防災対策と財源措置
7月22日の金曜日に、京都大学防災研究所主催の災害対応研究会で、「防災対策と財源措置」という主題の講習会に参加してきました。
地方財政の面から防災対策への切り口を探って欲しいとの林春男京都大学教授からの依頼に答えて準備をして話をしました。
話の内容は、以下の通りでした。
・日本の防災対策の金額ベースの暦年の推移
・その防災対策の殆どが地方自治体を通じて実施されていること
・防災対策を実施するために用意されている財源スキーム
・義務教育施設の耐震化を例にとり、国の防災関係補助金と地方財政措置の関係、防災対策実施の上での補助金による事業実施の優位性の検証
・三位一体改革の中で補助金が地方に移管され税源移譲された場合の対応の可能性
・防災力評価の実施などによる地域防災力強化の取り組み/住民の視点を通じて防災力を高める手法の開発
・防災力強化のための財源確保に向けての課題認識
災害研究者、医師、ライフライン企業、自治体関係者、消防関係者などの集まりで、懐かしい顔もありました。
義務教育施設の耐震化に関しては、①必要耐震化需要に対して補助金の絶対量が不足しており、補助金待ちでかえって耐震化が遅れていること、②全国的に見ると補助金のない公立高校の耐震化の方がかえって耐震化事業が進んでいるという実態があること、③その理由は、補助金を待つことなく自分たちの計画により耐震化事業を実施できるという効果もあると想定されること、④阪神大震災以降ですら、義務教育施設の耐震化補助金が削減され続けてきていることから、補助金の存在がボトルネックになり事業の進捗を遅延させているというパラドックスが生じていること、⑤その観点に立てば、国の財政状況如何に拘わらず耐震化を進めるためには、ボトルネックとなっている補助金を無くし、それに相当する財源を地方に委ね、適切な地方財政対策を講じることの方が、地方の計画的な耐震化対策に効果があると考えられること、などの点を指摘しました。
この問題は、中教審でも議論されていますが、文部科学省は補助金の堅持を主張しています。以上の所論はこれに全く反する論証になっています。その背景には地方財源を確保した上で地方自治体の事業執行の自由度を出来るだけ確保していこうという分権理念があります。
防災面でも、普段の備えや地域防災面に於いては、地方自治体の役割が圧倒的に大きいのです。地方自治体が背負えないような災害があったときに国が出動する、あるいは、国は消防防災情報などのシステムの構築を適切に行う、という役割分担の中で関係整理を行っていくべきです。補助金の存在により地方の緊要な事業実施が滞るようなことになっているということなどは、国の役割としては論外なのです。
そういう具体論を紹介しながら、三位一体改革の趣旨は、地方が国の仕様にあわせる仕事のやり方を転換し、地域の事情で、住民とともに自治体が自ら考え、自らの計画により仕事が出来るような体制を構築しようということにあるのです、ということを強調してきました。
その上で、絶対的に不足している国と地方の歳入に関して、防災力強化の観点から、災害対応研究会の皆さんの立場でも国民負担の在り方に関して議論をお願いしたいと申し上げてきました。
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