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July 16, 2005

穂坂・前志木市長の心機一転再チャレンジ

前の志木市長の穂坂邦夫氏が、6月30日に市長を一期限りで退かれました。穂坂氏は、教育改革や行政改革の実践行動市長として全国的にも名が知られており、何故一期で勇退されたのかよく分かりませんでしたが、引退後も地方分権の推進に携わるお考えをお持ちで、「地方自立政策研究所」というNPOを立ち上げ、引きつづき精力的な活動をされるようです。

私は少し前に霞ヶ関のエレベーターで穂坂市長とお会いしたことがあっただけの縁でしたが、たまたま知人から「激励会」のご案内を頂いたことを機縁として、昨晩その集まりに出掛けてきました。

実はその穂坂氏が、最近、「教育委員会廃止論」という超過激な表題の本を書かれたこともあり、その中味に関してお話を伺えるよい機会と考えたこともありました。

穂坂氏は、教育委員会は教育の政治的中立を保障する制度などといっても、実際のところ国の役所が大臣が政治任命でそうなっていないのに、地方の教育委員会だけにそのことを求めても仕方がないとおしゃられておりました。私の方から、千葉大の新藤教授も同じことを言っておられます、と過日の自治学会のシンポジウムの模様を以下の通りお話ししました。

<新藤教授の発言抜粋>
・義務教育は、「教育面の国家機能の発現」であるとの設定がそもそもおかしい。
・主体は国、客体は国民という発想からはおよそ教育の分権議論は出てこようもない。
・教育行政の命題が一般行政からの独立といってもその頂点に立つ文科省が内閣の一員であることはどう説明できるのか。
・義務教育負担金廃止は教育の分権化のいわば入り口である。
・もともと戦後の省庁改革時に文部省は存続出来ないと覚悟した。中央教育委員会とせいぜい学芸省というような形での存続を目指したのが何故か文部省は生き残った。
・そもそも、国民は今の国庫負担の現状を知らない。義務教育費は全額国が負担しているとすら殆どの人は思っている。公立高校にも国費が入っていると思っているのではないか。実際に、1/4位しか国費が入っていないなんて知らないでいる。せいぜいその程度の話なのだ。

これに関しては穂坂氏は、頷いておられました。

一方で、穂坂氏が、義務教育費の国庫負担を廃止すると義務教育財政に関する権限が文部科学省から総務省に移るという趣旨の文章を書かれておられることに関して、「それは誤解があります。基本的に国が財政負担していない高等学校で必要な行政需要も、警察行政で必要な行政需要も、現在総務省で各省から積算のご要請を受け積み上げていますが、だからといって高等学校や警察の行政内容に総務省がコミットしているということはありません。個別行政の中味と財政の裏打ちは相互に関係はありますが、財政屋が内容に口出しするような話にはなりません。義務教育費でいえば、1/2の負担金を受けて、残りの教職員の給与の1/2を所要一般財源として積み上げるのか、負担金廃止により給与費全額(2/2)を所要一般財源として積み上げるかの違いに過ぎません。現在と比べて総務省の作業量は変わらないのです。」と申し上げました。

話はして見てはじめて通じるものだと思った次第です。

ところで、穂坂氏が市長をなさっておられた志木市は、有楽町から地下鉄で45分、人口67,000人、予算174億円の典型的なベットタウンです。穂坂氏は、市民がオーナー、市長がシティーマネージャーと位置づけ、「市民が創る市民の志木市」を基本に「持続する元気と安心のまちづくり(21世紀型村落共同体)」を目指して市政を運営されてこられました。

全国初の25人程度学級やホームスタディー制度、第2の市役所と呼ばれるすべて公募の市民委員会、市民と協働し市民と市政の一体化とローコストの自治体、元気な志木づくりを目的とした地方自立計画
http://www.city.shiki.saitama.jp/html/topics/chihoujiritsukeikaku.html
に基づく「行政パートナー制度」など、住民自治の実証と「地方の自立、21世紀に適応できる自治体づくり」を目標に様々な施策を展開されてきました。

「インターシップ生」の受入というものも、市長就任時から様々な形で行い、公務員を目指す人、政治家やNPOへ進出を計画している人などが、市長の記者会見などにも同席していたのだそうです。

教育問題に関して言えば、25人「程度」学級の導入、ホームスタディ制度の設立など、先進的な取り組みをし続けるなどの実践を踏まえ、穂坂氏の頭の中で浮き彫りになってきたのが、教育委員会制度の在り方であり、これこそが活性化しない教育問題の元凶なのだと、穂坂氏は断言します。文部科学省、都道府県、市町村の3つが複雑に入り組む現在の教育制度を、教育委員会という視点で考え、現行の教育問題の再生を訴えておられます。25人「程度」学級を実施する際にも、この「程度」という言葉を入れることを教育行政当局から強く求められたのだそうです。

市長在任期間は短かったけれども、問題意識に満ちた多くの改革が進んできたようです。後継の市長さんは、この流れをどう引き継ぐのか分かりませんが、穂坂氏のお話をあらためてゆっくりと伺う機会を得たく思いました。

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