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August 04, 2005

日本の安保理常任理事国加盟を巡る背景

8月4日、「日本の安保理加盟を巡る背景」という演題で齋木尚子慶応大学教授のお話を伺う機会がありました。

齋木さんは、昭和57採用の外務省キャリアで、現在慶応大学に出向中。大学に来られる前は、外務省条約局法規課長として、ご活躍されておられました。大学では、外交政策、ガット/WTO、グローバルガバナンス(国際公共秩序)、国際法などを中心に研究・教育。

以下、齋木教授の講演概要です。安保理加盟を巡る理論や各国の思惑などがコンパクトに分かる講演内容でした。

(国連の位置づけ)
・ 外交政策、国際秩序づくりに必ず出て来るものが国連。
・ ひとつの国際機関として、国連はあくまで主権国家の合意に基づいて作られていることが根本。他方、ひとたび出来上がると自律的な主体として独自の動きをする。そこに面白さと難しさがある。
・191加盟国数。最も普遍的な国際機関。
・ 国連の持つ任務、目的は極めて包括的。強制措置を規定する集団的安全保障体制。国連成立後、多くの国が独立/民族自決権を謳う。また、社会、経済、文化、人権等種々の分野における問題解決と国際協力の中心的役を担うことが国連に求められている。
・ 国際の平和と安全の維持について主要な責任を持つのが安全保障理事会。その決定は全ての国連加盟国を拘束する。集団安全保障の一環として、たとえば1990年のイラクのクウェート侵略に対し、安全保障理事会は、多国籍軍による武力行使を認めた。

(日本にとっての国連の位置づけ)
・ 日本にとっての国連の意味は3点。①国際社会の平和と安全が保たれることにより、わが国にとっての国際安全保障環境が整備・強化。
・②「場」の意味。国連という場(大変包括的な問題を扱う「場」)は、情報収集、日本の問題提起、国際世論作り、交渉・協議、ルー策定等いろいろ活用できる。
・ さらに、国連は、そこで出来た決定の履行の有無をモニターする場でもある。軍事、経済制裁という強制的措置に至るまでの過程で関係国に圧力をかけることのできる場でもある。
・③特に、日本の場合に該当すると思うが、国の政策の正統性を付与するものとして重要。すなわち、何らかの政策を採るにあたり、国連決議の存在は大きい。たとえばイラク特別措置法も、国連の決義・要請を踏まえて、日本として、主体的にイラクに協力するという立て方になっている。
・ ちなみに、国連中心主義は日本の外交の三本柱。1957年の外交青書で国連中心主義、アジアの一員、西側諸国との協調、という原則が示された。
・ 国際司法裁判所判事に小和田元次官(元国連大使)が当選。その時に、条約局法規課長として「選挙」運動。その小和田さんが、日本にとっての国連の意義を語られた。「国連に対する外交」はないわけではないが、もっと重要なことは「国連の場を通じた外交」 だ。これだけの加盟国があり、かついかなる議題でも扱いうる国連の場を活用することの重要性を強調。
・ 総合外交政策局本体に国連政策課がおかれている意味は、まさにこのような認識を反映してのことの由。

(常任理事国入りを巡る議論の背景)
・ 安全保障理事会常任理事国入りをめぐる背景について。安保理改革の動きがこの十数年ある。何故今改革なのか。端的には、現在の安保理が期待された機能を果たしていない、ということ。今日の国際社会においては国家間の戦争以上に国内紛争・地域紛争・民族紛争が、大きな問題。また、貧困、感染症問題、環境などの地球的規模の問題、テロ、大量破壊兵器の拡散など、新たな脅威が山積。こうした状況に安保理がきちんと対応できていないという問題意識がある。
・ 2003年の第二次イラク戦争の際には、安保理が亀裂。これを受けてアナン事務総長は、国連総会で、一方的主義、即ちアメリカ、を非難しつつ、それだけでは問題解決にならないと演説。「国家が先制攻撃の権利を有しているという国」を非難すると共に、 「特に脆弱であると感じている国」の懸念に対して正面から対処しなければならない、集団的な行動を通じて懸念に対処できることを示さなくてはならない、として、緒方貞子氏もメンバーとなるハイレベル検討委員会が設置された。同委員会の任務は国連強化のための改革を提言すること。ここに安保理改革の機運が再び出てきた。
・ 現在191の加盟国で、安保理常任理事国5、非常任理事国10。設立当初は、51カ国で、常任理事国5、非常任理事国は6カ国。加盟国の増加に見合った理事国数になっていない。なお、1965年非常任理事国の数が10に増えたが、常任理事国の数は変わらず。1965年当時の加盟国は118。
・ 日本は、分担金2割の負担。米国に次ぐ割合。他の4常任理事国の分担金の合計以上の負担を日本は負っている。もちろん財政的な面だけではなく、PKOやODA、政治的なリーダーシップ等含めて、日本としては、国際社会において占めている地位にふさわしい位置づけを国連、なかんずく安保理において占めたいということ。
・ 1970年代初頭にも日本は、国力の高まりを背景にそういう発言をしていたが、冷戦終了後1992年ころから、国連を新しい時代に見合ったものに変革すべく、国際社会全体としても改革に向けての動きが強まって来た。

(ラザリ提案とコーヒークラブ)
・ たとえば、PKOで有名なガリ事務総長の1992年の「平和への課題」でも、95年までに安保理を改革すべしとされている。1993年末から国連に安全保障理事会の改革に関する作業部会が設立され、議論本格化。1997年には、常任理事国を5カ国増加等の内容のラザリ提案。同提案は、拒否権の取り扱い以外は、ほぼ日本の主張そのままで、翌98年頭には決定を提唱。
・ ところが、その時、コーヒークラブが常任理事国増加に反対。パキスタン、アルゼンチン、イタリア、カナダ,NZ、メキシコなど。何故反対か。例えばカナダは、米国の存在故に絶対に常任理事国になれないから、常任理事国の枠拡大には反対する。ニュージーランドは、そもそも現行制度に批判的で、P5の拒否権その他特権を剥ぎたいとすら考えており、悪の上塗りはできないというところ。いわば平等旗印の理想主義。イタリア、パキスタン、アルゼンチンは同じ地域のライバルが常任理事国になるのは耐え難い、という、特定の国が常任理事国になることを反対する立場。イタリアはドイツを、アルゼンチンはブラジルを、そしてパキスタンはインドを睨む。こうした国の集まりであるコーヒークラブの猛烈な運動の結果、ラザリ提案は葬り去られた。その結果、安全保障理事会改革議論は一時下火に。

(アナン提案とコンセンサスグループ)
・ しかし、アナン演説を踏まえ、国連改革の気運が高まる。ハイレベル委員会は、昨年末の報告書において、Aモデル、Bモデルを提示。5カ国の常任理事国追加、あるいは準常任理事国(拒否権なし。再選可能)創設等の提案。
・ 今年3月「より大きな自由に向けて」とのアナン事務総長報告は、安保理改革を含め、改革について提案。今年の9月での決断を促している。アナンは日本の常任理事国入りを支持。
・7月には、G4(日本、印、伯、独)が、常任理事国の6増及び非常任理事国の4増との提案。アフリカ連合(AU)は、常任理事国6増、非常任理事国5増の提案。両者は、拒否権に関し、立場が異なる(G4は暫くの間自制。アフリカは新常任理事国も拒否権を使えるとの提案)。G4はAUと何とか折り合えないか、と種々調整を試みているところ。他方、かつてのコーヒーグループは、いまやコンセンサスグループとなり、常任理事国は増やさずに、再選可能な非常任理事国を地域代表として10増やすという提案を行っている。
・米国は、常任理事国を7迄増大、という考え。日本の常任理事国入りを強く支持しており、後もう1カ国OKということ。なお、かつて米国は、全体として安保理の構成は21が上限と主張していた。その後日本の働きかけにより、21よりも若干増やしても良いということに変更。これは大きな意味があった即ち、多くの国を巻き込むためには一定数以上の増大が必要で、21では話にならない。ところが、今、再び20以下、という立場に戻ってしまった。
・いくら日本を支持といってくれても、全体枠がそう増えないと他の国は支持してくれない。つらいところ。
・ラザリ提案が葬り去られた歴史が繰り返されるのか、との懸念。コンセンサスグループは、「180カ国の犠牲のもとに自らの利益を図ろうとしている4カ国(日、独、印、伯)」との演説までも行っている。確かに、常任理事国が増えてもその直接の恩恵をこうむるのはごくわずかな国。その意味で、大多数の国は、よくて無関心、或いは反対、ということになってしまう。
・アフリカが大票田(56ヶ国)で、G4とコンセンサスグループが綱引きをしている。コンセンサスグループは、同グループの提案でも、アフリカの2カ国が[再選可能な非常任理事国]になりうるので、まさにAUの立場と合致すると主張。しかし、コンセンサスグループ提案のいやみは、理事国が完全な地域代表となってしまい、再選可能かどうかも、それぞれの地域のポリティックスで決まるということ。たとえば、アジアの中で日本が再選可能な理事国になりうるかというと、中国、韓国の現在の発言等を踏まえれば、なかなか厳しいというのが率直な見通し。

(各国の思惑)
・G4提案は、残念ながら現在旗色が必ずしもよくないと言わざるを得ない。図式としては、P5は既得権益を脅かされたくない。他の国は良くて無関心、ないしは反対。そういう中で、しかし、結局のところ、日本がイニシャティブをとって頑張らなくてはいけない。そうでなければ、何も変わらない。
・他方、頑張れば頑張るほど値段が上がるのも事実。欲しがりすぎるのは交渉戦術としては宜しくないかもしれない。しかし、熟柿主義もどうか。そう甘くはないだろう。要するに味方作りが大切。パワーを持っている米国をより陣営に惹きつけるとともに、多数派工作も引き続き重要。国際公共利益といった大義、正当性のある議論を展開する必要。
・8/22に国連において8月の総会のための準備作業が開始されるので、そこから再度仕切直し。その結果がどうなるかを現時点で見通すのは困難。なかなか難しい情勢が見込まれる。

(安保理メンバー追加手続き)
・安保理メンバー追加を決定する際、とりあえず安保理の決定はいらない。国連憲章改正の問題なので、総会の決定事項。加盟国の2/3(128カ国)以上の賛成で行う。他方、第2段階として、効力発生のためには、当該決定につきP5を含む加盟国の2/3以上が批准することが必要。
・ 安保理メンバーに加わらない場合、重要事項の決定に関与できなくなることがデメリット。情報収集の面でも、大変不利益。内々の相談はあるにしても、やはり日本の国力に見合った地位(常任理事国)がほしい。
・貧困、開発の問題に関し、これまでも日本はリーダーシップをとってきているが、安保理に入れば、より実効的に動ける。

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