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October 31, 2005

被災時に校長・教頭が学校に来られなかった理由

10月30日(日)の午後、晴海のあるホテルで全国首長連携交流会の交流事業に参加してきました。

改革意欲の旺盛な首長さんが集まり、分科会に分かれ議論するものです。私は、教育と防災の関係分科会に参加しました。

新潟中越地震の体験を踏まえ、森民夫長岡市長が、説得力のある話をされていました。森市長は、「中越大震災」(ぎょうせい)という地震体験記を最近まとめられました。

中越地震の際に、校長・教頭が学校所在地にいなかったのだそうです。いざというときに、子供のケアーの責任者が学校所在地にいない。何故かというと、その「淵源は人事権に」あり、というものです。

教員の人事権は政令指定市を除くと都道府県にあります。都道府県は全県に亘って人事をするので、その地域出身でない人も赴任します。その結果、学校所在地外の自宅から通う教員が増えてきます。

平時はそれでよいのですが、非常時に学校に行けない校長・教頭が出てくることにもなります。

森市長は、その点をとらえ、災害時に子供のケアーが出来ないような体制でいいのか。やはり、人事権を都道府県に委ねておくのがよいのか悪いのか、非常時の体制を考えながら議論しておく必要がある、という問題意識です。

「学校は地域社会とともにある」、と口で言うのは簡単だけれども、非常時にそのことが実行できないようでは、なにをか言わんや、という指摘です。

縦割り組織の弊害が、非常時には如実に表れます。教育委員会は、災害時の対応を普段十分には考えていません。また、行政委員会制度は、責任の所在が不明確であり、機動的な対応の点で、やや問題があります。学校教育で防災教育を実践しようとアプローチを試みても、学校の現場や教育委員会の意識はまだまだ低く、現に、NPOなどの防災教育実践プログラムに参加する教員や教育委員会関係者は非常に少ないというのが実際です。

森市長は、義務教育制度の改善点に関し、たとえば教育委員会制度や教員の人事権にまつわる問題点を、災害時の対応の在り方といった実例に基づき、分かりやすく訴えていくことが必要ではないかと、問題提起されておられました。

普段意識していない潜在的課題が、災害というトータルの行政対応を求められる時点で初めて明らかになる、ということはよくあることですが、義務教育制度の在り方に関しても、被災体験市長ならではの斬新な視点をお示し頂けました。

石田芳弘犬山市長は、「小中学校は地域の象徴だ。それが無くなったら地域コミュニティーは崩壊する。市町村は、地域の子供にかこつけて、住民の求心力を保っているのが現状だ。子供は地域社会の遺伝子だ、という気持ちで地域社会の教育力を高めなくてはならない」という発言をされておられましたが、その視点とともに大変勉強になりました。

中央教育審議会では、義務教育における国の役割が重要だと強調していますが、もともと子ども達の教育は、子供が地域社会の遺伝子を受け継いでいるという認識の下、どんなに貧しくても地域が真剣に担ってきた歴史があります。米百俵の話は長岡市の話ですが、他にも、明治維新で幕藩体制が崩壊したときに、京都の町屋の人たちが、これからは人材育成だということで、自前でお金を出し合って、教育施設を多数作ったという記録もあります。

福沢諭吉先生はそのことを感動をこめて報告しておられます(「京都学校の記」)。
・国の学制公布をまたず、明治2年に開始された京都の学校作りは、東京遷都に対抗して、人材育成により京都の再建を図ろうとするもの。
・市中には64の学区があり、中学4校、小学64校、合わせて15892人、中学では外人教師も雇用。
・小学校の設立費用は「官」と市中の富豪が折半、加えて各区の戸毎に一様に運営費用を賦課。資金の出納は区の年寄が管理し官員は一切関与せず。
・「小学校の教師は官の命を以て職に任ずれども、給料は町年寄の手より出るがゆゑに、其実は官員にあらず。」

国を頼ることのない、自立する人々の作り上げる公共空間が130年前の京都に芽を出していたのです。それを政府が国策として取り上げ普及した歴史もあるのです。

地域社会の教育に対する本能的な情熱を如何に引き出して教育力を高めるのか、義務教育が危機に瀕していると言われている中で、危機打開の方策について、国と地方の対応の在り方が問われます。

私は、団塊の世代が大量退職する中で、この方々の豊富なノウハウを地域教育力アップの手段として体系化できないものか、と申し上げました。都道府県なり市町村がそのための結節役となり得るのではないか、と。130年前の当時の京都の「年寄」の立場に、今立ちうるのだ、と。

今後、国民的なレベルで、教育力アップの議論が始まることを期待します。

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