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November 04, 2006

信州大学と地域ケーブルテレビの連携

文化の日(11月3日)とその翌日にかけ、職場の先輩をお誘いし秋の信州路を訪れました。ちょうど文化の日を皮切りに来年の1月8日まで松本市美術館で松本深志高校創立130周年記念事業の一環として「日本近代洋画への道」という企画展覧会が開催されているということもあり、自然と美術の目の保養も兼ね出掛けました。

たまたま市内は「松本まつり」という市をあげてのイベントが行われており、市内の道路は歩行者天国となり、松本にこんなに人がいたのかと驚くくらい、混雑していました。
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改装なった松本駅から、女鳥羽川沿いに歩き、縄手通りの近くの「小林」で新蕎麦に舌鼓をうち、紅葉の松本城をぐるっと巡り本丸内で見事な菊の展示に堪能し、大名町の歩行者天国の斎藤コーヒーの100円コーヒーをすすりながら歩いていると、旧知の和菓子の「翁堂」の木内基裕社長と「倉の店」で目が合い、店内に誘われて改めて藤森しづ子さんの煎れてくれたコーヒーをご馳走になり、「源智の井戸」でほのかに甘い湧水を口に含み、じっくりとウオーミングアップを行った上で、松本市美術館の企画展に臨みました。

高橋由一の「鮭図」や浅井忠の「収穫」などの名画を、学芸員の細萱禮子さんのお話を伺いながら、ゆっくりと鑑賞して回りました。美術館には、高校同期の大石幹也さんが勤務しておりますが、美術館に伺うときにはいつも大石さんが何故か気を利かして細萱さんを向けてくれます。

企画展には東京芸術大学所蔵の作品も沢山展示され、「普段なかなか見ることが出来ないものがあるのですよ」、との細萱さんのお話でした。修理を終えたばかりの「弓を射る若い武士」を木炭で描いた絵には、思わず見入りました。まるで写真のように写実的で、「これは見物です」との細萱さんの言うとおりでした。

その足で、テレビ松本ケーブルビジョンを訪問しました。今回ご一緒した職場の先輩が以前からケーブルテレビの佐藤浩市社長と知り合いで、この機会に本社を見学させていただくことになったのです。里山辺の葡萄畑の中にある本社は新しく、機能的で、好調な事業の様子を物語っているかのようでした。

佐藤社長から南波宏行営業部長、佐々木郁夫技術部長、伏見聡報道制作課長、大丸浩二総務課長をご紹介いただき、松本におけるケーブルテレビ事業の概要を伺いました。30年以上に亘る事業展開の中で、地域密着型の事業展開を多角的に行っている話の内容に、頭が下がる思いがしました。サービス提供テリトリーである松本市や塩尻市、地元警察署などとの連携はもとより、ごく最近では信州大学との連携も始められたとのことでした。

平成18年10月1日から、テレビ松本ケーブルビジョンは、信州大学TV(SUTV)という企画を立ち上げたとのことでした。正確には、信州大学が番組コンテンツを作り、テレビ松本ケーブルビジョンを通じて放送する、という提携事業です。

信州大学は、「市民の生涯教育や企業団体への研究情報の提供など、地域社会への貢献と、学生のメディア・リテラシー教育の向上を目的とした、日本初の大学専用テレビチャンネル」と、胸を張っています。http://www.shinshu-u.ac.jp/tv/about/index.html

放送される番組の多くは、信州大学学生を主体としたスタッフにより制作され、学生による番組制作は、「教育理念等に応じた教育課程を編成する為の具体的方策」の一つである「メディアリテラシーの支援」に基づくもの、と位置付けているようです。

直感的には、学生が勉強をしないで、テレビ制作をしているなんておかしいじゃないか、と思いがちですが、信州大学は、そこのところを、教育理念の観点から咀嚼しているようです。学生のうちから、「あらゆるメディアに対する批判的読解能力、メディアリテラシー」を高めておくことが必要であることは理解できますが、信州大学は、自分たちで番組を作ることで、そのことを実体験しようということなのです。

それにしても、民放顔負けの番組作成を行っているようです。次の放映番組リストを見ると、そのことがよく分かります。http://www.shinshu-u.ac.jp/tv/schedule_11.html

パラボラアンテナがいくつも空を向いている会社の屋上で、たまたま信州大学経済学部の山田洋祐さんを紹介されました。彼が、キャンパス・ブリッジという放送番組作成の責任者の一人なのだそうです。「自炊が面倒な学生(ハラペコなキッズ)たちのお腹を一杯にして満足させ、フトコロにも優しい飲食店を、リポーターのヨーゼフが紹介します」という番組では、山田さん自らが「ヨーゼフ」というレポーター役で、学生向け飲食店探訪をしているのだそうです。

この様な形で、商店や市民が、地元の学生と一緒になって地域づくりを目指せるということは、ICT社会における、新しい形態の地域振興になりうることを、予見させます。地元大学に、番組コンテンツを作ってもらうというのは、共存共栄の発想であり、なかなかの着眼です。全国に広がる可能性を感じました。

佐々木技術部長の話では、テレビ松本ケーブルビジョンは、好調な決算を続けているのだそうです。応接室には国税庁長官から授与された銅製の茄子の壁掛けがありました。優良納税表彰です。地域の情報化、文化、情報共有、地域振興に貢献しながら、納税による貢献も行えるということは仕事冥利に尽きるのでしょう、佐藤社長の顔は、まことに福々しい限りでした。

文化の日の一日、先輩と連れ立っての秋の信州路は、目の保養だけではなく、期せずして新しい地域の振興ツールの一端に触れる機会も得られ、得難い一日になりました。

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