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April 29, 2006

学生諸君への誘い

少し前に、結婚披露宴でのエピソードをご紹介しました。新婦のお父上が、ご挨拶にお見えになった際に、「役所の採用って結構重要ですよね」とお話になられましたので、「いえ、採用が全てです」と申し上げると黙って頷いておられたエピソードです。官でも民でも同じですが、組織にとって、最も重要なものは人材です。

私たち、役所の年長者も、少しは採用活動に貢献するために、学生向けに公務員の仕事ぶりのPRをしています。以下は私が書いた、誘いのメッセージです。どの程度の効果あるかはわかりませんが、正直な気持ちを書いたつもりです。

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三位一体改革が2005年11月30日の政府・与党合意で決着しました。私の仕事は、その事務レベルの担当責任者としてのそれでした。

2002年6月の閣議決定で、「国庫補助負担金、交付税、税源移譲を含む税源配分の在り方を三位一体で検討」することとされて以来、3年以上に亘り議論してきた結果が政府・与党合意です。この間、国庫補助負担金について「4兆円程度を目途に廃止、縮減」を行い、税源移譲の規模を「概ね3兆円」と明示し、併せて、「地方公共団体に対し、国庫補助負担金改革の具体案をとりまとめるように要請」しました。

三位一体議論は、こうして「目標」と「手法」が示され、政府・地方公共団体を巻き込んでの大議論となりました。3年余の議論の結果は、4兆円を大幅に上回る補助金改革、3兆円超の税源移譲が実現することになりました。しかしながら、税源移譲の「原資」となった補助金負担金改革の有り様に関しては、内容的に問題が多いとの指摘も多々あります。3兆円規模の税源移譲が達成されたことなど、地方公共団体側から評価された一方、地方の提出した補助金改革案の実現度合いが低い点などが評価されない点でした。

当然のことながら、霞ヶ関では、この地方の評価とは全く逆の評価になっています。補助金を重要な政策手段として施策を実施してきた霞ヶ関にとっては、補助金を財源に地方に税源移譲を行うことは、本質的に反対なのです。

今回の三位一体議論の中で、補助金改革、税源移譲というアウトプットとは別に、重要な副産物がありました。地方が国の求めに応じ自ら国に対し税源移譲に結びつく補助金改革案を作り上げ政府に提示したこと、そして「国と地方の協議の場」が設定され、地方の代表者がそれを閣僚相手に同じテーブルでの交渉で実現に結びつけたことがあげられます。このプロセスは地方分権の歴史の上で貴重な経験となっています。また、個別テーマでは、生活保護費等に関する関係者協議会の場で、厚生労働省・財務省の生活保護に係る地方負担増の論拠を、総務省・地方自治体連合が実証的手法で実質的に論破したことが特筆されます。この議論のプロセスには大きな意味があり、今後、制度改正、運営面で国と地方が関係する話し合いのモデルとなりうるものと考えられます。

地方公共団体は、三位一体の第二期改革に向けてその必要性を訴えています。冒頭の政府・与党合意でも、「地方分権に向けた改革に終わりはない」と記しています。振り返ってみると、1993年6月の衆参両院の全会一致による地方分権推進の決議から始まった政府レベルの地方分権推進の動きは、1995年の地方分権推進委員会の発足、2000年の地方分権一括法の施行、2001年の地方分権推進委員会の税源移譲を記した最終報告、その後の三位一体改革の推進といった10年以上に亘る改革の積み重ねとなり、3兆円規模の税源移譲につながっているのです。

それに至る過程で多くの反省点を残しながらも、長い目で見た地方分権の歴史の流れから見ると、大きな到達点であることは確かだと思います。今後の地方分権運動は、これまでの分権改革の実績・反省を踏まえ、新たな段階の議論に進んで行くものと思われます。総務省は政府の中にあって、国の機能と地方の機能の仕分け・調整を行う立場にあります。地方行革、公務員制度の改革、道州制の議論、地方公共団体の財源保障の在り方の議論などがある中で、国民生活に直結した質の高い行政執行を行うための地方行財政制度を時代の進展に合わせて見直す改革が目白押しです。

地方6団体も体制を整え結束し、シンクタンク機能を持ち、理論武装のもとに結束してこれからの改革に臨むことが求められます。地方分権は、自らの立場の強化の手段です。改革を確実に実現するためには、「十分に議論をし、まとまったことは一致団結して実現を求める」、という姿勢が必要です。

様々な教訓を遺し、三位一体改革は終了しました。しかし、「地方分権」というキーワードは、今後とも確実に我が国の構造改革を推し進める原動力となる考え方です。

霞ヶ関の在り方を巡っては、現在様々な議論があります。しかし、制度を作り、運営し、時代の動きに合わせてこれを見直す、という謂わば「国家の姿のデザイン」の一連の流れを組織的に担当できるのは、霞ヶ関以外にはありません。竹中平蔵総務大臣は「政策は本当に難しい。法律という強い枠組みがありつつも経済の福利厚生を最大化するという複雑な方程式を、民主主義という政治プロセスの中で解かないといけないからだ」と指摘されています。民主主義のプロセスの中で、国家という枠組みにおいて、国と地方の関係調整の分野で、自分の能力を試してみたいという若い人の意欲に期待しています。

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