹電気通信大学大学院情報システム学研究科教授は、「グーグルアースも良いけれども、このソフトを使ってやりとりした情報は、すべてグーグルに吸い取られるので、使い方はよく考えないといけない」、とセキュリティーの専門家らしい注意喚起をされておられました。小池先生によると、SNSで有名になったMIXIといえども、「参加者が本名でやりとりするのは危険」であり、「実際に、正しい人が間違っている人に締め出されるといういじめが生じている」と、ネット社会が孕む危険性について指摘をなさっておられました。

石井座長は、「さはさりながら、メディアの使い方をセレクトして使うことが大事であり、それから逃げては進歩がない」とこれまた科学者らしい発言をなさっておられました。

ところで、研究会で紹介された事例集はとても参考になります。コミュニティ活性化の手段としてとても有効な活用例が以下のリンクにふんだんに載っています。
http://www.lasdec.nippon-net.ne.jp/rdd/community-tool/kenkyukai/activity.html

日本経済成長のS字型カーブがICTの高度利活用で実現されうるのではないかと言われているのと同じように、コミュニティ振興のキラーツールとしてもICT技術の利活用は可能性が高いものと思われます。

こうした話を聞いていると、どこかの町内会で、SNSをつくり、そこにグーグルアースとYOU TUBEを組み合わせて、町内会毎の地域文化を花開かせてみるのも面白いなあ。その町内会は、リアルな町内会だけではなく、バーチャルな町内会のメンバーも認めることは当然あるのだろうなあ。また、近い将来、地域ワンセグも立ち上げ、地域のCATVの協力により、番組のクオリティ確保を図るということもありうるだろうなあ。その場合の資金は、商店街の広告費で賄えるのではないかなあ。そして非常時には、市の防災当局が、ワンセグ上に防災情報を提供するということもあるのだろうなあ、などという発想は、自然に浮かんでくるでしょうね。

まことにユビキタス社会の到来を感じます。

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