他山の石とすべきリーダーの姿勢
7月22日の土曜日は、日帰りで金沢市での結婚式に出席してきました。私が役所の採用担当であったときの採用により入省した平成9年度16名の幹部候補生の一人が入省後10年目にして漸く結婚したおめでたい席で、乾杯の発声をさせていただきました。
職場結婚であり、新郎新婦が共に県庁勤めのため、主賓は谷本正憲石川県知事さんでした。知事さんは、秘書であった新婦が結婚するに至った経緯を、詳細に語られておられました。知事が知らぬ間におめでたい話が出来上がっていたということでしたが、新郎は、同期からすると、この手の話に関しては、「サブマリン」というあだ名が付くほど機密保持が厳重で、周囲も話がまとまる直前まで知らなかったようです。
31歳と24歳の、ほかほかのカップルで、私も20年前の自分の姿を思い出しました。この様な姿を見ると、初心に帰らなければならないとその都度思います。
ともあれ、仕事は元より、幸せな家庭を築いて欲しいと願わずにはおられません。心の中で、「今が一番幸せだと思って一日一日を大事にして欲しい」と新カップルに語りかけました。
ところで、羽田空港から小松空港に行く途中で、諏訪、松本、上高地上空を飛びました。梅雨の雲間から北アルプスの一部が顔を見せていましたが、大雨で溶けたのか残雪は少なくなり、ダムはこのところの大雨で一杯でした。そして沢沿いに土砂崩れの後も目につきました。また、小松空港近くの手取川の濁流が、日本海の沖まで押し出して、海を茶褐色に染めていました。このところの大雨の影響を想像させました。
知り合いの東京電力の松本事業所の関係者からメールがあり、「先週末からの記録的な大雨で、梓川では昭和44年に大型ダムを作って以来、2番目の流入量(最大750t/s)となるなど、緊張した対応をしています。テレビ、マスコミ等でも取り上げられている天竜川の決壊箇所にある送電鉄塔の内1基は東京電力(もう1基は中部電力)のもので、現在も倒壊防止対応を続けているところ」、とのことでした。
長野県では、梓川・犀川水系で堤防の決壊という事態はありませんでしたが、梓川の複数のダムが流量調整を行い、下流に流れ込む水量を減量していたことも忘れてはなりません。見えない機能を無視してはなりません。ダムの在り方に関しては、様々な議論もありますが、悪い面だけをスローガン的に取りあげることは、建設的な議論にならないように思えます。
今回の梅雨災害を見ていて、災害時の防災責任者の在り方をよくよく考えさせられました。某県の知事は、一時期、天竜川の中流域のある村に住居を構えていました。山村に住もうとすること自体は立派な考え方だと思います。しかし、県都までは、数時間かかる距離です。仮に、いまだにその村から通っていたとしたら、今回の災害では、救出する側ではなく、救出される側に廻り、防災責任者として何をやっているのだと、致命的な批判を受けたかもしれません。ヘリコプターも、雨天は飛べません。トップリーダーには、危機管理という大事な役割があることをおろそかにしてはならないのです。
県議会をはじめとして、多くの方から批判を浴びて、その村を引き払ったのは、本人にとっては忸怩たる思いだったようですが、結果的に政治的に命拾いになったと思われます。何が幸いするか分かりません。
しかし、それでもその知事は、現在はやはり県都から60キロ以上離れた町から新幹線で通っています。自らはその新幹線建設に反対運動をしてきたその新幹線で。仮にその町と県都の間の千曲川が増水し、新幹線が止まったら、県都にすぐに駆けつけられない知事として、やはり批判を浴びたことでしょう。
現在その県では、知事選真っ盛りですが、新人候補は防災大臣経験者として、当然のように県庁所在地に住居を構えました。当たり前の話です。くどくどと説明をする以前のレベルの話です。その知事が6年前の当選直後、欧州に秘書も連れずに私的旅行に行ったことがありました。しかも、当時は、副知事もおかずに。その時に災害が起こらなかったのは、本当に幸運でした。しかし、長い目で見ると、天網恢々粗にして漏らさず、です。
更に敢えて付け加えれば、知事選の最中、職務代理もおかずに、中途半端に災害対応と知事選挙をやるのは、余り感心できることではないように思えます。私も、昔、危機管理を仕事としていた立場から言わせていただければ、疑問を感じます。法律上は問題がないのですが、議論の余地ありです。
因みに、災害対応には、消防・警察関係者、市町村、地元県議、地元国会議員、国との日頃からの意思疎通も欠かせません。いざというときに、わだかまって対話が出来ない関係では、県民の安全・安心確保の観点から、とても心配になります。
以上のことを、披露宴の乾杯の席で申し述べようと思いましたが、お祝いの席にふさわしくないので当然遠慮しました。しかし、若い後輩の諸君には、行政の責任者の日頃からの心構えといったものを、せめて他の事例を他山の石とすることで、大いに参考にして欲しいと思い、控え室では話をしたところです。
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