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July 14, 2005

「瀕死の重傷」の交付税?

7月13日と14日の両日にわたる徳島での全国知事会で、3兆円規模の税源移譲の為の残り6,000億円の税源移譲に見合う補助金改革案がまとめられました。私も傍聴しておりました。

他の地方関係団体も並行して機関決定の作業を行っています。今月下旬にはまとまると見込まれます。小泉首相の税源移譲の数値目標に答えるため、今年もエネルギーを注入して頂けました。頭が下がります。

昨年の3.2兆円の提案を更に重点化し絞り込んだ上で、今年は更に、地方6団体で、政治的、理論的体制強化を行うなど、目標の実現に向けて、真剣に行動いただける様子が伺え、心強く思えました。

知事の中のごく一部の方は、「三位一体なんて議論は国民的関心事項でもないし、霞ヶ関も相手にしていない。どうせダメだったということになって、その善後策を議論しにまた秋に集まるんですかね。明日の新聞記事にも大きく取りあげられることがないよ」と、人ごとのようにシニカルな評論をしている人もいましたが、殆どの知事さん方は、この改革が歴史の流れの中で意味のある改革で、地方自治の強化のためには小異を捨てて乗りこえないといけない改革だと真剣に考えていらっしゃるようにお見受けしました。

会合のあと、何人かの知り合いのマスコミの論説委員の皆様と話しましたが、
・2-3年前のことを考えるとよくここまで来たものだ、
・知事会や市長会が真剣になって自分たちの財政基盤のことを議論しはじめたのは隔世の感がある、
・制度改正は総務省に任せていればいいという依存意識が払拭されてきた、
・自分で考え自分で行動するという意識の変化は目を見張るものだ、
といった感想が殆どで、政策提言・実現集団としての6団体の動きに非常に温かい眼差しでご覧頂いていると感じ入りました。

知事会での議論の中で、鳥取県の片山知事が、「交付税は瀕死の重傷だ」と指摘されたことに対して、兵庫県の井戸知事が、「瀕死の重傷は交付税ではなく、国の財政と地方の財政だ。赤字国債で国が仕事をしていてきた結果、不足する財源を正規に手当てせずに借金を財源に交付税を間に合わせるなど交付税制度につけ回しをしていることが問題の本質だ。」と説明されたことに対しては、一同納得。井戸知事は政府税調委員で地方税源充実の為に頑張っておられますが、その議論の中でも同じようなやりとりがあるのだと思います。

6団体で今後の「あるべき地方税制」論などに関して、プロジェクトチームを作り、政府税調の井戸知事や各種審議会で地方を代表して論陣を張る委員をバックアップしていこうなどという議論を聞いていると、大変頼もしく思えました。今後、国と地方を巻き込む大きな制度改革が目白押しです。その議論に臨むためにシンクタンク的な機能が大いに求められますが、知事会をはじめとした地方自治関係機関が、それを幅広く集約していく機能を果たしていくのだと思います。

三位一体改革それ自体を見ると、大した改革のようには思えない、という人もいるかと思います。数字あわせじゃないか、理念がない、と。しかし、この改革の過程で、この改革をめぐりいろんな関係主体が、試行錯誤を繰り返しながら、目標を見失わないように、激しく議論し、まとめ上げている改革の手続きを垣間見るにつけ、これはその観点からも意味のある改革です。後になって、その有した意味が分かると思います。決して、皮肉っぽく突き放して嘲笑うようなものではないと信じます。後で笑われるのは、この努力を嘲笑した者だと思います。

10年ほど前の地方消費税導入時の議論も思い出します。当時、大蔵省は、消費税引き上げ議論に差し障りがあるので、地方消費税などという理屈に合わない税は導入すべきではないとし、導入に際しては一大議論がありました。当時の政治状況と関係者の努力で何とか実現しましたが、今やこの地方消費税は、消費税増税議論の中で今後の国と地方の税源配分の議論の地方税収の受け皿としてなくてはならない制度となっています。

仮にこの地方消費税がないとしたら、今後見込まれる消費税議論の中で、地方が増収分を税として受ける手段が無く、国庫補助金か交付税かのいずれかの形でしか受け取れないという分権の観点からは実に惨めな状況になりかねませんでした。

小さな改革がその後の大きな改革にとって決定的な役割を果たすということは往々にしてあるのです。三位一体議論は、そういう歴史的パースペクティブの中で見ていくべき問題なのです。


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