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August 20, 2005

野辺山高原のガットウルグアイラウンド対策施設

川上村の翌日は、南佐久郡南牧村を訪ねました。野辺山高原を抱える人口3500人の村です。
http://www.minamimaki.or.jp/

南牧村海ノ口の温泉宿に泊まり、重曹泉の湯舟にひたってきました。温泉自体はぬるいのですが、体がぽっぽと暖まって湯冷めしません。隠れた名湯かも知れません。

海ノ口温泉からすぐ近くに南牧役場があり、助役の井手孝幸さん、総務課長の吉澤嘉七郎さん、保科千丈参事(県庁からの研修)のお話を伺うことが出来ました。午後は、中島村長にもお会いできました。

野辺山高原は元々開拓村で、戦後満州からの引き揚げの入植者を多く受け入れたのだそうです。昭和30年代後半になり、西武系の別荘開発で首都圏の人たちの憩いの場となり、1000坪に区切られた別荘地に別荘が1000軒ほど集積しているのだそうです。この別荘から上がる固定資産税で南牧村の地方税は確保されています。

吉澤総務課長は、ご先祖が元々川上村から来られたようですが、新しい入植地は、それこそ満州からの引き揚げで出身地は全国に散らばっており、苗字も多種多様だということでした。

白菜、レタスなどの野菜栽培、酪農が盛んだということです。そのことは野辺山の景色からも分かります。広大な海ノ口牧場、八ヶ岳牧場などがあり、広大なパノラマに気宇壮大になります。

農用地が多いため、空いた空間に別荘開発や観光開発がパッチワークで入り込み、野辺山全体としての土地利用が不自然な形になっているという村当局の思いもあり、現在村全体の土地利用条例の策定に取り組んでいるのだそうです。その中核となって活躍しているのが、県庁からの研修生の保科参事です。保科さんは研修生と言っても、壮年のバリバリの働き盛り。県庁でいったら課長補佐くらいでしょうか。そういう人材を3年間も研修生で村役場に給料県庁持ちで派遣できるのですから県庁には人材に余裕があるようです。いずれにしても、町村の現場で活躍できる保科さんは、明るく頑張っておられます。村の職員からの信頼も絶大のようでした。

南牧村には八ヶ岳への登山口があります。吉澤課長の話では、横岳まで2時間半、赤岳まで縦走し、何とか一日で野辺山まで戻ってくることが可能だということです。資金不足で補修が不可能になった林道を村が林野庁から買い取り、少しづつ整備をしているのだそうですが、延長距離が長く、財政難が悩みの種のようです。

八ヶ岳山麓から、反対側の飯盛山に展開すると、国立天文台があります。直径48メートルの大展望台ほかいくつかの展望台があり、一時期は観測のメッカだったようです。今ではハワイに観測の拠点が移り、こちらの機能は若干落ちているようですが、それでも回りを威圧する巨大パラボラアンテナが宇宙を睨んでいます。

飯盛山登山口にパーキングエリアがありますが、そこからの八ヶ岳の眺めは絶景です。明治の時代にナウマン博士がこの地域を旅行し、八ヶ岳と南アルプスに挟まれた地形を睥睨し、「大地溝帯」(フォッサマグナ)という発想を思い立ったという話を吉澤総務課長から伺いました。

八ヶ岳山麓で牧場として活用されているのが南牧村、その南西の山麓は森が大部分でこの部分は山梨県に属します。その中に林間学校が沢山あるのが見えます。首都圏の学校が林間学校を設置しているのです。林間学校に来ているこども達が一度は南牧村の飯盛山方面に足を伸ばしすのですが、トイレがないのが憾みで、その要望が強く、辺地債を活用し、パーキングエリアにトイレと案内所を作ったのだそうです。

「山梨県内の林間学校の生徒用だったら、山梨県と折半して施設をお作りになったら如何でしたか」と吉澤課長に申し上げましたが、意外な話を聞いたという顔をされ、笑っておられました。

展望台の近くに、農村文化情報交流館という天文台の展示機能を兼ねた村立の施設があります。村で多分最も立派な施設です。ガットウルグアイラウンド対策施設として、経済対策で急遽作ったものでした。「今の時代であれば身の丈に過ぎると言われても仕方がないかも知れません」との言葉が吉澤課長からありました。農林省が予算を要求し、財務省が査定し、自治体に要請して行った事業です。この地域のほかの町村にも類似の施設がいくつかあります。今になって、「地方には無駄な箱ものが沢山ある」と東京の財政当局者は指摘しますが、この様な施設は国策経済対策で実現したものが多いということは意外に忘れられがちです。今になって、その責めを地方にだけ押しつけるような議論は、「二階に上げておいて梯子を外す」と地方の不信感を増すだけです。野辺山で清涼な空気を吸いながら、そういうことを思った次第です。

南牧村役場の職員も、殆どが野菜農家を兼ねているようです。朝早く作業をし、役場に出勤し5時に仕事を終え、また農作業、という生活パターンです。保科参事の話では、「役場で野菜を作っていないのは私くらいではないでしょうか。」。役場の職員は、そういう意味でも忙しいのです。ひょっとしたら、合併といった、組織全体をひっくり返すような仕事は、日常業務が手一杯でなかなか出来ないのかも知れません。

合併に関しては、南牧村の村民は85%が反対だったそうです。「川上村よりも税収がいいので、合併すると南牧村は損をする」という趣旨の主張が村民に浸透したようです。その南牧村も税収の2倍以上の地方交付税により村の財政を維持できています。長期的視点に立った展望がこれから求められるように思われます。

南牧村は、難視聴対策で導入したケーブルテレビの更新時期を迎えているようです。小学校の統合も課題のようです。福祉施設や廃棄物処理施設を作る需要もあり、どのように資金づくりをすべきか悩みが大きいようです。国土交通省のまちづくり交付金を活用し、5年間でこれらの事業を実施していきたいと構想があるようですが、総額20億円の事業の4割を国のまちづくり交付金で賄うとして、残りの財源対策も課題です。国土交通省の交付金が、本来国土交通省の所管外の事業に活用できるというのも「三位一体改革」の意外な効果ですが、現在ケーブルテレビは住民が無料で利用しているものを、更新にあわせ、有料化により受益と負担の意識を住民の皆さんにも持ってもらう必要があるという認識も村当局にあるようです。

行政サービスは何でも無料という時代はもう終わりにしなければなりません。合併問題や地方自治の有り様は、住民の意識改革も重要なのだと再認識しました。


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