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July 15, 2005

生活保護率の地域格差

[三位一体改革]「『生活保護』の税源移譲を進めたい」という表題で7月15日の読売新聞社説に接しました。

「削減の柱は、学校や公営住宅など公立施設の整備に関する補助金5200億円だ。これらが税源移譲されれば、国の厳しい規格に縛られずに、実情に合った建設方法が採用できるなど、地方の裁量はかなり拡大する。施設整備費の財源は建設国債である。財務省は「国債発行という借金で裏打ちされた事業の補助金を削減しても、地方に移譲する税源はない」と反発する。しかし、建設国債も、結局は税金で償還される。他の補助金と区別する理由にはなるまい。」

という論には大変心強い激励を感じます。

一方で、

「昨年、暫定的に決まった義務教育費国庫負担金制度の一部、8,500億円の削減を、既定路線として受けとめていることだ。だが、三位一体改革の全体像では、義務教育費の扱いは最終的に中央教育審議会で決めるとされ、事実上の継続審議となった現在、自治体代表も加わった中教審の特別部会で検討中だ。これまでの議論では、制度の維持を求める意見が大勢だ。税源を地方に移してしまえば、財政難を理由に教育費以外に流用する自治体が出かねない、と指摘する声が多い。地方側は、こうした疑念を払しょくする説明が出来ていない。中教審が、制度維持の結論を出せば、知会案の土台が崩れる。義務教育費にこだわるより、道路関係など額が大きく地方の裁量拡大の余地が広い補助金に、的を絞った方が適切であろう。」

という指摘は、考え方の違いで仕方がありません。但し、「義務教育費の扱いは最終的に中央教育審議会で決める」というのは誤りで、「中教審の意見を踏まえて、国と地方の協議を経て、政府が決める」というのが、正式の総理発言です。

問題なのは、

「厚生労働省は、生活保護に関する補助金の削減を逆提案している。現在4分の3の国の負担率を3分の2とし、約1900億円を税源移譲する内容だ。地方側は、将来の負担増を招く、と拒んでいるが、保護世帯の割合は自治体によって約10倍も違う。地方の責任を重くし、生活保護制度の運用の適正化を目指すこの提案こそ、実現させるべきだ。」

というくだりです。現在生活保護の保護率の地域格差の現状を政府の協議会で分析していますが、格差が地方の負担増で縮まるはずだ、というのは正しい認識ではありません。はっきり申し上げて机上の空論です。研究者の間でも「ゲテモノ理論」として見られている考え方です。

渡邊恒雄氏が、財政審議会で思い込んでお話になっているというやむを得ない事情はあるにせよ、現在進行形の現状分析を踏まえた社説であるべきだったと残念に思います。

生活保護は、給付が厚い分、一度そこに入ると抜けるインセンティブがないという制度的課題があるほか、保護世帯の老齢化・単身世帯化で、働くことで生活保護から抜け出るという可能性が少なくなるどころか、社会の流動化で保護世帯拡大の危機にあります。厚生労働省には、本来自分たちの仲間である地方のケースワーカーの働きを指弾するのではなく、自らの責任である制度設計の問題、運用の指導体制の問題を精査して欲しいと思います。

マスコミ議論にも、実態を踏まえた建設的提言を期待したかったのですが、今回の社説に関しては、実に残念でした。数ヶ月後に、別の内容の社説が出されることを確信しています。


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» ■[三位一体改革]生活保護の補助金カット。弱者切り捨て全面支援の読売社説か [読売新聞の社説はどうなの・・2 (2005年度版)]
7月15日付・読売社説 [三位一体改革]「『生活保護』の税源移譲を進めたい」 これから年末まで、国と地方の攻防が熱を帯びそうだ。  国と地方の税財政を見直す三位一体の改革で、全国知事会が約1兆円の補助金削減案をまとめた。地方6団体の統一案として政府側に提出する。、、、  厚生労働省は、生活保護に関する補助金の削減を逆提案している。現在4分の3の国の負担率を3分の2とし、約1900億円を税源移譲する内容だ。  地方側は、将来の負担増を招く、と拒んでいるが、保護世帯の割合は自治体によって約10倍も違... [Read More]

Tracked on July 16, 2005 at 11:24 AM

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