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August 31, 2005

湧水井戸の管理に見る住民自治

「源智の井戸」のことを、井戸の近くに先祖代々住んでいる友人に尋ねたところ、普段何気なく見逃していることを認識することができました。

「源智の井戸」のすぐ近くの北上に住み、井戸の井の字を苗字に用いている友人のIさんの話は、興味深いものでした。美術館にお勤めのOさんのコメントで補足した話を以下紹介します。

・源智の井戸は一時期枯れていたが、町内の青年部で掘り返して再びあのように豊かな水が湧き出るようになった。
・その後周囲を整備して市民の憩いの場所となった。現在では近隣はもちろんかなり遠方の人も「もらい水」に来ている。朝から夜中まで車が止まっている。
・パルコのある伊勢町通りに流れている小河川の上流は、うちの町内を流れているが、もとは各戸から流れ出る井戸水がほとんど。
・もともと松本市の水道は源地の井戸が水道水の供給源だった。美術館西にミニ公園として整備されている水道水源「源池の水源」は、城山に貯水池ができて以降も現役で活躍。現在は松塩筑水源の水とブレンドされ、各世帯へ配水。地下水としての成分は薄められているが市内の水道水がうまいといまでも評判なのはこのためではないか。
・我が母屋は今でも井戸水のみ。現在住んでいる家は水道を引いているが、飲料用に井戸水を引いてあり、お茶、コーヒーなど一味違ううまさ。
・私の家には全部で6箇所井戸がある。近所の昔からのお宅には一つは井戸がある。芸術館、美術館の工事に伴って井戸がかれることが心配されたが、幸いというかかえって順調に井戸水が湧いている。
・水道料金はかからないが、井戸の量によって下水料金を負担。
・松本の中心部には昔から井戸が多く、個人宅の井戸は美術館の周だけでも400箇所以上はある。今はその片鱗しか垣間見ることはできないが、昔はそこかしこに清水の流れる美しき街だった
・年2回町内の河川清掃がある。パルコ前を流れる「はんのき川」の上流域を毎回掃除。以前松本市内のご婦人の会が、あまりのきれいさに魚を放流。魚は瞬く間に流されたものの、草木の成長は逞しく、毎度毎度すっかりかりとってしまうのだが、しばらくすると水草をはじめさまざまな草木が生い茂ってくる。水のもつ生命力を感じる。
・本町通りのわき道に人形の街として有名な高砂通りがある。この通りの改修計画があり 側溝の蓋を剥がし、川の流れが見えるような通りにする予定がある。狭い道だが風情の有る景観になると歓迎。
・全国水景色の有る街がたくさんあるが、松本も女鳥羽川が市内を流れているというだけでなく、涌き水の街として整備されていくようだ。

湧き水の井戸を中心に人々の営みが続いてきたこと、それを地域住民の力で復活させ管理していること、その営みを市の当局もまちづくりのコンセプトに生かしていることが、淡々と語られています。遠方の人々までがその恩恵にあずかっているという、溢れ出る水の「スピルオーバー」効果も紹介されています。

松本市役所のホームページを覗くと、そこにも「源智の井戸」のことが書かれています。
http://www.city.matsumoto.nagano.jp/daisuki/miryoku/karuta/karuta_i/

それによると、松本は、女鳥羽川と薄川のつくる複合扇状地の上に市街地が形成されており、その地下水が各所に湧いて、飲用水、堀の水、酒造りの水、染物を曝す水、生糸をとる水などとして何百年も親しまれてきたのだそうです。「源智の井戸」もその一つであり、天下の名水として「善光寺道名所図会(ぜんこうじみちめいしょづえ)」という江戸時代出版の本にも紹介されているのだそうです。現在、松本市ではこれを市の史跡として指定しているそうです。

東京に戻り、職場の仲間との懇談の中で、水の議論がひとしきりありました。私どもの職場でも、水道事業に関わりのある部署があります。我が国では地方公営企業で営まれていますが、民営化の議論があります。過日、NHKの番組で、米国で水道事業を民営化したところが、その企業が買収され、M&Aの繰り返しで、結果的にドイツの多国籍企業がその村の水道事業を支配し、水道料金値上げ、サービス低下に音を上げた村が数百億円をかけて買い戻すための交渉と住民投票を始めたという番組でした。

水は誰のものか、命の水を他人に支配されていいのか、という訴えが番組の中で語られていました。水資源の制約の問題が国際的な関心の的になっているようですが、「源智の井戸」の管理の歴史を認識するにつけ、水管理の問題は住民自治の原点でもあることを改めて感じた次第です。

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Comments

消防団員は多面的な意味で地域社会の守りですね。今度、そのおいしい水を頂戴したいですね。源流地域を再訪問しますので宜しく。

Posted by: むーさん | September 01, 2005 at 02:14 PM

私の住む地域は川の源流です。この地域(100戸)の水道は、その源流の伏流水を利用した簡易水道です。以前はこのあたりの山々を隣の地域と共同で管理していましたが、私たちの先人が土地よりも水が大切と、山を」隣村の譲り、水源を確保したと父から聞きました。わが村でも、村営水道が完備していますが、わが地域だけは決してかれることのないおいしい水を利用しています。そしてその管理は、なんと地元の若い消防団員たちが伝統的の行っていますよ。

Posted by: ko | September 01, 2005 at 08:51 AM

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