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October 14, 2006

グラミン銀行のノーベル平和賞受賞で蘇った四半世紀前のバングラ訪問の記憶

バングラディシュのグラミン銀行の設立者ムハマド・ユヌス氏にノーベル平和賞が贈られることになったと報道で知りました。

数年前にNHKのBSでこの銀行の活動を見たことがあり、とても感動した記憶があります。

私も今から25年ほど前の20歳台の若い頃になりますが、ダッカ市内にある国際下痢性疾病センター(ICDDR,B)
へのODA供与の仕事でバングラデシュを訪問したことがありました。雨期の終わりごろの訪問は、これまで私にとってバングラデシュへの唯一の訪問の機会となっています。http://www.med.nagoya-u.ac.jp/intnl-h/NewFiles/bangladeshreport.html
当時は、ダッカ市内ですら舗装も十分ではなく、少し郊外にでると、堤防が道路代わりになっており、雨期で増水したため、集落が「湖」に孤立点在し、集落間は、船で行き来するというのが人々の生活状態でした。ヒンヅー教とイスラム教の村毎にも貧しさの度合いに差があり、特にイスラム教の集落が貧しいという話を当時伺いました。日本よりも多くの人口を抱え、文盲率も非常に高く、どうやって国造りを行っていくのだろうかと、暗澹たる思いになった記憶が蘇ります。長い目で見て基礎教育を育み、生活条件を改善していくしかないと思いました。当時、日本政府がICDDR,Bに無償援助を行っていたのも、バングラデシュ国民の「国民病」である下痢性疾病の改善を図ることで国造りに資する趣旨でした。

考えてみれば、ユヌス氏が1983年の銀行設立に動いていたちょうどその頃のバングラデシュ訪問だったのでした。それだけに、何とも今回のノーベル平和賞受賞は、私も個人的に嬉しく思えて仕方がありません。

創始者のムハマド・ユヌス氏は、バングラデシュの中でも最も貧しい人々が経済的に自立できる仕組みを考えたのです。単なる「慈善は悪」で、自立心を誘う融資の手法を考えたムハマド・ユヌス氏の考え方に共鳴します。担保がないと貸さない日本の銀行、貧困層に高金利で貸し続けるビジネスモデルにより高収益を揚げている消費者金融などの実態を見ると、グラミン銀行の取り組みは、一体制度やシステムは何のためにあるのか、という原点に立ち帰らせてくれます。

アマルティア・セン教授は、「市場メカニズムが大きな成功をおさめることができるのは、市場によって提供される機会をすべての人が合理的に分かち合う条件が整備されている場合」であり、「それを可能にするためには、基礎教育の確立、最低限の医療施設の整備、経済活動のために不可欠な資源を広範に分かち合い自由に利用できること、などが実現されなくてはならない」、と指摘されていますが、ムハマド・ユヌス氏は、このセン教授の理論を無担保小口金融の中で実践し、受賞に繋がったように思えます。ユヌス氏も米国で経済学を学びましたが、母国の貧困の現状を憂い、学問の世界から実践の世界に身の置き場所を変えた方です。

翻って、現在、日本の生活保護制度のあり方などが議論の俎上に上がっており、全国市長会や全国知事会も制度改正に向けた検討を行っているようですが、受給者の自立促進に向けた制度設計が必要であるように思えます。多くの受給者が「貧困の罠」に陥っている現状がある中で、グラミン銀行の貧困層の自立に向けた成功例は、考え方の基本において我々にも端的に訴えかけるものがあります。

次のリンクはグラミン銀行の現地取材報告例です。
http://www.ochanoma.info/sc_bank.html
http://econgeog.misc.hit-u.ac.jp/excursion/00bengal/grameen/grameen.html

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