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October 09, 2005

就労率の高い日本の母子家庭

「母子世帯の母への就業支援に関する研究」という日本労働研究機構という組織が2年前に行った報告書を読む機会がありました。


日本の離婚率は、国際的にみればまだ低いものの、近年急激に上昇しているようです。離婚した夫婦の6割に未成年の子がおり、その8割は母親が親権者となっている結果、母子世帯は増加し、平成10年には母子世帯は95万世帯と報告されているのだそうです。

母子世帯の母は日々の生活を支えるだけの収入を得る必要があるにもかかわらず、十分な技能の習得なしに就業せざるを得ない場合が多く、経済的に自立した生活が困難な者も多い中で、今後厳しい雇用情勢が続き、母子家庭の経済的自立にとって厳しさは一層増していくことが想定されます。

報告書を読んで先ず驚くことは、日本の母子世帯の母の9割は働いているということです。この数字(就労率)は欧米諸国に比較して断然高い数字なのだそうです。イギリス41%、ドイツ40%、高いとされるスウェーデンでも70%にとどまるのだそうです。母子家庭の「福祉依存症」が政治問題化している欧米とは明らかに異なる実態です。

その母子家庭の就業形態は「正社員・正規職員」が4割、「パート・アルバイト」が3割。仕事と育児を両立させるため職住接近しており、通勤時間が短いという特徴があるようです。有業者の仕事からの年収は平均値245.6万円、中央値200.0万円で、社会保障給付等を含めた世帯の平均月収は21万円。6割が現在の暮らしを苦しいと感じているようです。

4割が母子世帯になる前には働いておらず、早く収入を得たいために仕事に就いた者が多く、条件のよい就職先を求め、転職を希望する者が多いのが特徴のようです。よりよい就職や仕事上の問題解決のために、職業能力の開発向上や情報の入手について支援を求める声が強いという結果が紹介されています。

報告書では、公の行う母子世帯の母への就業支援は、単に就業率を上げることではなく、生計を維持するに足るだけの良好な仕事につけるよう援助していくことである、というもっともな提言が行われていますが、近年正社員への参入がより困難になっている雇用環境の中で、前途は厳しいと言わざるを得ません。雇用政策自体を効率一辺倒から軌道修正する必要がありそうです。

また、年金・医療に関しては、賦課方式の下で現役世代から年金受給世帯への世代間所得移転が確立されていますが、子育て世代への所得移転は遙かに少ないのが現状です。日本の社会保障制度も、対象を過去世代から将来世代へと多少とも軸足を移す努力が求められます。母子家庭対策などはその典型だと思われます。

にもかかわらず、厚生労働省は、母子扶養手当に関して、就労支援事業の対応に自治体毎に差異が就労実績の地域差に繋がると主張し、自治体に当事者意識を持たすために、児童扶養手当の国の負担率を引き下げ自治体負担率を上げる政策を主張しています。生活保護の負担率議論と同じ論理です。厚生労働省の主張自体に実証的な裏付けはないのですが、そもそもそのような理屈を持ち出すこと自体、現に就業意欲の高い母子家庭の実態、転職状況も厳しい現状からしてピントのずれた話だと思わざるを得ません。

毎年のシーリングの厳しさから逃れるためとは言え、負担の地方への付け替えで当座を凌ごうというのでは、情けないと思ってしまいます。

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