消費者金融のビジネスモデル
日比谷線を使って毎日通勤していますが、数年前から車内広告に「多重債務者の皆さんに朗報」、「多重債務でお困りの方に」といった弁護士事務所、司法書士事務所の広告が目につきはじめ、気になっていました。
山の手を通る日比谷線にはそぐわない広告だなあと感じたことを思い出しましたが、必ずしもそうではないことが分かりました。
日比谷線は、東京都目黒区の中目黒駅~足立区の北千住駅間を結び、両端の駅からは接続する東急東横線、東武伊勢崎線と直通運転していますが、ある本によると、この広告のターゲットは主として東武線沿線の墨田、荒川、足立区といった下町に暮らす住民に向けたものだ、というのです。
ある本とは、「下流喰い」(ちくま新書)という須田慎一郎氏の新刊本です。
「2000万人、200万人、20万人、1万人」という分かりやすい数字を金融行政の関係者から最近聞きました。サラ金からの借金をしている人が2000万人、そのうち多重債務に陥っている人が200万人、自己破産者が20万人、借金苦による自殺者が1万人という俗に語られる数字があるのだそうです。
主婦労働を含めると8000万人の勤労者がいる中で、2000万人がサラ金を利用しているということは、勤労者の1/4が利用者ということであり、驚くべき数字です。
この本によれば、消費者金融の想定する理想的な優良顧客像とは、「従来のデータによると、年齢は40代後半、年収は300万円程度で子供が二人おり、家計的には住宅ローンの返済の他に養育費、教育費のやりくりが最優先され、一家の主人は完全に後回し。定収と呼べるサラリーがあるものの、恒常的な金欠状態ゆえ、長いお付き合いが望める。とりあえず返済意欲もあれば、家族もいる。世間体だって考えるだろう。」というイメージだったのだそうです。
ところが、その顧客増が急激に変化し、現在は、新規顧客の71%が男性、30歳未満が44%、30歳以上40歳未満が23%で、年収も新規顧客の81%が500万円未満、その中でも年収300万円未満が42%、200万円未満が16%と、「低収入の若年男性」が主たる顧客層になっているのだそうです。
このワーキングプアーの人たちが、利息制限法を上回るグレーゾーン金利の下で月々の利子を払い続けるだけで手一杯、末永くベタ貸し状態が維持されていく、のだそうです。消費者金融業界の本音は、元利金等できちんと払い込んでくれる客よりも、月々の金利だけを払い続ける客の方が「上客」なのだそうです。サラ金ビジネスからいうと、顧客として「持続性」がある方がよいのでしょう。
こうした消費者金融の分野に、これまでは考えられなかった三菱UFJフィナンシャルグループや三井住友フィナンシャルグループなどのギガバンクも進出し、高収益の見込める消費者金融が今は注目の的なのだそうです。
そうした消費者金融のビジネスモデルが「悪魔的ビジネスモデル」としてこの本で分かりやすく描かれています。多重債務者が350万人にも上っているとの調査も明らかにしています。増殖するヤミ金や弱者が弱者を食い物にする「下流喰い」の実例などもルポルタージュ形式で生々しく描かれています。
以前、伊藤忠商事の丹羽宇一郎氏の所論として、「公共投資抑制の議論も、格差拡大の要因になりうる。日本の公共投資はGDP比5%前後とまだまだ水準は高いが、公共投資は雇用対策の側面もあり、単純な削減議論は雇用面のセイフティーネットを危うくしかねない。現に、欧米では効用対策のセイフティーネットを作るのにGDP比3-4%を費やし、公共投資と合わせるとほぼ日本と同水準のGDP比となる」、との分析を紹介しましたが、従来公共事業で吸収していた労働力の振り分け先が定まらず、雇用対策も不十分で、一定の給与水準の雇用が確保できない中で、所得格差がサラ金という網に吸収されていく実態があるとしたら、それは見過ごすことの出来ない大きな問題です。
政府はこうした実態もしっかりと把握して格差拡大の影響緩和のための政策を作って行かなくてはなりません。
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Comments
クレジットカード現金化比較と
ショッピング枠現金化比較よろしくおねがいします。
Posted by: クレジットカード現金化比較 | December 18, 2009 04:15 PM