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November 20, 2006

町内会の機能の変遷

11月17日の午後、松本市の町内会長さん達のご一行が、松本市内の国道19号線の拡幅問題で、国土交通省に続き私どもの職場にもお見えになりました。

松本市内の渚交差点の周辺の数キロが渋滞のメッカで、地元としては従来から拡幅を要請していたそうですが、この数年、公共事業を抑制する県の方針もあり、渋滞解消の事業の進捗がはかばかしくなかったのだそうです。

ところで、町会長さんまでもが地元市の関係者とともに霞ヶ関を巡るということに少し意外な感じを持ちました。市町村長さんや県議会や市議会の議員さんなら見慣れていますが、地元中の地元の町会長さんまでがこの様な要請活動に乗り出してきていることに、要請活動の真剣さを感じると共に、町内会活動の本質を考える切っ掛けを与えてくれました。

放送大学の元教授で倉沢進という方がいらっしゃいますが、この方が、「コミュニティ論」というテキストを書かれています。そのテキストには、地域社会の活性化のために住民活動が如何なる役割を果たすべきかが、国内外の事例を盛り込んで分かりやすく書かれていますが、その中で、町内会の位置づけについても歴史的経緯を踏まえ解説されていました。

倉沢先生の説を敷衍すると、この様な要請活動は、現在の町内会の当然の機能だということになります。「圧力団体的機能」と「末端行政補完機能」が現在の町内会の機能であり、今回の要請活動もその機能論に添った動きということになります。

ところで、倉沢先生の「コミュニティ論」から、この町内会の機能の変遷をピックアップして次に掲げます。行政機能が完備する前までは、町内会こそが地方自治の担い手であったことが分かります。現在、「公」の機能を「官」だけではなく、NPOなどの中間組織が担うべき、との議論がありますが、ひょっとしたら、これは、昔のノウハウに学ぶ点が多いのかも知れません。そのような意味でも、以下の町内会の機能の変遷の解説は参考になるように思われます。

(日本文化と町内会)
・戦後占領軍司令部は、町内会、自治会は日本の戦争遂行の協力組織であったという理由で禁止指令を出した。
・しかし、事実上草の根で生きながらえ、日本の独立回復と共に再び一斉に登場してきた。
・欧米の社会にはこの種の団体が存在しない。
・日本の社会には、戦前にも戦後にも存在し、どの地域にもあり、ほとんどの住民を組織していることは、町内会、自治会が日本社会の大きな特徴をなす事を示している。
・町内会は、いくつかの意味で、日本の文化と社会の根底を形作っている。
・しかしこれほど毀誉褒貶評価の分かれる集団はない。
・一般市民の中には、防空演習とか非国民の非難とか、自由を拘束する組織として働いたという認識がある。
・一方で、町内会、自治会があって初めて地域社会の様々な問題処理が出きるものであり、また地方自治体が業務を遂行していく上で無くてはならない団体であるとか、コミュニティの基礎を支える集団だと考える人も少なくない。

(町内会の特性)
・町内会の特徴としては、①加入単位が個人ではなく世帯であること、②全戸の強制的な加入であること、③活動目的が多岐にわたり包括的な機能を持つものであること、④行政の末端補完機能を果たすこと、の4点であるが、これに加えて、一つの地域には一つの町内会しかないという「排他的地域独占」という要素がある。

(学校を作った町内会)
・明治前期の町内会が果たしていた機能に、明治初期に町内会が学校を作ったという事実がある。学校の敷地、校舎の建設、教員の採用人事、財政、修学援助など、現在の自治体行政の中の重要な一領域のほとんどを町内会が担っていた。
・明治政府が進めた学制発布に始まる普通教育の振興に必要な財源を明治政府は持っていなかった。
・本来町内会、自治会は、橋を架け、道を作るという仕事を自分たちの自治的な活動の一環と考えてやってきた。

(町内会の機能の変質)
・ところが、この様な活動の中核的な部分は行政が税金を使ってやる仕事になり、町内・住民はその中核部分から手を引いて、周辺的末端的部分のみを分担するようになったというのが歴史的経緯に他ならない。
・本来、住民の相互扶助的な活動の主体であり、自治的団体であった町内会が、歴史的な状況変化の中で、より正確には専門処理機関としての行政組織の確立過程で、中核的な問題処理活動から段階的に引き、現在のように圧力団体的機能や末端行政補完機能だけを遂行する状況になった。
・この様な経緯で、今日の町内会、自治会がある。


現在、コミュニティ形成という今日の社会目標の観点から、町内会をどの様に位置付けるかが大きな課題となっています。世界でも例のない社会文化遺産である日本の町内会のメリットを生かしながら、今日的な観点から地域再生の上での位置づけを考えていく時代になっているように思われます。

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