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September 10, 2005

農村活性化事業と医療費

農水省の農村振興局の関係者とともに、国営土地改良事業の現場を見せて頂く機会がありました。

長野県塩尻市の県営畑総岩垂原地区、中信平二期梓川頭首工、梓川幹線水路など、大規模な土地改良事業の現場をご案内いただきました。梓川頭首工の2期工事は、今年からの3年計画の国営事業で180億円の総工費で実施されています。55年経って古くなった取水口を取り替えるなどの事業ですが、波田町の頭首工では毎秒56トンの農業用水が、梓川の本流から用水路に勢いよく流れ下っていました。

戦時中から戦後に掛けて作られた施設は、痛みが激しく、この大規模改修に、受益農家をはじめとした関係者の期待は大きいとのことでした。上條密門中信平土地改良区連合理事長のお話も伺うことが出来ましたが、財政難の時期に何とか事業開始にこぎつけることが出来たと感慨深げでした。

梓川の水が梓川の右岸と左岸に分水され、それが幹線水路を経由して大小の堰、用水路を通じて、最終的に田畑に行き着く様は、さながら人間の血管の流れと全く同じだと思えてきます。幹線は地下のトンネルで整備されているとのこと。地上からは見えませんが、地上と地下に張り巡らされた水利施設が中信平の農業を支えているのです。初めて農村水利事業の全体像を詳しく知る得難い機会となりました。

そのあと、拾ヵ堰に沿って下り、堀金村の「ほりがね物産センター」に寄りました。何の変哲もない施設ですが、中味はなかなかのものがありました。

農業構造改善事業で作られたこの施設では、地元の農産物・農産加工品が所狭しと並べられています。長田廣組合長と堀金村大竹範彦農政係長の話では、組合員の農産物は10%、非組合員は20%の手数料をセンターに払うことで、地元産の農産物を売っているとのこと。農道脇というの良い立地条件もあり、土日で一日1500人の利用客、平日でも1000人の利用客に恵まれ、年間の売り上げは7億円近くに達し、利益も数千万円上げているとのこと。生産者の組合員もセンターでレジを打ち、買い物客との会話を通し、「マーケットの声」を直に聞いているのだそうです。

最近、このセンターの利用状況に関する外部の調査が行われたようですが、それによると、利用客は堀金村村外が圧倒的に多く、生産物を販売している農家も、数十万円から一千数百万円の収入を得ているとのデータがあるのだそうです。

「自分たちの生産した農産物や農産加工品が目の前でよく売れ、しかも、販売の場を通して消費者との交流が出来るということは、生産現場に大きなインパクトを与えている」、というのは長田組合長のコメントでした。農産物の生産者は殆どが中高年のおばちゃんなのだそうですが、今や彼女たちの「目の色が違う」のだそうです。

「放っておけば病院にでも行って時間を潰す」高齢者が、「畑に行って、消費者が喜んでくれるような野菜の生産に励み」、また、「センターのレジを打ちながら、自分の作った野菜の調理の仕方のレシピを説明し」、あまつさえ、「それが半端でない現金収入となる」のですから、自ずから心身共に健康にもなるはずです。

長野県は長寿県でありながら一人当たりの医療費が全国一少ない県として有名で、堀金村もその例外ではありませんが、その秘密の一端を垣間見たような気がしました。農村活性化の取り組みが生き甲斐に繋がり、廻り廻って、農村婦人の健康維持にも役だっているように思えてきました。

畑を耕すことでまさに物心供に豊かになる、という意味で、「堀金」という村の名を十分に体する農村活性化事業を目の当たりに出来ました。「身土不二」という言葉がありますが、この言葉以上の意味で堀金村では、土と健康が密接な関係を保っているとの感想を持ちました。

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